平成31年10月に消費税が更に2%上乗せして、8%から10%に上がることが暫定的に決まっています。更に厄介なのは、軽減税率が導入されることです。特に、裾の尾が広い食品に関わる業種の企業では、大きな準備対応が求められることになりそうです。本稿では、大きな影響を受ける代表的な4つの業種をご紹介します。
平成31年の消費税増税は軽減税率の導入がやっかい〜その理由とは?
消費税が平成26年の4月から8%になって早3年、支払がキツイな〜という会社さんも多いことと思います。
ところが、これに追い打ちをかける形で、消費税は平成31年10月1日には更に2%上乗せされ、10%に上がることが暫定的に決まっています。
しかも、今回やっかいなのは、軽減税率の導入が決まっていることです。
軽減税率とは、日常生活の消費に欠かせない一定の商品の購入のみ税率を軽減する、という考え方の減税措置のことです。
更に噛み砕いて言うと、今回の措置は、「家で食べる食品の購入は税金を少しだけ安くするね」と、一言で言うとそういう措置です。
ここで「食品」というのが大きなキーワードになりまして、平成27年における日本全体の食品関連産業の市場規模は、なんと112兆円に到達します。※
平成27年の名目GDPは約532兆円ですから、どれだけ食品関連の仕事をしている人が多いか理解いただけることでしょう。
つまり、今回の軽減税率導入は、食品に携わる企業の多くに影響を与えるものとなるのです。
軽減税率の導入で大きな準備対応を求められる4つの業種
では、どんな業種の企業に軽減税率の導入が影響を及ぼすのか?具体的に見ていきましょう。
1)スーパー
やはり、影響を与える業種で代表的なのはスーパーです。
たとえば、食料品は原則8%の軽減措置を受けますが、お酒には10%の消費税がしっかりと乗ることになります。
もっと細かいところで言うと、酒税法の定義に従うため、みりんや料理酒も酒の扱いとなり10%なのですが、みりん「風」調味料は8%になります。
また、ノンアルコールビールや甘酒も8%です。
惣菜部門で言えば、弁当など持ち帰って食べるものは8%ですが、イートインスペースのように机やイスを設けている場合、お客さんが「そこで食べるよ」と言ったら外食扱いで10%を支払わねばなりません。
お客さんの自己申告によって、8%か10%かが決まることになっていますから、ここらへんはフリーライダー(タダ乗り)となるお客様の存在も、後々で問題となりそうです。
また、ワンちゃんや猫ちゃんには残念ですが、同じ食品でもペットフードは消費税が10%のため、軽減税率の対象とはなりません。
2)コンビニやドラッグストアのような商店
コンビニやドラッグストアのように、様々な日配品や雑貨、食品を販売している商店も同様です。
厄介なのは書籍関連で、週2回以上発行する新聞は8%で軽減税率の対象、そのほかの雑誌は消費税10%のままとなります。
また、「医薬品」「医薬部外品」は10%ですが、栄養ドリンクやエナジードリンクの中で「医薬部外品」と書いてない、ジュースのようなものは8%と軽減税率の適用を受けることとなり、売り場に軽減税率の対商品とそうでないものが混在することも考えられます。
お客さんから、「消費税8%で買えると思ったのに!ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!」、みたいなクレームが増えて、トラブル対応に追われないよう、お店の表示も工夫しなければならなそうです。
3)レストランなど外食産業
外食産業も複雑な顧客対応を求められることになります。
- 完全にお店で食べるのみの店⇒10%
- 完全にテイクアウトのみの店⇒8%
このようにお店自体の販売形態が明確になっていれば良いのですが、販売形態が混在する店ですと調整が必要になります。
たとえば、マクドナルドのように、店内飲食も可能で、テイクアウトのお客さんが多いお店だと、お客さん1人1人の意向を聞いて、8%か10%かを判断する必要があります。
1)のスーパーでもコメントしたように、お客さんが「テイクアウトで」を選択して、店先のベンチに座って食べはじめても、自己申告で8%になるので、お客さんの正しい意向確認を行う店員の手間が増えます。
こういう手間や、余計な人件費を削るため、お客様にセルフレジで会計対応してもらったり、ロボットが対応するお店が増えるかもしれませんね。
ちなみに、そば屋や喫茶店のように出前をする場合は8%になります(お店での飲食はあくまで10%)。
ですが、出張料理やケータリングのように、その場で調理したり盛り付けをしたりなにかしらの手が入るものは10%になります。
また、テイクアウトのみでも、お酒をあわせて売るなら、8%と10%の異なる消費税率が混在することになります。
4)有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
有料老人ホームやサ高住における食事の提供は、外食的な感じもしますが8%になります。
これは、おそらく政策的な配慮によるものでしょう。
その施設によっては、
- 10%
- 8%
- 非課税
と様々な税率が混じることになります。
予め準備しているか否かの違いは導入時に大きな差を生む
いかがだったでしょうか?
かなり、多くの業種が軽減税率への準備対応に追われそうなことがご理解いただけたかと思います。
上記にあげた業種以外にも、お土産屋さんのように、ほんの少しでも食料品や新聞を扱っているお店も、軽減税率の準備対応が必要になります。
こういった大きな法律改正が起こる時は、予め準備した企業と、準備していなかった企業で、いざその時のパフォーマンスが大きく変わります。
個々の店舗における表示対策、顧客対応のマニュアル作りはもちろん、軽減税率を反映したレジの導入など、総合的に考えれば時間はあと2年しかない、そう考えたほうが賢明です。
夏休みの宿題にたとえると、8月31日まで休みがあるけれど、今はもう8月20日。それくらいの気持ちで対応し始めたほうが良いでしょう。
なお、新たなレジ導入などを補助する、軽減税率対策補助金の申込期間は、平成30年1月31日までとなっています。
ぜひ、この機会に補助金を検討される方は、早めの申込を行うことオススメします。
※農林水産省:農業・食料関連産業の経済計算
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/keizai_keisan/attach/pdf/index-1.pdf