音楽大手のエイベックス・グループ・ホールディングスが、日本音楽著作権協会(以下:JASRAC)に任せていた楽曲、約10万曲の管理を、著作権管理会社「イーライセンス」に移す手続きを始めたというニュースが10月に報道されました。音楽業界で起こる収入構造の変化は江戸時代に浮世絵業界で起こったことに近いものがあります。音楽業界のフリーミアム化は止められそうにありません。
avexが音楽著作権の権威JASRACに反旗
音楽大手のエイベックス・グループ・ホールディングスが、日本音楽著作権協会(以下:JASRAC)に任せていた楽曲、約10万曲の管理を、著作権管理会社「イーライセンス」に移す手続きを始めたというニュースが10月に報道されました。
これは、今後の音楽を取り扱う業界にはモロに影響することですし、飲食とかお店をやっている方にも少なからず影響するかもしれないので、予備知識は入れておいたほうがよいかもしれません。
そこで今回はこの事件が今後の社会へ与える影響について考えてみたいと思います。
JASRACが持つ強大な著作権に関する権威
まずこのJASRACってどんな団体なの〜ってことが気になります。
JASRACという団体は簡単に言えば「アーティストがプロとして収益を得る為に、その作品が乱用されないように監視している団体」といったところでしょうか。
みなさんもCDを一度は買ったことがあると思います。(若い人はCD買ったことがなくてituneかもしれませんね。)
CDの裏をみるとほとんどのCDにJASRAC(日本音楽著作権協会)のマークがあります。これは何かと申しますと、「結構時間かけて作品を作った人が損しないようにブロックしているマーク」です。
このマークがあるCDについて著作権管理と管理料を牛耳っている団体がJASRACです。
世の中でJASRACに加盟された音楽を流す場合、個人的な使用以外は結構な範囲でJASRACに料金を払う仕組みになっています。
たとえば、店舗とかで音楽流す場合も、JACRACに加盟している曲なら基本使用料がかかります。
法人の経費でいうと勘定科目には「著作権使用料」と記載するようになります。(税理士さんに確認してみましょう。)
ちなみに個人的な昔の話ですが、JASRAC凄いと思った体験がありました。
私はMIDIで楽曲を作ってホームページにアップしていた時期がありまして、それが、JASRACの琴線に触れたのか、JASRACから直接、請求が自宅に届いたのです。
こんな個人の行動まで監視されているんだーと驚きと、違和感を感じた経緯がございます。
その違和感は、音楽業界に勤めている人なら日々感じているどころか、縛られている感じがしていることでしょう。
そして今回のエイベックスがJASRACを脱退するというニュースへ繋がっていくのです。
著作権の権利緩和を危惧する人も出てくる
エイベックスがJASRACから権利をイーライセンスに移行する10万曲の中には浜崎あゆみ、エグザイル、安室奈美恵の曲も含まれるようです。
著作権の使用手数料がイーライセンスのほうが安いというのと、プロモーション用の楽曲は、著作権が発生しないという、レコード会社等の業界に近い規制を緩めた印象。
ちなみに店舗のBGM等は移行はされずJASRAC配下のままです。
IT業界でいうと、インタラクティブ配信(ダウンロードとかストリーミングとかの配信)もJASRAC対象ですね。これももちろん使用料がかかり、このあたりの規制も今後の展開の見所ですね。
このあたりが緩和されると、音楽関わる仕事をしている業界の緩和から、もう少し広域で関わる人たちへの緩和になっていきますね。
有益な音楽コンテンツ配信であっても、JASRACの壁により難航するコンテンツは過去多かったですし、これからもその壁はありますが、エイベックスが少し風穴を開けたことが、その壁を越える鍵となることは間違いないでしょう。
個人的には今までお蔵入りにしていたコンテンツを再度手がけるチャンスが来るかも。
でもやはり、ポイントは、「苦労して作った人が過去にいたんですよ~(クールポコ風)」ということで、あまり規制緩和をやりすぎても、アーティストの中には面白くないと感じている人も多いはず。
スガシカオは過去アルバム作るときに山にこもったとサンレコで言ってましたし。
江戸時代の浮世絵師のような稼ぎ方が主流に
これに対して時代の流れは、彼らの意図とは真反対の方向にあります。
なぜなら様々なサービスがフリー(タダ)で受けられ、消費者はその恩恵をうけるのが当たり前となってしまっているからです。
その中でも一番簡単なのが、「無形な価値」を持つ商品のフリーミアム化です。音楽なんかは無形の芸術ですから、もろに親和性が高いですね。
ここで興味深い事実があります。
実は江戸時代には著作権という概念はなかったそうです。
著作者に著作権というものは帰属せず、例えば浮世絵の場合は、刷るために必要な版元を持つ板木の権者が現在で言う著作権を持っていました。
では著作者に収入が入ってこなかったかと言えば、そうではありませんでした。浮世絵師には直接お金をくれる多くのパトロンがいたからです。
大名や裕福な商人にとって浮世絵師と付き合っていることは、ロックだったんでしょうね。
今で言う、YOUTUBEを利用して無料で音楽を配信し、聴く人の絶対値をまずは増やした上で、結果アーティストへの2次的恩恵(ライブ収入・グッズ収入・ファンサイト収入)があるというビジネスモデルに似ています。
権利とか関係なくまずは色んな人にばらまいてもらうけれど、結果として、作った人へリターンをもたらす仕組みがあったのです。
ちなみに今でも浮世絵師さんは活躍していますが、板木権者さんは明治時代になると著作者の自由が増えて権利も強くなると同時に消えてしまいました。
こう考えると板木権者のようなJASRACもいよいよ厳しくなってきそうですね。