いよいよお歳暮シーズンがスタートしました。人の縁だけビジネスもつながっていきますから、お歳暮の習慣を大切にされている社長さんも多いようです。中には、高級車ポルシェのような高額商品をお歳暮として贈る方もいらっしゃるようです。際限無き「お歳暮戦争」で、どこまでが「お歳暮」と認められるのでしょうか?解説いたします。
お歳暮シーズンスタート!中には高級車を贈る人まで…
今年も残すところあとわずか。
年末に向け仕事量が増えるだけでなく、忘年会のお誘いにも忙しくなってきます。そんな中、12月に入れば取引先とお歳暮のやり取りをする会社が増えていきます。
人の縁だけビジネスもつながっていきますから、お歳暮の習慣を大切にされている社長さんも多いようです。
お歳暮の定番と言えばお菓子やジュースなどですが、中には、「普段お世話になっているから」ということで、かなり高額なものを送ろうとする社長さんもいらっしゃいます。
筆者がお伺いした中で最も凄いお歳暮だと、お歳暮代わりでお世話になった社長さんへ、ポルシェを贈るという方がいらっしゃいました。
一瞬、日本ハムの某投手がポルシェをもらったニュースが思い浮かび、本当にそんなことってあるのか?と思ったのはここ最近の話。
果たして、際限無き「お歳暮戦争」で、どこまでが「お歳暮」と認められるのでしょうか?
高額お歳暮の送り主は費用をどう処理できる?
まず、会社の得意先など事業関連者への贈答品は交際費となります。
お歳暮費用も、もちろん交際費に計上されます。
法人税では、資本金1億円超の会社では贈答品は全額が損金不算入、1億円以下の会社では年間800万円を超える部分が損金不算入となります(簡略化のため飲食に係る交際費は除外して考えます)。
それでは、もし宝飾品や絵画、高級車といった、社会通念上お歳暮としては明らかに高額なものを送った場合、この費用は交際費として計上可能なのでしょうか?
この場合、まずは相手先との事業関連性が問題になります。
関連性が無ければ寄付金、あるいは社長の個人的な贈答とされると、役員賞与とされてしまうことがあります。
交際費と認められた場合でも、上記のように税務上は、全額若しくは800万円を超える部分が損金不算入となります。
高額お歳暮贈られた側はどう会計処理すべき?
一方、もらった側はどうでしょう?
一般的なお歳暮の場合、個人間であれば、そもそも税金(贈与税)を課さないこととなっています。
高額なものでも、年間110万円までなら贈与税は0円となります。
相手の社長から個人的に200万円の絵画を贈られた時には、200万円-110万円=90万円が贈与税の対象となります。
贈られた相手が会社(法人)だと、贈与税ではなく所得税(雑所得または一時所得)の対象となり、全て税金の対象とするのが原則です。
ですが、一般的なお歳暮であれば金額が大きくないこともあり、無視しても問題にされないのが現状です。
それが高額品となると話は別です。
きちんと確定申告をしないと“申告漏れ”を指摘されてペナルティを受けてしまう可能性があります。
高額お歳暮を贈られた側には無駄に利益増える
また、お歳暮を会社として受け取った場合、贈られた相手に関係なく法人税の対象となります。
とはいえ、一般的なお歳暮であれば、そのまま社内で食べたり使ったり、消化してしまうのが通常です。
とすると、受領時に雑収入(受贈益)を計上しても、同額が消耗品費・福利厚生費となるため、経理上は無視してしまうのがほとんどです。
ただし、商品券など換金性の高いものを、そのまま従業員に配ってしまうような場合には、給与・賞与として源泉税の対象となってしまうので注意が必要です。
高額品であれば、もちろん会社の収益としなければなりません。贈られた物によって貯蔵品や車両・器具備品などの資産項目に計上し、その全額が受贈益となります。
もし、1千万円の高級車を受け取った場合、車両に1千万円、雑収入若しくは特別利益に1千万円が計上されます。
車両は減価償却費として数年にわたって費用化されるため、特に受け取った初年度は、会社に相当額の利益が発生してしまうことになります。
また、その贈答品が宝飾品や絵画の場合、そもそも減価償却の対象にもならず、利益のみが計上されることもあります。
支払わなくても良い税金を支払う必要が出たのでは、贈られた側にとってみると、嬉しくない場合すら生じるでしょう。
お歳暮はそもそもが「気持ち」をやり取りするもの。もし、相手がポルシェ好きだとしても、贈るのはポルシェのこだわりミニカーくらいに留めておいたほうが、無難かもしれません。
画像:ウィキペディア