たまの日曜休みを取って、山菜を採りに山へ入ったところ、竹やぶでなんと黒いビニール袋に入った3億円を発見しました。これはまさか、失われた3億円ではないか!いずれにせよ、3億円の拾得者は、このお金についてきちんとした手順で処理する必要が生じます。その手順を詳細にご説明します。
まさか竹やぶで3億円を見つけてしまった俺…どうするぅ?
たまの日曜休みを取って、山菜を採りに山へ入ったところ、竹やぶでなんと黒いビニール袋に入った3億円を発見しました。
周りには誰もいませんし、しばらく黒いビニール袋は放置されていたのか、土埃をかぶっています。
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妄想は膨らみますが、いずれにせよ、このお金についてきちんとした手順で処理する必要が生じます。
考える事は、
- 1)黙って持ち帰ったらどうなるか?
- 2)警察に届け出て自分のものになるのはいつ頃か?
- 3)自分のお金になったら税金を支払う必要はあるのか?
という3つです。
軽いノリで遺失物を黙って持ち帰るのはあり?
遺失物を拾得した時は、まず警察に届けなければなりません。期限は1週間以内です。(施設で拾った場合は24時間以内)
そんなの当たり前じゃん!とツッコまれる方もいらっしゃることでしょうが、実はこの警察への届出は法律によって定められた「必ずやらなければならないこと」です。
たとえば見つけた3億円について、「どうせヤバイ金なんだから、持って帰った俺がラッキーということでオッケーでしょ。」と考える人もいるかもしれません。
しかし、遺失物法第四条には、このように定められています。
拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
もし、この手続を踏まないで遺失物を持ち帰ってしまうと、それがたとえ軽い気持ちで行った行動だとしても、刑法254条の「遺失物等横領」に該当するものとして、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料を受けることになってしまいます。
いきなり刑法の処罰がまっているわけなので、黙って持ち帰るのは絶対にNGです。
遺失物は、どんなことがあっても、まずは警察署に届け出る必要があります。
警察に届け出た遺失物が自分のものになるのはいつ頃か?
警察は遺失物について公告を出すことで、遺失物の所有者に対して遺失物を召喚するチャンスを与えます。
参考リンク:警視庁 拾得物公表システム
さて、しばらく時間が経ちましたが、まだ3億円の本来の拾得者は見つからないようです。
この場合、民法240条の規定により、遺失物は公告をした後で3ヶ月以内に所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得することになります。
ちなみに、所有権を取得した日から2箇月以内に引取りをしなかった場合には、この権利は喪失します。
遺失物が自分のモノになったら税金を支払う必要はあるのか
ついに遺失物(3億円)の所有権が移転して、これを引き取った場合、遺失物の新所有権者は税金を支払う必要が生じます。
取得したお金は「一時所得」に分類され、
- 総収入額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
という計算で、所得額が確定します。
更に、この一時所得額に対して、その所得金額の1/2に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して、総所得金額を求めた後、全体で支払う税金の額が決まることになります。
お金を拾うことなど人生でもそんなにあるわけではありませんから、拾ったお金は、たまたまの収入「一時所得」とみなされ、税金も拾得者に有利な計算となるのです。
ちなみに、遺失物の本来の所有者が3ヶ月以内に名乗り出た場合も、拾得者には、落とし物の価格の100分の5以上100分の20以下に相当する額を請求する権利が生じます。
この権利は遺失物が返還された後、1ヶ月で消滅します。
もしも、相手方がお礼として報奨金を支払ってくれた場合、この報奨金も一時所得として税金を納める対象となります。
単純に見つけた遺失物にも、この通り複雑に法律が絡んでいるのです。