フリマアプリで累計4,000万ダウンロードを超えるメルカリが、社長交代を行うことを発表しました。通常、中小企業で社長が会長になる場合、社長が会長となることによる世代交代が目的だったり、役員退職金を支払うことによる節税の実行が目的ですが、今回の社長交代には少し違った目的がありそうです。解説致します。
メルカリの社長が会長に。通常と何が違う?
先週、フリマアプリ累計4,000万ダウンロードの実績を持つメルカリで、社長交代が行なわれると報道されました。
今回の社長交代により、創業者の山田進太郎氏は代表取締役会長となり、小泉文明氏氏が取締役社長という形で新社長となります。
通常、中小企業で社長が会長になる場合、社長が会長となることによる世代交代が目的だったり、役員退職金を支払うことによる節税の実行が、もっぱらの目的となります。
しかし、メルカリの社長交代では、山田氏が代表権を持ったまま会長となり、小泉氏は代表権のない社長となります。
この特殊な形式の社長交代には、どのような意味があるのかでしょうか?
代表権の無い形で社長の役職を与える意味は?
まず、代表権のない社長は自分で最終判断を行うことが出来ず、法的に会社を代表することもできない立場にあります。
従って、小泉氏は社長という役職には付いたものの、これは役職の呼び名が変わったに過ぎません。
そうとあれば、そもそも小泉氏を社長にする必要はありません。
実は、今回のように創業者からの社長交代や外部からの新社長を招く時、まずは代表権のない社長の役職を与える措置を取ることはよくある話です。
「社長を任せてもよい適任者が現れたが、いきなりすべてを託すには不安がある。しばらく代表権を与えずに様子を見るか。」というパターンです。
上手くいけば将来的に代表権を与えれば良いだけの話ですし、上手くいかない場合は社長降格という形を取ることも可能です。
もしも代表権のある社長をすげ替える場合は、株主総会の決議を通過するなど様々な過程を経る必要があり、社長の座に空席が生じる期間が起きるため、会社への影響が何らかの形で起きやすくなります。
逆に代表権のある会長が存在すれば、この時に社長を兼任し、代表取締役会長兼社長を兼任する形を取ることで、会社の運営に支障をきたすことも少なくすることが可能です。
社長交代には長期的視野で見たテスト要素あり
さて、同社はアメリカを手がかりとした海外進出にも一定の評価を得ており、既に2016年11月期の売上高は約120億円、純利益も30億円と驚異の黒字を計上しています。
今回は、山田氏がグローバル成長を加速するのはもちろん、資本準備金を含め125億円を調達していることから、上場へ向けた社内体制作りもあり、国内は新社長に任せた、という要素は十分に含まれているでしょう。
しかし、短期的な目線であれば社長をわざわざ作る必要はないところ、長期的な視野で新経営者としてテスト要素も含んだ社長交代と見てよいのではないでしょうか。