先日のニュースで、新生銀行がAIにより融資可能額を算出し、取引明細などデータ活用をすることが明らかになりました。都市銀行も既にAIとビッグデータの活用を模索しており、融資判断にAIを導入する動きは益々広がっていきますが、実際のところ、これが中小零細企業への融資にどう影響するのか、現時点の予想を解説いたします。
新生銀行がAIで融資可能額を算出すると発表
Google子会社のグーグル・ディープマインド社が開発した囲碁プログラム「AlphaGo」が、韓国の李セドル九段に4勝1敗と圧倒的強さで勝ち越したニュースは記憶に新しいところです。
AlphaGoは、過去の棋譜が膨大にインプットされているだけではなく、AlphaGo同士の対局を何千局と行い、人類未踏の領域に達しようとしています。
さて、AIの進化はこのように目覚しいものがあるわけですが、先日興味深いニュースが飛び込んできました。
新生銀、AIで融資可能額算出 取引明細などデータ活用
– 日経新聞電子版2016年06月05日
AIによって銀行の融資判断を行おうという試みです。
特に都市銀行は既にAIとビッグデータの活用を模索しており、融資判断にAIを導入する動きは益々広がっていくことでしょう。
実際のところ、今後の都市銀行における融資判断は、AIの導入によりどう変化していくのでしょうか?
まずは、現状の都市銀行がどのように融資判断を行っているのか、ご説明します。
都市銀行の融資判断はどこでどう行われてる?
現時点では、都市銀行からお金を融資してもらうのは、多くの中小企業にとって難易度の高い業です。
特に、プロパー融資(担保なしの融資)の決済権は、支店ではなく本部の決済権を持つ部署で、支店や信用調査機関から入る定量的なデータを元に、恣意性を排除して判断されています。
従って、都市銀行からプロパー融資を受けるにはまず、本部に常に良い情報が回るようにしなければなりません。
つまりは、黒字決算であり、少額融資を何度も同じ銀行へ滞りなく返済してきた実績が無ければ、門戸は固く閉ざされたままなのです。
とはいえ、現時点では定量的なデータを人間が分析把握して、融資判断を行うわけですから、当然判断ミスも起こります。
金融機関はAIを利用して、これらのミスを徹底的に排除していこうとしているのです。
中小企業への融資をAIが代替するのは難しい
では結論となりますが、AIの導入は融資先に対する都市銀行の判断に、どのような影響を及ぼすのでしょうか?
まず、個人の場合は、信用情報をうまく蓄積できれば、恣意性を排除した融資判断が可能となるでしょう。
一方で、零細企業の融資は、信用保証協会付き融資の比率が多く、更には社長の人間性や経歴など定性分析の必要性が最初は大きいため、AIが完全にこれを代替するのは難しいのかもしれません。
よってAIが導入されても中小企業に対する融資は、信用保証協会付きの融資がメインとなり、プロパー融資を受ける難易度は高いままだろうと予想できます。