そろそろ期末の節税対策を講じる経営者の皆さんも多いことでしょう。期末における法人の節税策の一つとして、「短期前払い費用の特例を用いて、期末に一年分の事務所の家賃を支払って経費とする」という方法があります。この方法を社宅にも適用して節税しようとする会社も数多くあるようですが、実際に可能なのでしょうか?税務のプロが解説します。
期末節税対策の王道は事務所家賃の期末年払い
この時期は期末ということもあり、多くの会社さんで節税対策が講じられます。
法人の節税策の一つとして、「短期前払い費用の特例を用いて、期末に一年分の事務所の家賃を支払って経費とする」という方法があります。
これにより、通常は一カ月ごとの家賃の支払いを経費にするのですが、一気に一年分を前もって経費にできるというものです。
モチロン、特例が使えない注意点が幾つかあります。
- ・契約で年払いとなっておらず、貸主の了承を得ずに勝手に一年分を支払う
- ・継続適用が大原則。年払い→月払い→年払いのように年度ごとに異なる方法を取る
というのが前置きで、本題はここからで、この特例を誤った解釈をしている会社さんが多いという話をしたいと思います。
事務所家賃の年払いがOKなら社宅の年払いは?
会社さんによっては会社が賃貸の契約をして、社員や役員の住居を代わりに支払う社宅制度を導入している場合がございます。
ではこの社宅にも前述の短期前払い費用の特例が適用可能か?
結論から申しますと「NO」です。
なぜそのようになるかと言いますと、通常法人税法上の経費とするためには、社宅も全額が会社負担ではいけないという事情がありまして。
通常は幾らかを給与の支払時に徴収するのですね。
社宅で徴収する際の計算方法は別件なので割愛致しますが、参考までに下記にリンクを貼ります。
国税庁タックスアンサー:No.2597
使用人に社宅や寮などを貸したとき
なぜ社宅に前払い特例を適用するのがアウトかと申しますと、同様に国税庁のタックスアンサーで短期前払い費用の特例のところで、下記のような記載があるからです。
ただし~一部省略~収益と対応させる必要があるものについては、たとえ1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入することは認められませんので注意してください。国税庁タックスアンサー:No.5380短期前払費用として損金算入ができる場合
つまり、月々の家賃支払いと従業員や役員から会社が徴収する分を対応させる必要がある。
故に、社宅では年払いの支払いが許されたとしても、その場合は単に前払費用として経費には計上できず来年度の資産になる。
と解釈されているのです。
間違えた節税対策はダブルパンチで会社の重し
決算対策として、多くの会社さんが「とにかく損金を出さねば」ということで、この特例でひっかかるようです。
しかし、社宅の年払いは損金にできませんので、むりくり先に費用を出したところで、節税にもなりませんし、キャッシュフローも痛むだけで、ダブルパンチで会社の重しとなります。
会社は税金だけを考えて経営するものではございませんので、キャッシュを意識して適正な節税対策を講じましょう。