会社が納めなければならない税金の種類は多岐に渡りますが、中でも利益に対して課せられる税金の支払は辛く感じるものです。そこで会社にわざと利益を残さないで赤字状態として、代わりに経営者(個人)の所得を増やすケースがみられます。これは本当にオトクなのでしょうか?数字の例をみながら考えてみましょう。
利益にかかる税金をもっていかれるのは辛い…
会社が納めなければならない税金は、それこそ種類をあげれば膨大な数になります。
法人税や事業税、固定資産税や源泉所得税など、本当に多岐にわたる種類の税金を上げることが可能です。
ただし、これらの税金は大きく2つに分類することも出来るんです。
それは、
- 会社の利益(所得)が基準となる税金
- 利益とは関係なくかかる税金
の2つです。
中でも利益に対してかかる税金って、凄く嫌に感じることがありますよね。
だって、せっかく一生懸命働いて手元に残ったお金を持っていかれるような気がするじゃないですか。
じゃあ、わざと赤字にして税金を持っていかれないようにするのは、本当に得策なんでしょうか?
実際の数値例を見ながら、冷静に考えてみましょう。
利益に対してかかる税金はどれくらいの率か?
会社の利益に対してかかる税金の代表例は、何と言っても法人税です。
法人税は会社が出した利益を基準として計算されます。
実務的には会社が出した利益を基準として「課税所得」というものが計算され、その課税所得をベースにして税金の金額を計算します。
利益が増えれば連動して税金の金額も増えていきますので、儲かれば儲かるほど増えていくのが法人税なのです。
利益に連動して増えていく税金は、法人税以外にも、
- 法人地方税
- 法人事業税
- 法人住民税
などという種類の税金があります。
会社の規模や利益の金額によって税率は変わっていきますが、中小企業の場合、その税率は大企業よりもかなり優遇されているんですよ。
利益に連動した税金の負担がどれくらいあるかを正確に示す指標に、「実効税率」というものがあります。
これは、「会社がこれくらい利益(所得)があれば、法人税や法人事業税、法人住民税がこれくらいかかるよ~」という割合を示す指標です。
中小企業の実効税率を計算していくと、
- 課税所得が400万円以下:約21%
- 課税所得が800万円以下:約23%
- 課税所得が800万円超:約34%
という割合になります。
例えば年間の会社の所得が300万円だった場合には、300万円 × 21% = 63万円前後という具合に計算されます。
つまり、会社として支払う必要がある法人税、法人地方税、法人事業税、法人住民税などの合計額は、63万円前後になるわけです。
個人負担の所得税と法人税はどちらがオトク?
ただ、この数値を見ただけでは「法人税とかの負担って重いのかなぁ?」ってよく分からないですよね。
儲かったら30%以上も取られるの?!それならば、個人として所得をもらって、会社にお金が残らない形を取ったほうが良いのでは?
こんなふうに考える方もいることでしょう。
個人事業の場合でも、利益(所得)に対して払う必要がある税金に、所得税や住民税、個人事業税というものがあります。
個人の場合の実効税率(所得税+住民税)は、所得控除などの影響も考えると、
- 課税所得が195万円以下:約15%
- 課税所得が330万円以下:約17%
- 課税所得が695万円以下:約22%
- 課税所得が900万円以下:約26%
所得が増えればもっと負担は増えていく…というカタチになっています。
法人税と所得税は課税の方法が若干異なるので一概には比較できないのですが、先程の例で考えると、個人で400万円の課税所得があった場合には、400万円 × 22% = 88万円という結果になります。
課税所得400万円というとサラリーマンの年収でいうと600万円くらいの人。
もちろん、個人の場合には家族構成や社会保険料の負担額によっても税金の金額が変わってくるので、単純に比較はできません。
ただ、一つだけ言えることは「法人税は所得税と比べて高いわけでは無い」ということです。
しかも、個人の場合には所得が増えれば、年金や健康保険などの社会保険料の負担も増えますし、子ども手当などの支給額も減額されます。
収入が増えていくほど個人の方が負担は大きくなるわけです。
このようにして考えてみると、ある程度のお給料を取れるようになってきたら、会社にもそこそこの利益を残してあげた方が、税金の負担を抑えることが出来るのもご理解いただけるのでは無いでしょうか?
ボーダーラインとしては、月間の給料が40~50万円くらいというところでしょうか。
給料や役員報酬を上げる前に、「どうすれば一番お金を残すことが出来るのか」という視点から考えるのがポイントですよ!