お笑いコンビ「ピース」又吉直樹氏が今年芥川賞を受賞した小説「火花」の累計発行部数が8月初旬時点で209万部の大ヒットを記録しています。又吉氏は今回の小説に関する印税収入をどれくらい得ているかを所得と経費、税金から推察します。所得変動の大きな印税収入に対しては、平均課税が認められていますが、その効果はいかほどでしょうか?
ピース又吉の小説「火花」が空前の大ヒット
お笑いコンビ「ピース」又吉直樹氏が今年芥川賞を受賞した小説「火花」の累計発行部数が209万部になることが、8月初旬に発売元である文芸春秋から発表されました。
これまで芥川賞の受賞小説で単行本売上トップだったのは、1976年受賞作 「限りなく透明に近いブルー(村上龍)」による134万部(文庫本併せて350万部超え)です。
又吉氏の小説がどれだけ大ヒットしているか、私達はこの事実から容易に想像することが可能です。
ここで気になるのが、又吉氏は今回の小説に関する印税収入をどれくらい得ているのかということです。
又吉氏に入ってくる印税収入を想定計算しよう
一般的に出版物の印税収入は、5~10%程度と言われています。
仮に吉本興業が間に入って、強気な10%の印税収入で出版社と契約していた場合は、1,296円(単行本一冊の単価)×209万部(発行部数)=売上高・約27億1千万円(売上)の10%、つまり現時点で2億7千万円が単純な又吉氏の収入になります。
しかし又吉氏は吉本興業のマネジメント下に置かれており、仮に10%の収入が又吉氏に入った場合は、事務所が負担したプロモーション費用やマネジメン料で、約40%程度(過去の吉本興業所属・麒麟の田村氏「ホームレス中学生」印税に関するコメント参考※)を明け渡すことが推測されます。
それでも又吉氏には1億6千万円ほどの収入が入ってくるはずです。
節税しないと税金はどれくらい取られるのか?
ここからは又吉氏がどれだけ税金を取られるかを考えてみましょう。(単純化のためお笑い芸人としての収入含めず)
出版経費として概算経費で30%の5,000万円を控除できると仮定した場合、約1億1千万円の収入には所得税の45%、東京都住まいであることから(区市町村住民税6%・都民税4%)がかかり、合計して収入の55%(6,050万円)から、所得控除479.6万円を差し引いた約5,570万円を、又吉氏は2016年に税金として支払うことになります。
以上の推察により、税引き後の手取り収入は現時点で5,400万円近辺と予想します。
平均課税制度を活用して節税対策を行うと…
しかしこれではあまりにも又吉氏がかわいそうすぎます。
せっかく長い月日をかけて作った小説の収入を、翌年に税金で一気に半分以上取られるのでは、何もやる気がおきないはずです。
また、次の小説がヒットしなければ、又吉氏の小説家としての収入は一気にガクンとオチてしまいます。
そこで国も「それはあまりにもかわいそうすぎる」ということで、「平均課税」という制度を用意しています。
「平均課税」は波がある条件下で収入を得る人に対して、
- 変動所得+臨時所得≧総所得金額の20%
- 前年と前々年の(変動所得+臨時所得)×50%<その年の(変動所得+臨時所得)
の場合に、
変動所得と臨時所得の20%(5分の1)の金額に、その金額による超過累進税率をあてはめて算出した金額を5倍にして計算した税金の支払いを認める制度です。
又吉氏の場合は約1億1,000万円×20%=2,200万円×(所得税40%・住民税等10%)×5倍=約5,500万円から所得控除額279.6万円を差し引いた約5,220万円の税金支払いが見込まれます。
平均課税を利用しない場合よりも、約350万円程度の節税が合法的に可能となる計算です。
今後も単行本の収入は伸び、文庫本収入、映画化やDVDの版権収入などを通じて、収入は数億単位になることが予想されます。
しかし2億の収入を手に入れた麒麟田村氏ですら、ネタかもしれませんが現在の貯金は27,000円とのこと。※
これだけの偉業を成し遂げて、350万円程度しか節税できないとは…日本は稼ぐ人にとって優しくない国のようです。
又吉氏は、なるべくお金をドカ使いしないように節約しながら、今後入ってくる収入を守るために更なる節税対策を行う必要があるでしょう。
参照元
※スポニチ・アネックス
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/07/25/kiji/K20150725010804720.html