自分達の会社がある地区のイベントへ一部お金を出してあげる場合、これは「一般寄付金」と呼ばれる種類の寄付金になり、損金算入できる範囲が計算式で決まります。資本金1千万円・年間売上1千万円の企業、資本金1億円・年間売上50億円の企業で、それぞれの損金算入できる範囲を具体的に計算してみると、「儲かるほど社会貢献しやすい」と言われる意味が理解できます。
企業と寄付金には切っても切れない関係が存在する
企業は営利を目的として設立される団体ですから、本来は利潤追求をその本質として有しています。
一方、成熟した社会で消費者の支持を受け続けるためには、「高度な倫理感」や「公共的な器としての存在」も企業に求められることになります。
特に近年ではCSRの「社会のためになる活動を積極的に行いながら、社会と共に企業を発展させていく」という概念が浸透しており、CSRの一環として様々な取組に寄付する企業が増えています。
たとえば地域に根ざした企業運営をしている場合に、自分達の会社がある地区のイベントへ一部お金を出してあげることがあるかもしれません。
もちろんこれらも寄付行為による立派なCSR活動ですが、大企業の中には特定の社会活動を行う団体に億単位で寄付する企業すらあります。
なぜ彼らはこんなに大きな単位の額を平然と寄付できるのでしょうか?
また、これら寄付金はどのような計算式を経て経費算入されるのでしょうか?
企業の寄付金には5つの種類が存在する
まず、企業の寄付金には以下5つの種類があるので、先にお伝えしたいと思います。
- 1)国・地方公共団体に対する寄付金・指定寄付金
- 2)特定公益増進法人に対する寄付金
- 3)一般寄付金
- 4)国外関連者に対する寄付金
- 5)完全支配関係がある他の内国法人に対する寄付金
まず、1)の寄付金は公共機関への寄付となるため全額を損金算入することができます。
また、2)の特定公益増進法人に対する寄付金も、非常に公益性が高い寄付となるため、そのほとんどを損金算入することが可能です。
一方で、4)、5)はグループ会社や関連会社への寄付金となり、営利行為の性質が高いため全額が損金算入できません。
冒頭で紹介したような、地区のイベントへの寄付行為などは、3)の一般寄付金に該当します。
「資本金1千万円・年間売上1千万円の企業は寄付金をいくらまで損金算入できる?
一般寄付金とは、公共団体や公益法人への寄付、その他グループ会社や関連会社への寄付以外の寄付金で、民間への寄付金は殆どこれに該当します。
一般寄付金をどこまで損金算入の範囲とするのかは、
- 1)期末の資本金等の額✕会計期間の月数/12✕2.5/1000
- 2)会計期間の所得金額✕2.5/100
を合計した金額の4分の1までと定められています。
非常にややこしいので、具体的な数値で示してみましょう。
あるところに、資本金1,000万円、年商1,000万円の会社があったとしましょう。
これを上記の計算式に当てはめると、
- 1)1,000万円✕12/12✕2.5/1,000=25,000円
- 2)1,000万円✕2.5/100=250,000円
となり、両者を合わせた275,000円÷4=68,750円までの寄付金を損金算入できることになります。
次に、資本金1億円、年商50億円の会社があったとしましょう。
この会社の寄付金で損金算入できる額は、
- 1)1億円✕12/12✕2.5/1,000=250,000円
- 2)50億円✕2.5/100=125,000,000円
となり、両者を合わせた125,250,000円÷4=31,312,500円、つまり、一般寄付金だけで3千万円以上の寄付金を損金算入できることになります。
具体例を見ていただければわかるように、寄付金を損金算入できる範囲(枠)は、資本金等と所得金額、特に所得金額が増えるほど拡大することがわかります。
ですから、企業は儲ければ儲けるほど、寄付金を節税対策として有効活用できるようになり、社会にも気前よく奉仕できるようになるのです。
大企業が積極的に社会貢献活動に取り組む理由や、儲かるほど社会貢献しやすい、と言われる理由がご理解いただけるかと思います。