ノーベル賞で経済学賞の受賞者のみが賞金から税金を支払わねばならぬワケ

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 今年も10月2日からノーベル賞の受賞者発表が始まりました。日本国の居住者が賞金を受け取った場合、900万スウェーデンクローナ(約1.25億万円)の賞金には税金が原則としてかかりません。ただし、ノーベル経済学賞のみは現状の法律を踏まえると課税されるルールになっています。その理由は、ノーベル賞の歴史を辿れば理解できます。

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2017年ノーベル賞受賞者の賞金は1.25億円!

 今年も10月2日からノーベル賞の受賞者発表が始まりました。

 10月5日午前時点で日本人の受賞者は残念ながらいませんが※、各分野の発展に貢献した受賞者が次々と発表されています。

 ノーベル賞の受賞者は、昨年から100万スウェーデンクローナ増額された、900万スウェーデンクローナ(約1.25億万円)を受け取ることになります。
 
 受賞者の方々は受賞のお金目当てで活動してきたわけではないのですが、気になるのはこの賞金にどれくらい税金がかけられるかということです。

 今回は、日本国の居住者が賞金を受け取ったと仮定して解説しましょう。

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賞金は原則不課税だが経済学賞の賞金のみ課税

 結論から言うと、日本国の居住者がノーベル賞の賞金を受け取った場合、賞金には原則として税金がかかりません。

 所得税法はこの点について、第9条にこう定めています。

第9条  次に掲げる所得については、所得税を課さない。(中略)

十三  次に掲げる年金又は金品(中略)

ホ ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品

 この措置は、受賞者の長年の活動、関わる業界に対する貢献への特別な恩恵措置と言えるでしょう。

 ただし、この措置は原則論であって例外があるのです。

 ノーベル経済学賞のみ措置の対象外となり、賞金に課税されることとなっているのです。

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ノーベル経済学賞の賞金のみに課税される理由

 ノーベル経済学賞の賞金のみに課税される理由は、その歴史を紐解くと理解することができます。

 ノーベル賞は以下の賞で構成されています。

  • 1)物理学賞
  • 2)科学賞
  • 3)生理学・医学賞
  • 4)文学賞
  • 5)平和賞
  • 6)経済学賞

 この中で、1)〜5)の受賞者は、「ノーベル財団」が拠出するノーベル基金から賞金を授与することになっています。

 もう一度、所得税法を見てみましょう。

 「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」は非課税とありましたよね。

 ところが、6)経済学賞の受賞者のみ、その賞金はスウェーデン国立銀行から拠出されることになっています。

 なぜならノーベル賞は当初、1)〜5)の賞で構成されたものであり、6)経済学賞は1968年に出来た後発組の賞だからなのです。

 周りの声で後から作られた賞ということもあり、ノーベル財団関係者やノーベル御大の親族からは、「俺たちは経済学賞をノーベル賞だなんて認めねぇ!」という声も聞かれる始末…

 従って、ノーベル経済学賞をもし日本国籍を持つ人が受賞した場合、その賞金は「一時所得」とみなされ、所定の率に応じた税額を所得税として収める必要が生じます。

 もっとも、ノーベル経済学賞ではこれまで日本人の受賞者が出ていません。この問題で悩む受賞者が出て来れば、国も何らかの特別措置に踏み切る可能性がありそうです。

※編集追記

10月5日に、長崎県出身の日系イギリス人で作家のカズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞されました!

カズオ・イシグロさんは日本生まれですが英国籍であり、かつ文学賞の受賞者であるため本稿の対象者ではありません。それにしてももうれしいですね!

Photo credit: DonkeyHotey via Visualhunt.com / CC BY

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