普段一生懸命働いてくれるスタッフたちに、貴方は常日頃から感謝しています。頑張りに応えてサービスの意味も込め、従業員に自社商品を破格の安値で気前よく社内販売してあげたいと思っているかもしれません。だとしても、社内販売の割引率は30%程度に留めておくべきです。社員がかえって損してしまう可能性があるからです。
スタッフへ感謝の意味も込めて格安で社内販売したい!
在庫を抱えるビジネスをやっていると、たまに思わぬ在庫の滞留が起こります。
懸命に販売しますが、それでも売り切れない時は、タダ同然で在庫を外部へ投げ売るよりくらいなら、ブランドを守るためにスタッフ達へ格安で商品を譲りたいと思うことがあるでしょう。
また、自社の商品が社内のスタッフにも需要がある場合、福利厚生の一環として、従業員に自社商品を破格の安値で気前よく社内販売してあげたいと思う方もいるかもしれません。
ただし、社内販売は値引率を間違えると、思わぬ課税の元凶となるため注意が必要です。
以下、ご説明いたしましょう。
社内販売の割引率を30%程度にとどめておくべき理由
たとえ、私達経営者が「社員へのサービス」だと思って、福利厚生的な意味合いで社内のスタッフへ商品を割引販売するとしても、それは内輪の話であり、第三者から見ると会社とスタッフは取引をしていることになります。
スタッフに対して値引き販売する場合、従業員は一般の消費者に販売する価額よりも低い価額で同じ商品を購入できます。
たとえば、10万円で販売しているテレビについて、社内販売なら5万円で購入できるなら、差額となる5万円分の利益を受けていることになります。
実は、この値引き販売によって会社からスタッフに与えられた経済的利益は、「現物給与」として課税対象となるのです。
ただし、次の3つの要件を満たす場合には、課税しなくてもよいものとして扱われます。
(1) 値引販売に係る価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常他に販売する価額に比し著しく低い価額(通常他に販売する価額のおおむね70%未満)でないこと。
(2) 値引率が、役員若しくは使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められていること。
(3) 値引販売をする商品等の数量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること。
所得税基本通達〔給与等に係る経済的利益〕
わかりやすく説明すると、
- 1)値引きは30%程度に留めること
- 2)役職など立場によって購入枠の過度なえこひいきが無いこと
- 3)購入の目的が再販売など商売目的ではなく自家消費目的であること
ということです。
適正な要件を満たさないとスタッフたちがかえって損するハメに…
たとえば、先程の事例でご紹介したような、10万円のテレビを半額の5万円で社内販売すると、上記1)の「値引きは30%程度に留めること」という要件を満たしてません。
従って、社内販売したテレビの値引き金額5万円は、スタッフに対する現物給与として扱われ、所得税の課税対象に含まれてしまいます。
つまり、スタッフがかえって損してしまうのです。
社員の満足度や意欲を高めるために、社内販売を行うのはとても良いことですが、まずは所得税法の正しい知識を踏まえておきたいところです。