「クラウドファンディング」という資金調達手段はご存知でも、自分がクラウドファンディングをやることはないだろう、と考えている人のほうがまだ多いのではないでしょうか?ただ、個の時代において、クラウドファンディングが資金調達の主流となっていくことは間違えありません。そこで本稿は、クラウドファンディングの基本を徹底解説し、その5つの型をご紹介します。
未来の資金調達で主流を担うクラウドファンディング
読者の皆様はクラウドファンディングという言葉をご存知でしょうか?
クラウドファンディングとは、
「こんなモノやサービスを作りたい」
「世の中の問題を、こんなふうに解決したい」
こんなふうにアイデアやプロジェクトを持つ起案者が、専用のインターネットサイトを通じて、世の中に呼びかけ共感した人から広く資金を集める方法です。
クラウドファンディングは、まだ一般的にはあまり馴染みがありません。
ただ、既に訪れている個の時代において、クラウドファンディングが資金調達手段の主流となっていくことは間違えないでしょう。
そこで、この記事ではクラウドファンディングの基礎を説明します。
クラウドファンディングの考え方と仕組みは日本人に馴染み易い
インターネット決済が浸透し、世界では数多くのクラウドファンディングサイトが生まれています。
日本国内では、2011年の東日本大震災をきっかけに、被災地復興事業の資金調達という形で、一気にクラウドファンディングが広まりました。
実は、クラウドファンディングの考え方や仕組みは、日本でも昔から存在していました。
例えば、建物などの改修工事は、原始的なクラウドファンディングの考え方で行われています。
鎌倉幕府ができる直前の1180年、焼き討ちで焼失した東大寺と大仏の修復・再建の為、再興事業を指揮した重源は、全国各地を回り信者や有志から少額の寄付を集め、修復・再建を実現しました。
この頃から、日本では、寺院や仏像などの新造・修復・再建のため庶民から広く寄付を求める「勧進」が広がりました。
修繕が終わると、寄付者の名前が寺に記されることもありました。
今でも神社やお寺に行くと、寄付者の名前が石柱や灯籠に刻まれているのをみかけますが、あれもクラウドファンディングと同じ考え方や仕組みで行われたものです。
そう考えれば、日本人にとってクラウドファンディングはとても馴染み深いものと言えるでしょう。
クラウドファンディングの基本的な仕組み
では、クラウドファンディングの基本的な仕組みを、詳しく見ていきましょう。
クラウドファンディングで資金調達を行える人は非常に多く、幅広い分野で活用することが可能です。
たとえば、新しいテクノロジーを使った商品開発、映画製作や本の出版、ゲームやアプリの開発、アーティストのCD制作やコンサート運営、伝統工芸品の制作、建築物の改修、先進医療の研究、企業の運転資金調達、貧困層への自立支援など。
あらゆる分野で既に資金調達が行われています。
プロジェクトの起案者は「起案者」と呼ばれ、資金提供してプロジェクトを支援する人は「支援者」と呼ばれています。
また、資金援助することで、支援者がもらえる特典は「リターン」と言います。
クラウドファンディングを募ったからといって、必ず資金調達できるわけではなく、受け取れるパターンは、「達成時実行型(All or Nothing型)」と「実行確約型」にわかれます。
つまり、目標金額を達成した場合のみ調達した資金を受け取れる「達成時実行型(All or Nothing型)」と、目標金額に達成しない場合でも調達した資金を受け取ることができる「実行確約型」です。
どちらの形を取るかは、目的に応じて使い分けが可能です。
実行確約型の起案者は、掲載時にプロジェクトの実施を確約する必要があります。
クラウドファンディングの資金調達形式は5つのタイプに分類される
クラウドファンディングは、資金や支援者へのリターン(特典)のあり方によって5つのタイプに分類されます。
1:寄付型
寄付型のクラウドファンディングは、出資金の意味合いに「寄付」の要素が強いものです。
社会的公共的意義の強いプロジェクト、たとえば、「災害にあった子どもたちに勉強道具を買ってあげたい」、「発展途上国に学校を作りたい」といったものに対して、共感した支援者が出資を行います。
金銭的な見返りは殆どありませんが、支援者は社会的承認を得たり、個人ではできない社会福祉を実現できるといった見返りを貰えます。
この分野の代表的なサービス提供者としては、ジャパンギビングがあげられます。
2:購入型
購入型のクラウドファンディングは、支援者が商品・サービスをリリースしたい人のプロジェクトへ出資することで、出資の見返りとして、物品やサービスを受け取ることが可能な形となっています。
新しいテクノロジーを使った商品を購入できたり、居酒屋の造作代に出資することで1年間半額でお店に通える、といった見返りが支援者に帰ることとなります。
ただし、資金を集めるためには、プロジェクトが魅力的でなければなりません。
この型の代表的な運営者は、Makuake(マクアケ)、CAMPFIREなどです。
3:貸付型
貸付型のクラウドファンディングは、国内はもちろん、海外ではメジャーになっている、「マイクロローン(小口貸付)」を組成するファンドなどへ、1口1万円くらいの単位から出資できるものです。
期待利回りは5〜20%と非常に高利回りですが、元本が保証されていません。
そのかわり、1個口の出資金を低くすることにより、出資者のリスクを分散するモデルとなっています。
日本国内の代表的なサービス提供者としては、クラウドクレジットがあげられます。
4:ファンド型
ファンド型クラウドファンディングとは、短期間で召喚されるファンド商品を中心に、1口1万円くらいの単位から出資できるものです。
太陽光ファンド、バイオマスファンド、中小企業支援型ローンファンドなど、様々なファンドが容易されています。
元本保証や担保の有り無しなど、詳細な条件が設定されており、条件により利回りも変わります。
日本国内の代表的なサービス提供者としては、クラウドバンクがあげられます。
5:株式投資型
株式投資型のクラウドファンディングとは、出資を受けたい中小ベンチャー企業が、幅広く大勢の人から小口の出資を直接受けることにより、資金調達を行うものです。
支援者(投資家)は、気に入った会社があった場合に、10万円程度から企業投資を実施することが可能です。
出資した企業から配当を受けることが出資者にとっては見返りとなります。
日本では、まだあまり馴染みがないですが、FUNDINNOというサービスが、株式投資型のクラウドファンディングでは1つ抜けています。
行政もクラウドファンディングへ熱視線を送る
「まさか、自分が応募することなんか無いよな。」とお考えの方のほうがまだ多いですが、クラウドファンディングは、運営者の審査を通れば、個人・団体・企業の大小を問わず、誰でも起案者としてプロジェクトを立ち上げることができます。
また支援者も、プロの投資家のようなプロセスを経ることなく、共感したプロジェクトに、インターネットを通じて誰でも簡単に資金を投じることができます。
また、クラウドファンディングで出資を募り資金調達に成功すると、「こんなに面白いアイデアが登場」「あの企業がクラウドファンディングで資金調達呼びかけ」「目標の何倍もの資金を調達」など、プロジェクト自体がニュースやSNSなどで話題にのぼることも少なくありません。
この側面から見ると、クラウドファンディングは、新たな資金調達や運用手段であることに加え、新たなマーケディング手段としても可能性の拡大が考えられています。
また、購入型への期待は大きく、大阪府などの地方自治体も地元の中小企業に対して、クラウドファンディングを用いた資金調達支援に乗り出していますし、日本政府も注目しています。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
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