創業時は実績がないため、貸す側に納得してもらえる収支計画を提出し、その計画が妥当だと判断されれば、融資をしてくれる可能性が高い時期です。日本政策金融公庫の新創業融資制度も融資要件が緩和されるなど、環境が充実しています。そこで、貸す側の視点から見て、融資交渉で気をつけるべき2つの点をご紹介します
実績のない創業時は融資を一番受けやすい時期
当たり前のことですが、借りたお金は返さなければなりません。
確かに、
なるべくお金は借りない方がいい。
自己資金で何とかなるから、創業資金は借りないことにしよう。
と考えるのは妥当な考え方ですね。
しかし、自己資金の使途については、最初から慎重に考えておくことが必要です。
起業したからといって、すぐに売上げが上がるとは限らず、その間の生活費を準備しておかなければならないからです。
当然ですが、生活費は自己資金から捻出することになりますので、創業のための自己資金を目いっぱい使ってしまうと、生活費が足りなくなってしまいます。
ならば、お金が足りなくなった時に借りればいいのではないか?という考え方がありますが、これは正しいものでしょうか?
「こんなことなら、創業時に融資を受けておけば良かった…」
創業した人からは、こんな言葉が良く聞かれます。
実は、起業した場合は、まだ実績の無い創業時の方が融資を受けやすいのです。
仮に、創業して1年経っても赤字だったとして、資金が足りなくなったので、融資の申込みをしたとします。
ところが金融機関は、「こんな赤字の人に融資しても返済は難しいだろう」と判断します。
その場面になって、「頑張って売上げをあげるから何とか融資をお願いします!」と粘っても、既に時遅し。実績が出てしまっているのです。
対して、創業時には、まだ実績がありません。
収支計画を提出し、その計画が妥当だと判断されれば、融資をしてくれる可能性が高いのです。
創業時は、お金が足りなくなる前に、準備をしておくことが必要なのです。
無担保・無保証人の条件で借りられる新創業融資制度
先日、信用金庫の人と会いました。
彼の話では、今年度から創業融資に力を入れているにも関わらず、あまり知られていないので、申込みに来る人が少ないということでした。
このように最近では、信用金庫などの金融機関も創業融資を充実させていますが、やはり利用者が多いのは、日本政策金融公庫の新創業融資制度です。
一般的に、融資を受けるには、担保や保証人が必要なのですが、この融資制度には、担保も保証人も必要ありません。
しかも、2014年度より、創業を多くしようという国の政策を背景に、融資限度額も大幅に引き上げられたのです。
融資の上限は、今までの1,500万円から3,000万円に引き上げられました。
更に、自己資金は、今までの3分の1から10分の1に引き下げられました。
つまり、今までは自己資金が300万円だったとすると、その2倍の600万円までしか融資を受けられませんでした。
ところが、今は9倍の2,700万円まで融資を受けられる可能性があります。
しかし、これはあくまでも「融資の可能性」であって、必ずしも2,700万円まで借りられるとは限りません。
運転資金の融資期間は5年で据え置きですが、融資期間も設備資金は10年から15年と長くなりました。
新創業融資を申し込む時に念頭へ置く2つのポイント
起業家への融資は、これまでにないほど充実していますが、融資を受けるためには、お金を貸す側の気持ちに立つ必要があります。
そこで、新創業融資を申し込む時に念頭へ置く2つのポイントを、貸す側の視点から見てみましょう。
一つ目に貸す側が考えることは、借りたお金を何に使うのだろうか?ということです。
これを明らかにするためには、融資を受けたお金の使途を明確にしておくことが必要です。
設備資金を借りたいならば、可能な限り見積書をとって添付する必要がありますし、運転資金を借りたいならば、3カ月分を目安に計上しておくことが望ましいでしょう。
2つ目に貸す側が考える事は、貸したお金が本当に返ってくるのだろうか?ということです。
売上げを多く、費用を少なくしておけば当然利益が多いので、借入金は返ってくることになりますが、問題は信頼性です。
売上げはこのように計算してあるけれども、本当にこんなに売上げは上がるのだろうか?と疑問を持たれたら、融資は受けられないでしょう。
また、売上予測が業界水準と乖離している計画も、まずアウトでしょう。
反対に、取引先からの発注書や契約書があると、信用度はグンと高まります。
先日、まだ世の中にあまり知られていない事業で創業する人が相談に来ました。
このようなケースでは、自分の事業分野の位置する業界の存在を理解してもらい、業界が伸びていることを示す資料を添付することが必要です。
いずれにせよ、借りたお金は返さなければならないものです。融資を受ける場合は、慎重に検討してください。