芸能人が住むタワーマンションは、富の象徴とも言える。昨今、東京オリンピックの開催や景気回復を要因として、不動産価格が上昇していることに加え、相続税の節税対策としてタワーマンションの購入需要が高まっている。ただし節税対策の購入には大きなリスクがあることを踏まえよう。親の財産を適正に把握し、自分にあった相続税節税対策が望まれる。
タワーマンションの購入は節税にもつながる
タワーマンションの高くそびえる光景は、都会的で洗練されたイメージがあり、「神田うのが六本木の39階建てタワーマンションの最上階4部屋を購入した」と報じられれば、さすが芸能人・有名人と多くの人は考えるだろう。
いわばタワーマンションは、「富の象徴」とも言える。
日本の不動産に関する法律で、「タワーマンション」に明確な定義はない。ただし一般的に20階以上で高さ60m以上のマンションが、タワーマンションと言われている。
多くの富裕層がタワーマンションを購入している理由の1つに、相続税の節税対策が挙げられる。
被相続人が銀行へ多額の現金を保有していると、相続する際に相続税がかかることは周知の事実。
もちろんマンションも資産なので相続税の対象となる。
相続税法22条では「相続・遺贈または贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による」とし、財産評価は客観的な交換価値を持った時価で行われる。
タワーマンションは取得時の費用が高額なのに対して、1戸当たりの土地の持ち分が小さいため、評価額が大きく下がりやすい。よって現金からタワーマンションへ切り替えて財産保有した場合、納税額が少なくて済むのだ。
また現在、東京都内のタワーマンションは、賃貸としての需要・不動産価格の高騰により、財産評価の時価に対して、売却価格が大幅に高いケースも多く、売却価格のほうが取得価格より高い場合もある。
支払う税金が少なくなり、取得価格とトントンで売却できれば、手元に入るお金は現金を相続するより大幅に増える。
今年度から相続税の基礎控除額が下げられ、相続税率も上昇したため、タワーマンション節税に注目が集まるわけである。
タワーマンション節税が失敗する3つの例
ただし国税庁もプロ、節税対策が適用されにくいケースも増えている。以下提示しよう。
1)節税対策丸出しな購入
例えば親の死の間近にタワーマンションを購入するケースだ。形式的に親の名義と現金でタワーマンションを購入し、死後一年以内に売却するなどあからさまな場合で、裁判で納税者が敗訴する判例が出ている。この場合は売却価格を相続額と見なされてしまうので、たっぷり追徴課税を支払うことになる。
2)責任能力のない被相続人の現金を利用した場合
今年改正される民法により、認知症患者を被相続人(要するに死んだ人)とする場合の売買は無効であると明文化される。施行の明確な時期は未定だが、現在でも様々な判例で、責任能力のない者との売買契約が無効と裁判所で判断されている。
3)不動産価格の下落で大幅な売却損失
相続対策目的によるマンション購入者の多くが、不動産価値の上昇を見込んでおり、相場下落を想定していないケースもある。特に東京ではオリンピック開催が決定したことにより、人口の都心回帰が進んでいるため強気の人も多い。ただしバブルがいつ弾けるかは誰にもわからない。1990年台にバブルがはじけた当時、資産価格が下落したにもかかわらず固定資産税が高止まりしたままだったり、売却しようにも破格値でしか売れない人が多くいたことを忘れてはならない。特に相続はいつ起こるかわからない。買ったところが「すっ高値」となって節税額よりも売却損が大きくなっては元も子もない。損失を被った場合は自己責任となる。
親の財産を適正に把握して節税対策しよう
2015年から相続税が負担増となり、家族間の「相続」が「争族」になっているケースも増えている。
相続金額によって、相続税対策も変わる。
今回ご紹介したタワーマンションの購入による節税は、親が資産家でなければリスクが大きい。
「親の資産であるからぶっちゃけた話をしにくい」という気持ちがあっても、相続財産を適正に把握するため、積極的にコミュニケーションを取ろう。
今のうちから適切な相続税対策を立て、相続に絡んだ揉め事を起こさないのが、親孝行の1つともなるからだ。