そろそろお中元の送付を検討する時期に入ってきました。取引先にお中元を送る際は、金額が社会的常識の範囲内であれば、これを交際費として経費参入することが可能です。ただし、お中元で「商品券」など金券を送付する時に、間違った取り扱いをすると大損する場合があります。以下、説明してまいります。
取引先へのお中元は交際費として経費計上可能
百貨店やデパートなどから、お中元のカタログが送られてくる時期となりました。
会社や個人事業を営んでいる方が、取引先などにお中元・お歳暮を贈ることは、よくあることかと思います。
最近では、コンプライアンスを厳しく管理する企業も増えているため、会社間でのお中元やりとりを制限する場合もありますが、今でも礼儀としてのお中元は、文化として根付いています。
お中元を取引先へ送る場合、これにかかる費用は経費として計上できるのでしょうか?
結論から申し上げますと、社会的常識の範囲内の贈答品であれば、お中元にかかる費用は、「交際費」として事業の経費に計上することができます。
社会的常識の範囲内というところがポイントなのですが、通常で考えれば、1件当たり10,000円以下程度が妥当でしょう。
その程度の金額であれば、経費にしていただいても大丈夫です。
プライベートのお中元を混ぜるとバレることも
もちろん送る相手先は、交際費の要件として「事業場の取引の円滑化」を図る目的が必要ですから、業務と関係ない人への贈り物はNGです。
たまに取引先へ送るお歳暮に、親戚への分まで紛れ込ませる人がいますが、そういうことをしてはダメですよ。
というのも、デパートやカタログギフトなどでお歳暮などを送る時は、業者が「送付先リスト」を作っています。
まとめてデパートなどでお歳暮を注文したりすると、どこに何を贈ったかというリストが出来上がります。
以前いた事務所で、後輩の担当先に税務調査が入りました。
その際、お歳暮のリストをチェックされたそうなのですが、半分くらいが親戚への贈答品だったとのことで、この会社は税務署に大目玉をくらったそうです。
更に質(たち)の悪いことに、そのリストの中に後輩の名前も入っていたそうで・・・
あとで後輩が所長に大目玉をくらったのは言うまでもありません 。
商品券をお中元で送る際に気をつけるべきこと
話は本日のテーマに変わりますが、お中元を送るにしても「何を送れば喜ばれるだろう?」と悩む場合がありますよね。
「この際、商品券を贈って、好きなように使ってもらえばいいんじゃないか?」と考える方もいることでしょう。
ただし、この商品券を贈るという行為については、気を付けないといけません。
以前、私のお客様に、
- 「デパートでまとめて商品券を50万円購入、その商品券を1万円づつに小分けして取引先に渡す」
という処理をしていたお客様がいられました。
商品券ではなくビール券などで、同じようにされている方もいるかと思います。
このような処理をする場合には、必ずどの相手にいくら分を渡したのか、ということが分かるようなリストを作っておきましょう。
そうでない場合は、経費としてこれらの購入費用が認められない場合があります。
実はこの商品券というモノが、曲者なのです。
贈答用に購入したというように処理しているにもかかわらず、取引先に渡さず、自分自身で商品券を使用してしまう人がいます。
商品券に名前は書いていませんので、自分自身で使ってしまったとしても分からないのです。
なかには悪どい人もいて、贈答用の商品券を金券ショップに持って行って、換金してしまう人もいます。
金券ショップの換金率が90%程度だとしても、商品券50万円を経費にして、45万円の現金に換えてしまうことが出来るからです。
もちろん、こういう処理をしてしまう事業者がいることは税務署もお見通しです。
このようなケースで税務調査に入られた場合、確実に商品券を渡した相手先のリストアップをするように求められます。
記憶があいまいだとリストも作れませんし、なかには渡してはいけない相手先に、商品券やビール券を配っていることもあるかもしれません。(公務員や親企業の担当者などに渡していればワイロになってしまう可能性も!)
いずれにせよ、ズルはしないほうが良いでしょうね。
誰に渡したか説明できないと経費にできない
商品券は、最終的に誰に渡したかを説明できなければ、経費にすることはもちろん出来ません。
このようなケースの場合、この商品券は社長や個人事業主が個人的に使った、とみなされてしまう可能性があります。
会社であったとしたならば、「商品券の購入=社長の個人的支払(社長への臨時ボーナス)」となってしまいます。
- 社長へのボーナス(役員賞与) → 会社の損金(経費)にならない → 所得が増える → 法人税の増加
- 社長へのボーナス → 社長の所得が増える → 所得税・住民税の増加
ということになるので、法人税も取られて、所得税や住民税もとられるというダブルパンチが待っています!
こうならないように、くどいのですが、きちんとリストは作っておきましょうね。
更には、最初に書いたように、近年ではお中元やお歳暮の支出金額が減っています。
売上などの取引規模に比べて、明らかにお歳暮などの金額(交際費)が多いと、税務署に目をつけられやすくなりますのでご注意を。