日本の空家問題は非常に深刻であり、住宅総数に対する空室率は13.5%に上ります。中でも相続空き家が多いことは問題視され、政府もこれを防ぐために、相続した空き家を売却した場合の「所得税の軽減措置」を今年創設しました。条件が合致した場合、譲渡所得から最大3,000万円の控除を受けられるため、メリットの大きな特例と言えます。
相続した空き家売却時における「所得税の軽減措置」が新しく創設
平成28年度税制改正で、相続した空き家を売却した場合の「所得税の軽減措置」が新しく創設されました。
この制度は、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」と呼ばれ、相続した空き家を売却した際に、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
もともと平成26年に制定された「空き家等対策の推進にかかる特別措置法」を税制面から後押しするために設けられた制度で、倒壊等の恐れがある空き家の増加を減らして、土地を有効活用しようという国の施策が背景にあります。
条件に合致すればメリットが大きい制度ですので、今回はこの制度についてご説明します。
「所得税の軽減措置」適用を受けられる条件は?
1)適用対象不動産
適用対象不動産は以下のとおりです。
- ①相続の直前まで被相続人が住んでいた居住用家屋とその敷地である土地
- ②相続開始直前に被相続人以外に居住していた人がいないこと(亡くなった人が一人暮らしをしていて空き家になった)
- ③マンション等の区分所有建物でないこと
2)耐震基準
- ①昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(現行の耐震基準は昭和56年6月1日導入)
- ②家屋を売却する場合は、その時点で耐震基準に適合すること(耐震改修して売却するか、解体し、更地にして売却する必要があります)
3)譲渡時期
- ①相続開始から3年を経過する日を含む年末までに売却すること
- ②平成28年4月1日から平成31年12月31日までの譲渡が対象
4)その他の条件
- ①相続時から譲渡(除却)時まで家屋が事業・貸付・居住の用に供されていないこと
- ②売却金額が1億円を超えないこと
5)他の優遇措置との併用関係
- ①相続税の取得費加算の特例とは選択適用となる
- ②相続税における小規模宅地等の特例について、いわゆる「家なき子(※)」の場合は併用できるケースがあるため、注意が必要
※「家なき子」:その宅地を取得した被相続人の親族が、相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者所有の家屋に居住したことがない場合
空き家解体時や耐震リフォームに補助金利用も
なお、特例の適用を受けるに当たって、空き家の解体や耐震リフォームに、国や自治体の補助金を利用できる場合があります。
地方自治体によっては、地域活性化等の目的から空き家の利活用を促している場合や、防災対策などの一環で、耐震リフォームに補助金を出している自治体があるので、事前に調べておきましょう。
更に、空き家に係る固定資産税は、住宅用の特例措置により最大6分の1に軽減されています。
住宅用の判定は、毎年1月1日時点で判断されるため、更地にした後で1月1日を迎えると、固定資産税が高くなってしまいます。
更地で売却する場合は、更地で引き渡すことを条件に、買い手が見つかってから解体することをお勧めいたします。