コスト削減は重要な経営課題です。しかしコストを下げることでお客様の満足度を下げてしまっては、結果的には客数が減少し売上が立たなくなります。お客様を失うコスト削減は「節約」ではなく、単なる「ケチ」となってしまいます。当サイトのテーマである「節約」と「ケチ」の違いを、実際にあった2つの残念な企業サービスの事例を元に、プロフェッショナルマーケターが解説してくれます。
養老温泉に誕生した総ヒノキ造りの温泉
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
私は温泉が大好きで、かなり頻繁にいろんな温泉地に行きます。最近は箱根が多いです。千葉方面だと「養老温泉」がいいですね。とりわけ、養老渓谷の紅葉は巣晴らしいので、晩秋に「紅葉狩り」を兼ねて養老温泉に行かれることをおススメします。
では、ちょっと前になりますが、養老温泉に新しい温泉施設がオープンし、早速行ってみたときのことをお話ししたいと思います。
その施設は総ヒノキ造りの立派な建物でした。もちろんヒノキ風呂です。施設内に漂う木の香りが贅沢な気分にさせてくれました。
脱衣場から浴場までは渡り廊下が設けられていて、
「この施設は風通しを良くしてあります。冬場は寒いかもしれませんがご了承ください」
といった張り紙がありました。
湿気に弱いヒノキを長持ちさせるためなんでしょうね。私も冬に行ったのですが、確かにかなり寒かったです。
総ヒノキ温泉なのになぜ桶はプラスチック?
さて、ゆっくりと湯船につかった後、体を洗おうと思って桶をとってみると、なんとプラスチック製。
木肌風のデザインではありましたが、まぎれもないプラスチック桶です。私はちょっとガッカリしました。
私だけでなく、他のお客さんの多くも同じように感じたのではないでしょうか?
こだわりの施設で、お客さんに寒い思いをさせてでも総ヒノキにしたのなら、桶も木製にすべきところでしょう。桶は消耗品ですから、経営者としては「コスト削減」に走ったのでしょうね。
しかし、せっかくの贅沢な気分が桶一つで台無しです。
私は1回行ったきりで2度と行っていません。正直なところ、「この施設はそのうちつぶれるのじゃないかな?」と思ったほどです。
ケチとは顧客満足度を下げる悪のコスト削減
同じような話が他にもあります。
ある高級スポーツカーには立派なマニュアルがあり、それはダッシュボード下のボックスに入っているのですが、ケースがやはりプラスチック製なのだそうです。
1千万円以上する高級車ですから、たとえば「本革製」のケースにしておけば、オーナーの満足度は高まっただろうにと思います。
以上の2つの事例、どちらも、「節約すること」と「ケチること」の違いがわかっていないのです。
コスト削減は重要な経営課題ですが、コストを下げることでお客様の満足度を下げてしまっては、結果的には客数が減少し売上が立たなくなります。
売上があってこそのコスト削減です。お客様の満足度が低下し、離反につながるようなところのコストを下げてはいけない。
お客様を失うコスト削減は「節約」ではなく、単なる「ケチ」。これはぜひ覚えておいてもらいたいポイントです。
これからも、「社長、そこケチったらだめでしょう!」という事例をご紹介しますね。