10%に消費税を上げた後、更に消費税を上げるのはかなり難しい話です。一部の有識者からは消費税以外の新たな税として、貯蓄税の創設が話題として取り上げられています。逆進性が回避できて、ちょうどマイナンバー制度が導入されたので、導入しやすいという背景もメリットとしてあるようです。貯蓄税推進派がなぜ導入したいのか?その狙いや税の種類、過去の財産税の例も踏まえて解説いたします。
消費税はもうあげられない…ならば貯蓄税?
消費税の軽減税率問題について、前回の記事で如何に矛盾した制度かを取り上げました。
10%に消費税を上げた後、更に消費税を上げるのはかなり難しい話です。
一部の有識者からは消費税以外の新たな税として、貯蓄税の創設が話題として取り上げられています。
貯蓄税の例としては、一人当たり預金残高1000万円超に対して毎年2%の課税をする、という形があります。
1,000万円貯蓄があれば、毎年20万円を政府が徴収するというものですね。
逆進性が回避できて、ちょうどマイナンバー制度が導入されたので、導入しやすいという背景もメリットとしてあるようです。
貯蓄税の導入推進派の人達は何を狙っている?
貯蓄税の導入推進派の理論とはどのようなものか考えてみましょう。
まず彼らが語るメリットの一つ目として、銀行で眠っている死に金が市場に出回ってくるので消費が促進され、経済の活性化に役立つと素直に賛同する意見があります。
金持ちへの課税なのだから所得再分配効果が期待できると、僻みの税制支持者が喜ぶと言う声もあります。
更に、提案者が証券会社のエコノミストだということで、株式投資への促進策としての提案だろうとか、預金が国債の購入にシフトするので財務省の裏の手とか、納税者番号制度導入気運への冷や水効果とか、にわか評論家が百花総鳴しています。
貯蓄税・税の種類は既に国内に存在する財産税
実現可能性のない提案のように見えますが、現実に在る財産への課税ということでは、この手の税金は財産税に分類されます。
固定資産税や都市計画税、それに自動車税は財産税の性格を持っています。バブル時に創設された地価税は純粋の財産税です。
話題の貯蓄税と似ているのは、個人財産500万円超に対して0.5%~3%の累進課税をした昭和25年の富裕税です。
富裕税は捕捉可能なすべての財産を対象にし、税率が4段階であるところが異なります。富裕税法は3年でもって廃止となっています。
歴史上はもっと過酷な税金も過去に存在した
ここまで読んでいただければ、貯蓄税も現実として有り得ると思われた方が多いことでしょう。
しかし、過去にはもっと過酷な税金も存在していました。3つの事例をご紹介しましょう。
1)戦時補償特別税
戦時中に発生した民間企業の政府に対する未払代金の請求権に、100%の課税を行いました。実質の踏み倒しです。
踏み倒さないまでも、戦前の国公債は戦後の100倍とも400倍とも言われるインフレで事実上デフォルトされました。
2)財産税
個人財産10万円超に対して25%~90%の累進税を課した昭和21年11月の「財産税法」による課税です。これも当然1回限りの税です。
3)非戦災者特別税
戦災者と非戦災者がいるのは不公平ということから、家屋を借りている非戦災者に対して、家賃の3ヶ月分、家屋を所有している者に対しては6か月分を課税しました。 これも1回限りの税でした。
国内外で経済的に不穏な動きがあり、日本の借金は15年度末に1,167兆円超まで膨らむ見通しです。
政府があらゆる形で個人に課税する傾向を強める以上、私達もより一層、節税に対する知識を実行レベルまで身に付ける必要があります。