中小企業が存続するために、経営の命綱となるのが資金調達、つまるところ銀行融資です。ところが多くの経営者が「銀行融資をうまく受けるコツと融資のイロハ」を、あまり知らないのが実状です。そこで本日は、資金調達のプロフェッショナル・キミアキ先生に融資のあれこれを教えていただきます。
銀行融資のコツとイロハぐらいは知っておこう
私ども あおば会計はたくさんのお客様を抱えておりますので、銀行融資は日常業務と化しております。
私自身も会社を持っておりまして、私自身の会社でも『保証協会付』というものの融資を2回、それから銀行さん独自のプロパー融資というのを3回受けた事があります。
私の妻も税理士ですが、プロパー融資も受けた事があれば、保証協会付も受けた事があって、先月は不動産担保融資も受けていました。
こんな感じで、仕事としてお客様の融資の件も扱うんですけれども、自分たちの融資の経験も有りますので、今日は「銀行融資をうまく受けるコツと融資のイロハ」という実務チックな話をしていきたいと思っています。
500万円の借入を起こすと毎月の返済額は?
それでは1番初めに、まず融資で得るお金は、借りたお金ですから、返さないといけないですね。
返さなければいけないお金の計算は、どういう風にやっていくのかというをやっていきましょう。
会計上の決算書から見ていくと、税金を引いた後の利益に減価償却費を足したものを「返済原資」と考えます。
これは銀行さんも全く同じ様に考えます。
我々が予算組みをする時には、ワンショット500万の借入を基準に考えていくんですけれど、500万円だと毎月の支払いは10万円です。年間120万円ですね。
500万円で10万円というのを覚えておけば、あとは倍数なので、例えば1億円借りるとしたら20倍すれば良いので、毎月の支払いは200万円!とすぐに出すことが出来ます。
500万円を基準としますと、税引き後の利益が年間120万円無ければいけない。
ではこのご時世、税金がどれ位かかるかというと、実はこのところ、中小企業の実効税率は非常に低くてですね、25%位しか費用がかかりません。
勿論利益額が800万円以下というのはあるんですけれど、利益額800万円以下であれば、税引き後120万円の利益を出すには、税引き前に160万円の利益があれば良いんですね。
160万円あれば、借入500万円の返済が出来るという話になります。
こういうことが分かっていれば、税引き後の利益がプラスでなければいけませんから、とにかく決算書上は、とりあえず利益を絶対に赤字にしないで下さい!と言われます。
これは会計事務所に融資の担当者が来て「こうして下さい」と、支店長からも「頼みますから1円でも黒字にして下さい」と言われます。
中小企業が金融機関から受けられる3つの融資
次に中小企業が受けられる融資の種類をご紹介してみたいと思います。
中小企業の融資というのは3種類ありまして、
- 保証協会付き
- 政策金融公庫:昔は国金と言われていたもの
- プロパー融資:銀行独自の貸出し
になります。
プロパー融資に積極的なのは都市銀行で、都市銀行のビジネスローンというのは比較的下りやすくなっています。
ところが、都市銀行のビジネスローンを下ろす為には、決算を最低で2回経ていなければなりません。
ですから、開業したばかりでは、なかなかプロパー融資は受けられないんですね。
それから信用金庫さんからは、プロパー融資は事実上受けられず、融資を受けるには不動産を担保にしなければ受けられません。
不動産を担保にすれば、意外と信用金庫さんも大きめの金額を貸してくれます。
直近の保証協会付き融資が実にやっかいな理由
これは都道府県の融資とか、あっせん融資ですね、区のあっせん融資、利子補給もあります。それから商工会のあっせん融資等もこれ全部保証協会付きなんですよ。
信用金庫さんの窓口なんかに行っても、この保証協会付きの融資を薦められます。
保証協会付き融資の仕組み
ではこの保証協会がどのような仕組みかと言いますと、中小企業者>>信用保証協会>>金融機関>>の三角関係になってますね。
まずは1番初めに中小企業が信用保証協会に保証を申し込みます。
次に2番め。保証協会が金融機関に対して保証を承諾します。
そして3番め。保証を承諾したら金融機関が中小企業に融資を行います。
そして融資を受けた中小企業は金融機関に返済を行います。
1番最初は保証を申し込みして、そして保証を承諾して、それから融資。つまりですね、信用保証協会の審査を通って保証の承諾をしてくれないと、銀行は1円も貸さんのですよ。
これが保証協会付きというものです。逆に言えば保証協会が保証を付ければ、どこの金融機関でも必ず貸します。
中小零細企業の信用保証付融資は金額が小さい
今の中小零細企業の信用保証付きの融資というのは、金額が小さいです。せいぜい1千万円位ですから。
これだと保証協会が100%保証します。
金額が大きくなると保証協会は80%です。あとの20%は金融機関が負うことになりますが、こうなると保証協会で審査が通って、尚且つ銀行の審査も通らないと融資が下りないんですね。
ですから金額が1千万円位までだったら、保証協会だけの審査で通るのですが、今はですね〜、この保証協会の審査がなかなか通りません。
そのくらい焦げ付きが多いんですよ。
焦げ付きが多すぎて、今は保証協会の審査を通るのは至難の業でございます。
審査時は税理士を銀行同行したほうが良いの?
いろいろ融資のことで心配な事はあると思うんです。
税理士の付き添いは原則必要なし
社長さんの中には、税理士先生に銀行について行ってもらわなくてはいけないんじゃないか?って心配される方もいらっしゃいます。
じゃあ、どんな時に同行依頼したほうが良いかというと、我々も実際について行っているのは金額が大きいものです。
今、我々が実際にやっているのはプロパー融資で融資額1億円位のものなんですが、この位のケースですと、確かに会計事務所が中にガッツリ入ってやらないと実務上出来ないんですよ。
ところが 500万円位の融資でしたら、社長さん自身でやるのが普通です。
どうして決算の内容がわかる人間を同行して銀行さんに行ったほうが良いのかと言いますと、実は会社の決算書っていうのは社長さんでもよく分からないですし、銀行の担当さんもよく分からないんですよ。
ところが社長さんも、銀行の担当さんも、立場上は会社の決算書が分からないと言えない訳です。
本当は分からないんですけれど、分かったフリしてやらなきゃいけない。
金額が小さい場合は別にそれでも良いんですけれどね、金額が大きくなるとそうもいきませんからね。やはり決算書を分かっている税理士がついて行った方がありがたいというケースも有ります。
銀行の担当さんから求められることはある
あとは銀行の担当さんから「税理士さん連れてきて下さい」と言われた場合も連れて行くべきでしょう。
ですが、いきなり税理士さんを連れて行くと銀行さんもビックリしますからね、「なんでですか。我々は信用されていないということですか?」ってね。
変な不信感を持たれちゃいますからね。
あおば会計では、信金さんがいつもお見えになるので、その人達は知り合いだからついて行っても驚かないかもしれないですけれど、全く知らない銀行には、ついてなんか行けないですからね。
相手の顔を潰すかもしれませんから。
そういうことを考えると、うちも大きな金額のケース以外は同行はしておりません。
担当者さんの仕事が捗るように資料を揃える
信用保証協会であれ、信金さんであれ、都銀さんであれ、結局は「窓口になった担当者さんの仕事がやりやすくする」というのが融資のコツです。
融資のコツが1つあるとすればコレだけなんですよ。
ある程度の事、返済の事とかっていうのは、その事業であったりこれまでの決算書を見れば分かります。
「だいたいこれ位返せるだろう」という感じでですね。
まずは早め早めに融資の申し込みをしてもらわないと、結局後から「あれ出して下さい」「これ出して下さい」という風に、どんどん書類が追加されるのが普通です。
なぜかと言うと、最終決済するのが何でも本部なんですね。
銀行の支店長さんなり支店長代理さんが来て「貸します」っておっしゃってもね、決済するのは最終的には本部なので、支店長さんの権限では無いんですね。
現場の人達は融資が通りやすいような書類で、本部にあげていくだけですから。
支店長さんが「貸します」とか言っちゃうとね、舞い上がっちゃうんですけど、「借りられるんだ〜!」と勘違いが起こることが多々有ります。
追加の資料を出してくれっていうのはどんどんどんどん、後から後から来ますから、それを見越して、あらかじめ先に申し込んでおかないといけないんです。
時間もどんどんかかりますからね。
時間がかかる事が大前提として、早めに申し込んで、担当者さんが仕事がやりやすいように資料を揃えていくと。
書類主義ですから、基本的に口で言った言わないなんて通用しませんから、書類は全部揃えて行くと。となれば、会計事務所が中に入って、やらなくてはいけない事もたくさんあります。
融資は、最初はどうしても下りにくいです。
やはり1回の実績を作っていく。その実績をつくるためには、前途のように担当者さんの仕事がやりやすいようにして行く。
基本的には貸し先は少ないですから、借りられるようになってくれば、どんどん「借りて下さい」って話になってきますからね。