映画「ショーシャンクの空に」が描くような、原始的な作業だけが刑務作業ではない。今や刑務作業として、一般企業がプログラミングさえ発注できるほど刑務作業の幅は高度多岐に及ぶ。刑務作業を利用するメリットは非常に大きく、場合によってはコスト削減を図る有用なツールとも成り得る。具体的なメリットと発注方法を本稿では提示する。
ショーシャンクの空にで描かれる刑務作業
「ショーシャンクの空に」という映画をご存知だろうか。
1994年に公開された古い映画だが、今なお名作として語り継がれ、Yahoo!映画でもユーザーレビュー1,300件超え、満足度も5点満点中4.6点と高評価を得ている。
ストーリーは、無実の罪で投獄された主人公が、悪環境の中でも希望を捨てず長い年数を刑務所で過ごした後、ついには歓喜のラストへ至る感動的なものだ。
この映画は希望を捨てないことの素晴らしさを観る人へ伝えると共に、1940年台から1960年代にアメリカの刑務所内で、受刑者がどんな刑務作業に服していたか、詳細を描く作品として歴史資料の価値も持っている。
日本でも刑務作業は昔から行われているが、現在の刑務作業は映画で描かれている原始的な作業に留まらず、多岐に及んでおり、プログラミングさえ発注できる。
それは日本政府が、受刑者へ刑務作業を行わせることに2つの目的を設定しているからだ。
1)受刑者の更生のために勤労精神を養成すること、2)職業的知識及び技能を付与すること、という2つの目的である。
私達が刑務作業を利用するメリットは非常に大きくなっており、場合によってはコスト削減を図る有用なツールとも成り得る。
本稿では、一般企業が刑務作業を発注するメリットや、具体的な発注方法を以下提示する。
刑務作業へ業務委託した場合のメリットは?
まず刑務作業へ業務委託するメリットを整理してみよう。
1)一定の労働力が確保できる
刑務所は国の管轄で、受刑者の数も急激に減ることはなく、自主退職もできないため労働力の計算や確保が容易である。
2)初期投資が大幅に削減できる
刑務所には専門的な機械などが完備されているので、初期投資にお金がかからない。敷地の購入費、工場の賃貸料などももちろん不要。
3)労務管理、厚生関係経費が不要
自社の従業員で賄った場合は労務管理、保険料、福利厚生費などが必須だがアウトソーシングのため不要
では企業が刑務作業を委託する手順も一度整理してみよう。
1. 発注
法務省管轄の「刑務作業ご案内」サイトでは、刑務作業へどんな仕事を発注できるのか検索可能だ。地域別でも検索でき、導入されている機械数や人数なども情報開示されている。中には官民協働の「美祢社会復帰促進センター」のように、プログラミングまで刑務作業として発注できるほど、刑務作業の幅は高度多岐に渡っている。
2. 契約
発注内容について合意が得られれば契約となり、以下の書類が必要となる。
- ・会社の登記簿謄本又は抄本
- ・事業経歴書(会社案内等)
- ・納税証明書(法人税・地方税)
- ・代表者及び連帯保証人の印鑑証明書
3. 担保
契約金額の2か月分に相当する価値を有する担保を準備しよう。例えば、定期預金証書、現金又は刑務作業履行保証保険の締結等である。要は、”うちの会社には少なくとも2か月分の支払いのできるお金があります”と証明するということが必要になる。お金がない場合は「刑務作業履行保証保険」を締結することで発注が可能な場合もある。
4. 成立、作業開始
少しでも費用を安く抑えたい場合は、契約期間毎でビジネスとして、単価の調整や継続と撤退の判断が可能だ。
「特定の企業しか業務を委託できないのでは?」と思っている人も多いかもしれないが、現在全国で約2,300の一般企業が作業を依頼していることにも留意したい。
品質確かめたくば刑務所作業製品をチェック
刑務作業と聞くと、一般企業や一般人には縁が遠いものと思いがちだが、コスト削減やアウトソーシングの1つの手段としてぜひ覚えておきたい。
例として、全く違う業態の商品販売へ進出を図る時に、刑務作業へアウトソーシングして最小ロットで見極めを行いたい時などがあげられる。
もし”刑務作業があまり身近に感じられない”場合は、一度「刑務所作業製品」に触れてみるのも良いだろう。常設展示場が全国にあり、かつネットショップも開設されている。
例えば千葉刑務所は比較的長期受刑者が多く、技能が高度なことで有名だ。「桐タンス」は40万円近くするが、品質が同等でも価格は市価の半分程度であり、小売りでも飛ぶように売れているという。
費用を抑えて継続的に業務をアウトソースするのは、ビジネスの基本である。
「刑務所」や「刑務作業」という言葉が持つ、とっつきにくい固定概念に囚われず、ぜひ利用を検討してみてはいかがだろうか?