VALUとは個人が資金調達できる仕組みとしてスタートしたサービスで、それだけ聞くとクラウドファンディングと似ています。一方でVALUの売買には株式取引に似た要素も見られるため、課税取扱がどうなるのかが問題となります。現時点で国税庁からの公式見解は出ていないため、税務の専門家にヒアリングした現時点での対応策をお伝えします。
VALUの税金取扱いは国税庁から未だ見解無し
著名YouTuberのヒカル氏らがVALUというサービスを使って起こした問題が、ちょっとした騒動になっています。
自らの人気にかこつけて、高値を付けたVALUを売り抜け多額の資金を仲間内で入手したことが「詐欺的行為」にあたるのではないか?と言われています。
VALUとは個人が資金調達できる仕組みとしてスタートしたサービスで、それだけ聞くとクラウドファンディングと似ています。
しかし、もう一方で、
- 1)VALUサイト内でのみ流通する自身の「VALU」を発行
- 2)投資家(支援者)がそれを購入する
- 3)購入したVALUはサイト内で第三者に売却が可能である
- 4)VALUの売買には仮想通貨(ビットコイン)を使用する
という仕組みから、株式取引に似た要素も持っています。
またVALUは、「人気によって価値変動する=時価が存在する」というのも重要な点です。
このVALUの仕組みから考えて、利益や損失が発生するというのは直感的にわかります。
となれば当然税金の問題が出てきますが、何せ新しいサービスのため、どのように扱ったらよいのかまだ税務当局の見解が出てきていません。
また、決済にビットコインを使うというのも問題を複雑にしています。
そこで本稿は個人間の取引を前提にして、VALUで利益を得た場合にどのような処理すれば良いのか、暫定的な判断で検証したいと思います。
VALU発行者は利益が出た時にどんな処理をしたら良いの?
まず、VALUの発行者はVALUを発行することで資金を得ることが可能になります。
VALUの発行に元手はほとんどかからないため、得られた資金の大半は発行者の利益ということになります。
この場合、
- 1)VALUを売ったことによる譲渡所得
- 2)VALU自体に何かしらの価値が無いことから贈与(例えば株式であれば株主権利、社債であれば債権及び確定利息など)
- 3)発行者が購入者に優待行為を行うため、その優待を受ける権利の販売=事業所得(若しくは雑所得)
という3種類の考え方が成り立ちます。
また決済は全てビットコインで行われることから、いつの時点で発行者に所得が発生したのかという問題もあります。
この点については、先ごろ国税庁がビットコインの取り扱いについて「ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象(主に雑所得)となります」という見解を発表しました。
この見解に基づけば、発行者が得たビットコインを円などの実通貨に換金、あるいはビットコインを使って物品やサービスを購入した時点が「所得発生時点」と考えられそうです。
ただしこれはVALUではなく、あくまでビットコインについての見解であるため、VALU発行時点で所得発生(その時点でのビットコイン時価で評価)とし、それ以降の換金や使用時はビットコイン自体の所得(雑所得)として取り扱うべきと考えられます。
VALU取得者(売却者)利益が出た時にどんな処理をしたら良いの?
売却額から元手(+手数料等)を差し引いて利益が出れば、そこに所得税がかかるだろうというのはイメージしやすいと思います。
しかし解釈次第では異なる取り扱いも考えられます。
例えばVALU発行時の発行者への課税が贈与とされた場合は、贈与とは一方が一方へ無償で価値移転させる行為ですので、贈与者がそれにより何かを取得したということがあり得ません。
となれば売却時は元手が0円の譲渡、もしくは買い手から売り手への贈与になるという可能性も出てきます。
またビットコイン決済による問題が、発行者の時と同じように存在することにも注意が必要です。
更に、消費税の扱いについても現時点では国税庁からの見解が1つも出ておりません。
消費税が、「事業として対価を得て行う取引として売買代金にかかるのか?」「有価証券の譲渡のように売買手数料に対してかかるのか?」も、今後の大きな争点となっていきそうです。
上記のように、未だ利益に対する課税の取扱いについては不明な点が多いため、利益が出たから「マルっと換金してパッと使う」ということだけはしないほうが良い、というのが現時点での判断です。