東京大学が巨額のベンチャーキャピタルを組成しました。大学がベンチャーキャピタルを組成する意義は、母校を応援する卒業生が意欲有る学生や卒業生に投資をすることで、彼らの可能性を伸ばすことにあります。ところが今回のファンドの中身は過去の補助金、しかも出資はファンドというもの。メリットを感じにくいのが現状と言えます。
東京大学が230億円の新設ファンドを創設した
東大が「東京大学共創プラットフォーム開発」と銘打って、230億円のファンドをいきなり作ったとニュースが飛び出しました。
東大新設VC、いきなり230億円の投資ファンド:日経ビジネスオンライン
私の第一印象は、 さすが東大 というものでした。
私が思う大学の理想は、成功した多くの卒業生が大学に感謝をし、それを形にするために、母校へ寄付をする。
その寄付を適切に運用し、よいビジネスがあれば学生、卒業生のビジネスに投資をし、資金を増やす。
そして増やした資金を能力がやる気のある学生への奨学金に回す。そんな形です。
東大新設VCの中身が残念な理由は資金の出元
このパータンは、ハーバードやスタンフォード等、アメリカの大学ではすでに一般的です。
日本でも大学発のベンチャーキャピタルが増え始め、いよいよ真打ち登場かと思いたいところですが、その中身は残念なものでした。
というのも、今回の東大のファンドの財源はどうやら補助金であり、当面の出資先はファンドです。
ファンド・オブ・ファンズといえば格好はよいですが、自社ではファンドを作らず、すでにあるファンドへ出資することです。(投資信託に投資する投資信託)
東大のOBから集めた資金を安全運用するのであれば、ファンド・オブ・ファンズはありうる選択肢です。そもそも誰も異論を唱える権利を持ちません。
寄付をしたOBがよければそれでOKです。
しかし、当面の間とはいえ、今回の資金の元手は補助金、しかも2012年度に拠出されたものです。
その大切な補助金を、これだけの時間を経過してから別のファンドに投資をする。いったい何のための措置なのでしょう。
中身がわかりにくくコストのかかるファンド
ファンド・オブ・ファンズには、確かにリスク分散やプロによる目利きなどのメリットがあります。
しかし、この形態がメインということは、手数料の二重取りや、投資対象を資金の出元となる東大VCが把握しにくい状況などのデメリットを、VCが受け入れなければなりません。
お上の資金とあらば、資金投入に至る意思決定も、トップダウン型の迅速なものとなりにくいことが考えられます。
中身がわかりにくく、コストのかかるファンド形態、そこに国民の税金を出元とした補助金が用いられるわけです。
非常にメリットの分かりづらいニュースでした。記事からではわからないメリットが存在することを期待したいです。