ケネディ大統領の父ジョセフから教わるタイミングの重要性

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 アメリカ合衆国という歴史の浅い国における、数少ない名門一家といえばアイルランド系の名門一族「ケネディ家」である。ケネディ家が今日の繁栄に至る基礎を築いた人物ジョセフ・P・ケネディは巨万の富を株式投資で築いたが、ある日突然投資の世界から姿を消した。そのきっかけとなった靴磨き少年との会話は、ビジネスも「いつやるか」というタイミングの重要性を教えてくれる。

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ケネディ大統領の父ジョセフ・P・ケネディ

 アメリカ合衆国という歴史の浅い国における、数少ない名門一家の代表格といえばアイルランド系の名門一族「ケネディ家」である。

 第5世代に至るまでにケネディ家から輩出された政治家の数は10名を超えており、2人の大統領を世に出したブッシュ家と一緒に、“アメリカのロイヤルファミリー”とも称されている。

 ケネディ家が今日の繁栄に至る基礎を築いた人物といえば、ジョセフ・P・ケネディ(1888〜1969:以下、ジョセフ)である。

 ジョセフはアメリカで今でも屈指の人気を誇る第35代大統領、ジョン・F・ケネディの父であり、政治家であると同時に、ウォール街屈指の相場師で実業家でもあった。

 ジョセフの代でケネディ家の盤石な経済的基盤は培われたが、彼が残したエピソードが「ビジネスにおいて時を見定める重要性」を教えてくれるため、ぜひ紹介したい。

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ジョセフは靴磨きの少年から相場の天井教わる

 ジョセフは1919年にウォール街へ降り立ち、株式相場の世界ですぐにその才能を発揮し1923年には独立した事務所を持った。

 彼は巨万の富を得たが、もたらされた利益は今では証券取引法で禁止されている、インサイダー取引や風説の流布によるものであった。(そんな人間が1934年に設立された証券取引関心委員会の初代委員長になったのは、誠に以って皮肉な話である。)

 とはいえ1929年までに彼は株式で得た資産を、今で言えばインターネット産業のような花型産業であったハリウッド映画産業へ投資し、更に天文学的な額の富を築き上げていた。

 それでもジョセフは自分のコア・コンピタンスたる株式投資業を継続していた。

 1928年冬、ウォール街のオフィスに向かう途中で、ジョセフは偶然見かけた靴磨きの少年に靴を磨いてもらうことになった。

 リップ・サービスもあったのかもしれないが、少年は靴磨きを終えた後、ジョセフに向かって「おじさん、◯◯って会社が絶好調らしいよ。◯◯の株を買いなよ」と進言して来た。

 靴磨きの少年から話を聴いたジョセフが起こした行動、それは全ての株を売り払うことだった。

 それから数カ月後、1929年10月29日(月)にニューヨーク証券取引場は、時価総額の12%を1日で失うこととなった。いわゆる“ブラック・マンデー”のことである。 

 この時ジョセフは、世の中の情報に乏しい少年ですら株式投資に熱中することを見て、バブルがまもなく弾けることを予感していたと言われる。

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良い仕組みのビジネスも時を読まねば失敗する

 ジョセフと靴磨きの少年によるエピソードは、株式投資だけではなく、あらゆるビジネスの選択局面で活かせる逸話である。

 ビジネスはビジネスモデルや集まるメンバーが如何に良くとも、時の流れに逆行し間違ったタイミングでスタートすれば、失敗に至るケースが往々にしてある。

 ジョセフと靴磨きの少年は同じ株を買っていた可能性もあるが、買うタイミングが明らかに違っていただろう。

 スタートアップを迎える起業家はよく「まずは始めてみなければわからない」「このメンバー、このビジネスモデルでうまく行かなければ、何をやってビジネスなんだ」という。

 その主張や意見にも一理ある。

 しかし「天の時、地の利に叶い、人の和とも整いたる…もっとも、この三事整うにおいては、弓矢も起こるべからず、敵対する者もなし」とは、戦国時代の軍神・上杉謙信公の言葉だ。

 優れたビジネスモデルであり、実行する人がいたとしても、「敢えて今のタイミングは一時停止する」というのも1つの経営者としての賢明な判断である。

 意外と抜け落ちやすい「タイミング」というビジネスの重要な要素を、ジョセフ・P・ケネディと靴磨き少年の逸話は教えてくれる。

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