従業員から毎月あがってくる移動交通費の精算依頼を見ると、時々、通勤区間内(通勤手当の支給圏内)の交通費が混じっていることはありませんか?社員にはケッチいと思われるかもしれませんが、「これは定期券の区間内だからダメっ!」と言いたくなるはずです。実際に、この意見は正しいでしょうか?税務と労務、2つの観点から考えてみましょう。
通勤区間内で手当を出してるのに交通費を社員が請求してきたら?
従業員から毎月あがってくる移動交通費の精算依頼を見ると、時々、通勤区間内(通勤手当の支給圏内)の交通費が混じっていることはありませんか?
たとえば、小田急線の区間内に住んでいる社員が、
- 通勤区間:新百合ヶ丘⇔新宿
- 交通費請求:下北沢⇔新宿
となっていたとしたら…社員にはケッチいと思われるかもしれませんが、「これは定期券の区間内だからダメっ!」と言いたくなるはずです。
実際のところ、通勤区間内で社員が営業活動で使用する交通費は、二重に精算するべきものなのでしょうか?
通勤手当を出している区間内の交通費請求は経費の二重計上にあたる
結論から言うと、従業員に定期券代金を支払っている場合、同区間内の交通費を提出してきたなら、会社側は支払いを拒否することが可能です。
なぜなら、同区間内で社員が行動するために必要な経費を、会社側は既に支出しているため、これを指摘されれば、経費の二重計上という違反行為とみなされてしまうからです。
この場合、会社側が善意であろうと、経費の二重計上分について重加算税を支払わねばならなくなったり、経理がずさんな要注意企業としてマークされるリスクが生じます。
なお、これに対して従業員が、「交通費はもらっているけれど、定期券は買っておらず、別ルートや手段で通勤しているから、その分ももらえるはずだ。」と言ってきたらどうでしょうか?
「労働の対価、給料としてもらってるんだから、どう使おうが自分の勝手だ。」というのが本音です。
通勤手当は従業員の給与ではなく非課税の費用
実は、もし従業員が「交通費を指定根拠に基づかない形で使用している」と言ってきたら、会社は従業員に対して、交通費の「不正受給」による返還請求さえ起こすことが可能です。
通勤手当は、あくまでも給与ではなく、会社が社員のために任意で設定し支出する非課税の費用だからです。
現実にこの点をあまり理解していない従業員もいます。
でも、「のび太のものはジャイアンのもの。ジャイアンのものはジャイアンのもの。」は、基本的に通じませんよね。
通勤手当が「給与」ではなく、「費用」であることを周知するために、定期券の購入証明書や定期券のコピーを取るというのも1つの手でしょう。