無借金経営を目指して、金融機関との取引を避ける中小企業の社長は数多く存在しますが、この思想には大きなリスクが2つあります。1つ目は予測だにしない市場の減速による資金繰りの悪化に耐えられないこと、2つ目は、いざという設備投資によるキャッシュ不足で売上増のチャンスを失うという、2つのリスクです。これに対応し有用なパートナーとなるのは、大手ではなく中小の地方銀行などの金融機関です。
融資枠を金融機関に設けるべき理由は二つある
企業経営をする上で「無借金経営」にこだわる経営者がいます。実現できればそれは素晴らしいことのように思われがちですが、とても危険な思想です。
なぜでしょうか?企業経営には、キャッシュを豊富に確保しておかなければならない場面が、主に2つあるからです。
1)運転資金
上場企業でさえ倒産する市場経済の中ですから、中小企業は外的要因により一瞬で資金繰りが悪化する可能性があります。
そのような際にも対応策を講じるまでの間耐えうるだけの体力が必要となります。そのためにも融資により手元資金を厚くしておきましょう。目安は月商の3ヶ月分です。
2)設備資金
仮に600万円の設備資金を用意しようとしたとき、利益のみでその財源を確保しようとしたらいくら利益を計上する必要があるでしょうか。
600万円ではありませんね。
利益には法人税などの税金(ここでは仮に実効税率が40%だと仮定します)が課税されますので、600万円÷60%(100%-40%)=1,000万円の利益が必要となります。
では、この会社が年間500万円の利益を計上するものとすると、設備資金が貯まるまでに2年を費やすこととなります。
その2年間で、設備投資による売上増加のチャンスを逃してしまうということも考えられます。
管理会計には「機会損失(機会費用)」という言葉がありますが、このように目に見えない損失まで計算して、設備投資は行う必要があるのです。
融資を受けた場合にはこの1,000万円をショートカットして手にすることができるのです。当然元本や利息の返済が必要となりますので、資金繰りの計画は重要となります。
年商10億以下の企業は地方融機関と取引せよ
上記2つの要因から、金融機関から融資を受ける枠を確保することの大切さは、ご理解いただけたと思います。
では次に、借入先をきちんと検討してみましょう。
もし御社が年商10億円未満の場合(あくまで目安、利益率にもよります)には都市銀行や大手の地方銀行の他に、「中規模以下の地方銀行」や「信用金庫」、「信用組合」との取引が重要となります。
というのも、大きな銀行に中小企業が融資の申し込みに行った場合、ほぼ100%担当者はつきません。
仮についたとしても、何十社、時には100社以上担当する中の1社という扱いになりますし、1年の間に担当が何人も変わるということもあります。
当然1社に時間はそこまでかけられませんので、ペーパー上の審査で終わります。
一方、地方銀行等の場合には、どっしりと腰をすえた担当者をつけてもらえます。
これが何を意味するのかというと、経営者の人柄、組織としての経営理念のようなペーパーからは読み取れないようなプラス評価まで、地方銀行等は融資額に反映してくれます。
さらに、融資先のビジネス内容を詳細にヒアリングしながら、成長するための資金計画を一緒に考えてくれることでしょう。
担当者は融資の手続き上、当然ながら上司の決済が必要となりますが、支店長自ら融資先の面談に足を運んでくれるということも珍しくありません。これは大規模な銀行ではとても考えられないことです。
税理士の口利きを利用すると話もスムーズに
誤解していただきたくないのが、地方銀行等は融資の審査が甘いからという趣旨で勧めているわけではありません。
あなたのビジネスを理解してくれる、良きパートナーとなりうる存在だということです。
税理士はそれぞれ懇意にしている金融機関があります。
ぜひ、一度紹介を依頼してみてはいかがでしょうか。やはり一見で申し込むよりはスムーズに手続きが進みます。