銀行は融資審査の際に「信用格付け」を一つの基準として、会社を6つの債務者区分で評価しています。
この中でも「破綻懸念先」と評価された会社は、銀行と取引が事実上できないため、格付けをあげるための努力が必要になるでしょう。
そこで本稿は、自社の格付けを簡易的に把握する方法と、信用格付けをあげる方法をご紹介します。
銀行との良好な関係構築は経営者の重要な業務
経営者にとって銀行との良好な関係を築くことは、事業を円滑に進める上で非常に重要なことです。
特に、銀行から融資を受ける際には審査が必ず必要となります。
信用格付けは6つの債務者区分で評価される
銀行が会社に対して「信用格付け」を行う理由は、融資貸出先に対して適切な貸倒引当金を積むためです。
銀行は各会社に対して、以下6つの債務者区分を設けて格付を行っています。
- 「正常先」
- 「要注意先(要注意先)」
- 「要注意先(要管理先)」
- 「破綻懸念先」
- 「実質破綻先」
- 「破綻先」
この6つの債務者区分からなる格付によって、銀行の「融資額」や「金利」は決まっていくのです。
では、この中でどこが取引の可否で危険信号が灯るラインかと言うと、4の「破綻懸念先※」以下に格付けをされた場合は、銀行から運転資金を調達する事が困難になり、実質的には資金調達能力がなくなります。
こうなると、通常の営業活動に必要な運転資金・設備資金を、自己資金で賄わなくてはならなくなります。
銀行と取引できなくなる「破綻懸念先」とみなされるのはどんな企業?
銀行と取引できなくなる「破綻懸念先」とみなされる企業の定義は、以下のとおりです。
現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進歩状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者
具体的には、今後約定どおりに返済が続いても、とても返せないほどの過大な借入金がある場合は、「破綻懸念先」とみなされると思って良いでしょう。
自社が破綻懸念先か否かを判断する計算方法は、有利子負債(借入金)を営業利益+減価償却費で割って、債務返済年数を求めることが可能です。
この年数が10年以上であれば破綻懸念先。赤字で債務超過が到底解消できそうにない先も該当します。
また、債務超過額を当期利益で割って、債務超過解消期間を求めて下さい。この年数が3年以上であれば破綻懸念先になります。
更に銀行の返済が、3か月を超えて延滞している先も該当するようです。
信用格付けを決める「定性評価」と「定量評価」とは?
さて銀行の信用格付けは「定性評価」と「定量評価」の2つで決定しています。
定性評価
「定性評価」は、
- 経営者の能力
- 業界の特性
- 従業員や自社の技術力
など、数値では判断できない評価になります。従って、銀行の担当者によっては多少評価が変わってくるといえます。
定量評価
その一方「定量評価」は、決算書等の数値から判断される評価であり、どの担当者や銀行で評価しても変わりはほとんどないと言えます。
よくメガバンクは100%「定量評価」が基準で格付けが行われると言われています。ですので、その分融資の審査が厳しくなるようです。
メガバンク以外だと、90%「定量評価」+10%「定性評価」だとか、80%「定量評価」+20%「定性評価」といった銀行独自のルールがあるようです。
これは銀行独自のルールなので、格付けにも違いが出てくるのは当然と言えます。
銀行の信用格付けを上げるポイントはある?
銀行独自のルールがあるといっても、どの銀行もかなりの割合で定量評価の比重をとっています。
逆を言えば、決算書の内容が良ければ格付は上がり、融資にも大きくプラスになるということが言えます。
銀行は定量評価を行う際にいくつかの項目で判断していますが、特に重視されているのは以下6つの項目です。
- 「自己資本比率」
- 「ギヤリング比率」
- 「自己資本額」
- 「債務償還年数」
- 「インタレスト・ガバレッジレシオ」
- 「償却前営業利益」
もっとも銀行が「定性評価」を行う際は「実態」で決算書を評価していますから、粉飾決算や不良資産がある際はこれらを除外して定量評価が行われます。
まずは、自社の信用格付けを知り、格付けを上げて銀行と良いお付き合いをしていくことで、御社の飛躍につながることを祈っています。