ある日、貴方の会社に5年ぶりの税務調査が入りました。そこで衝撃の事実が発覚します。なんと信頼していた営業マンが自社のシステムを水増し発注し、会社のお金を横領していたのです。ところが税務調査宦は横領分についての税金、更には追徴課税の支払まで求めます。なぜ、こんな理不尽なことが起こるのか?詳細を解説いたします。
税務調査で社員の横領が発覚!横領されたお金にも税金ってかかるの?
ある日、貴方の会社に5年ぶりの税務調査が入りました。そこでとんでもない出来事が発覚します。
なんと信用していた営業マンによる横領が発覚したのです。
問い詰めたところ、彼は外部企業と結託して、自社に導入するシステムを水増し発注していました。
確かにシステムは導入されたけれども、かなりしょぼかったので、本当に1千万するのか?と思ってはいたのですが、実際には数万円のシステムを、結託する1社を通して1千万円で会社に買わせていたのです。
経営者はそんなことを知る由もありません。彼を信頼して権限を移譲し、受発注について裁量を与えていたからです。
横領した営業マンは当日中に懲戒解雇とした上で、横領に関する一切の口外を禁じ、外で働いたお金を会社へ定期的に返済させることを約した念書に判子を押させました。
ところが、コトはここで終わりません。
税務署が、水増し発注したシステム費用について「本来計上すべき利益」とみなし、これに税金を課したうえで、更には追徴課税も請求してきたのです。
「なぜ被害者でもあるにも関わらず、こんなに余計な税金を請求されるんだ!支払う原資はどうすれば…」
果たして、貴方は営業マンによる横領分まで税金を支払わねばならないのでしょうか?
横領金でも税金の支払を免れることは難しい
今回あげた事例のように、従業員の横領が税務調査によって明るみに出るというパターンは、決して珍しいものではありません。
資源の限られた中小企業は、資金の決済管理や意思決定プロセスについて、大手企業のように幾重のチェック機能を保有していないことが殆どだからです。
さて、社員による横領が発覚した場合に、会社側は税金を支払わねばならないか?という問題に戻りましょう。
結論から言うと、会社側は税金を支払わねばなりません。
なぜなら、会社が支払う税金について税務署側は、水増し分の請求が「本来なかった経費」として除外して計算することを求めているからです。
一方で税金を支払いすぎた時に還付請求を出す権利もあるのだから、その逆もしかり、というのが税務署側の論理なのです。
幾らなんでも追徴課税の支払は理不尽では?
次に、「本来支払うべき税金を納めるだけならまだしも、追徴課税まで取られるのは理不尽過ぎる」と考える方もいることでしょう。
しかし、その横領が全く経営者の関与できない場所で起きた、ということを証明できない限り、重加算税(重い罰金)を免れることはできません。
更には、横領した金額の全額返済が期待できなければ、横領した金額が「従業員に対して支払った給与(賞与)」として扱われ、所得税が発生してしまいます。
また、所得税を本来納税すべき期日も過ぎてしまっているため、社員に支払能力が無い場合、延滞税の支払いまで会社側が負担することになります。
本来は、所得税や延滞税は横領した社員が負担すべきものですが、社員に支払能力が無い場合は、会社がこれを負担するルールになっているからです。
税務調査が嫌いだとおっしゃる経営者が多いのには、このような事情も絡んでいると考えられます。
泣きっ面に蜂でも経営者が立ち上がるべき理由
ちなみに、横領した社員の多くは、
- 支払に困っていたので横領したお金を支払に充当した
- 一度に大きなお金を手に入れて派手に使ってしまっている
という事情で、横領したお金を既に消費しきっていることが多いものです。
この手の人間は、元々がお金にルーズな傾向を持っていますから、定期的な返済の目処を立てられない、逃げてしまう、ということも考えられるでしょう。
もしも貴方が当事者なら、金銭面でも肉体面でも辛い日々を過ごすかもしれません。
しかし、強くあってください。打ちひしがれる前に、横領から二次派生する更なる被害を防ぐ必要があるからです。
たとえば、従業員の横領があったということが世の中に知られると、対外的に会社の信用を失い、銀行との取引にも大きな影響が生じます。
無茶な形で騒げば、取引先との取引にも悪影響が及ぶ可能性があります。
このような事態を防ぐためには、横領した社員との間でなるべく速やかな決着をつけ、二度と同じことがないように、社内における資金管理・受発注体制の改善に注力するなど、建設的な作業を急ピッチで進める必要があります。
貴方には横領を働いた人間以外にも、守るべき社員が、そしてその家族がいます。
経営者にとって、本当に“Hard Things(耐え難いこと)”ですが、この苦難を乗り越えて、更なる会社の成長を実現させる義務が貴方にはあります。