多くの人にとって憧れのフェラーリ。フェラーリを買うだけの支払い能力は会社で持つようになったけれど、税務調査が怖いという理由でフェラーリなどの高級車を購入されない経営者は多いことでしょう。これらの判断を行う上で参考になるのが、平成7年に国税局と企業の間でフェラーリの経費算入と減価償却を認めるか否かを争った事案です。経費算入するなら満たすべき2つの要件を見ていきましょう。
フェラーリ それは経営者にとって憧れの乗り物
イタリアの高級スポーツカーメーカー・フェラーリが10月21日にニューヨーク株式市場に上場しました。
株価は目下50ドル前後を推移して一進一退。「フェラーリは買えなくても6,000円あればフェラーリの株は買える」なんてニュースもメディアを駆け巡りました。
新車価格1.3億円!のラ・フェラーリ
“フェラーリ”
あぁ、なんて悪そうで力強い響きの名前を冠したスポーツカーなのでしょう。
「いいよ。国産車で」とは言うものの、乗れるのであれば本音のところでは、フェラーリに一度は乗りたいという方も多いのではないでしょうか?
ステレオタイプで押し付けがましいかもしれませんが、経営者の中には「良い暮らしがしたい」「良いクルマを乗り回したい」という気持ちから一念発起して、起業された方も多くいらっしゃるはずです。
中にはフェラーリを買うだけの支払い能力(力)を会社が持つようになったけれど、税務調査が怖いという理由でフェラーリなどの高級車を購入されない方もいらっしゃいます。
フェラーリの購入費用を経費算入させるにはどのような要件が必要なのか?
過去の判例で「フェラーリの購入費用は経費として認められるか?」という争いがあり、ここにヒントが落ちているのでご紹介したいと思います。
フェラーリは経費で買える?判断に役立つ判例
今から20年前の話、平成7年に国税不服審判所で、国税局と企業の間で係争が繰り広げられました。その中身は税務調査によって否認されたフェラーリの減価償却が有りか?なしか?というものです。
当該企業は社長(以下:フェラーリなのでFさん)の通勤・業務に使用する用途でフェラーリを購入していましたが、国税局がこれに目をつけて「道楽で買ったフェラーリは経費で落とせません」と突っぱねたのです。
蛇足ですが、裁決の下された年代と裁決文内の排気量4,940ccというキーワードから、Fさんが乗っていたのはフェラーリ・テスタロッサあたりと推測されます。
中古車市場では今も爆発的人気で品薄のフェラーリ・テスタロッサ
この係争に対する国税不服審判所の判断は、企業が経費でFさんのためにフェラーリを買ったこと自体はもちろん、企業の資産として減価償却を認めるという内容でした。
国税不服審判所がフェラーリ購入費用の経費算入を認めた理由は以下の3つです。
1)本当に業務で使用する用途で利用していた
1つ目の理由は、フェラーリを会社の経費で購入したFさんが、業務でフェラーリを使い倒していたことにあります。例えば出張にフェラーリで行った時にFさんは、宿泊代や高速道路の料金は出張費として会社に提出していましたが、交通費は会社に提出しませんでした。更に3年間で7,600kmの走行を行っていたことも、業務の範囲内で使用した証拠と認められました。
2)私用でも自腹で買った高級車を持っていた
2つ目の理由としてFさんは私用の高級車を3台保有しており、そのいずれもが超高級車であったことがあげられます。国税局の「高級車は道楽(私用)だから減価償却は認めません。」という主張に対して、「遊びは自腹でやってるもん。高級車だから減価償却ができない合理的な理由ってある?」という壮絶な返しを食らわせたわけで、税務局の訴えは極めて主観的なものと見なされてしまったのです。
3)利益に対して適切な税金を支払っていた
最後の理由ですが、当該企業は1年で4億もの利益を出して、しかも1.5億円を税金として国に既に差し出していました。「利益を出して億単位で納税の義務は果たしているのに、年間で1,000万いかない減価償却の何が悪いんだ。」と言われれば、国税局もシュンとするしかありません。
おまけ:強引な経費算入はやっぱり負ける
いかがだったでしょうか?
上記の裁決からフェラーリを経費で購入するためには、
- 1:業務に使用することに用途を区切ること
- 2:プライベートでも買える財力があること
- 3:ある程度の規模で利益を出して納税の義務をちゃんと果すこと
という3つの要件を満たす必要があります。あくまでも最低限の要件と考えたほうが良さそうです。
ちなみにこの裁決にはもう一つの裏話があります。
実はFさん、会社で3,000万円位するボートも購入していたのですが、こちらは購入費用の経費算入と減価償却を認められませんでした。
業務で毎日のようにボートに乗っている客観的な事実がなければ、車両運搬具として減価償却は認められません。Fさんは業務の傍らで漁業も行う必要があったのかもしれません。
また福利厚生費で経費算入するなら、社員の殆どが船舶免許を持っていなければ認められませんし、交際費は損金算入に上限があります。
というわけで、国税局とFさんの戦いは1勝1敗の引き分けという結果に終わりました。
まずはしっかり仕事に邁進して、フェラーリ購入の時期が来た時にこの判例を思い出したいですね。
画像:ウィキペディア