起業時に行う作業の一つに、事業計画の作成があります。しっかりした事業計画の作成は、起業の成功確率を高める重要な要素となります。しかし、多くの事業計画が非現実的で、甘さがあるゆえに、融資審査を通らないものとなっています。どうすれば融資審査において説得力のある事業計画を作成できるのでしょうか?
創業時に作られる事業計画は甘いものが多い
これまで仕事柄、多くの起業相談を行い、その中で数多くの事業計画を拝見し、起業の過程を見せていただきました。
起業時の事業計画について、確信を持って言えることが一つあります。
「しっかりした事業計画を作成すると、起業の成功確率は高くなる」ということです。
しかし、殆どの事業計画が、実現可能性が低く、甘いものであることが現実です。
アベノミクスの影響もあり、日本政策金融公庫をはじめとした金融機関は、起業融資に積極的な方針を示していますが、事業計画が甘ければ彼らの融資は実行されません。
起業時の融資は、事業のスタートダッシュを図る上で、非常に重要な鍵を握ります。
そこで本日は、しっかりした事業計画を作成するため、どのような部分で事業計画の甘さが出やすいのか、経験を踏まえてご紹介します。
事業計画作成時に甘さが出る3つのポイント
1)なぜその事業をやるのか?動機が不十分
私のところに相談に来られる方の大半が、「今までパン屋に勤めていたからパン屋を起業する」というような、今まで自分がやっていた仕事の延長線上で起業する方です。
それも一つの立派な動機ですが、なぜ、独立起業するのかという動機を、もっと明確にする必要があります。
- 健康志向のパンを提供したい
- 天然酵母のパンを作りたい
- 地域の産品を使った惣菜パンで地域活性化に寄与したい
などのように、起業することによって、どのような価値を顧客へ提供していくのか?社会にどう貢献していくのか?が明確でない場合が多いのです。
事業計画には、あなたが事業を行っていく上での、明確なミッションが反映されねばなりません。
2)顧客のニーズやウォンツの把握ができていない
こんな物を開発したけど、どのように売っていけばいいですかね?
こんな相談も私のところには、よくやって来ます。
本人は、知ってもらえば絶対自分の商品は売れると自信満々ですが、私から見ると「誰が買うのかな」と首をかしげてしまうものが殆どです。
お客様は、自分にとっての価値を認めなければ、商品を買いません。お客様は商品を買うのではなく、商品によって得られる未来を買っているからです。
そのためには、お客様が求める“ニーズ”や“ウォンツ”を、しっかり把握することが不可欠です。
最初に“商品ありき”ではなく、“お客様のニーズやウォンツありき”で考えなければ、商売は失敗します。
これを防ぐためには、自分が売ろうという商品を何人かに見てもらって、忌憚なく率直な意見を聞いたうえで、事業計画に落とし込む必要があります。
3)事業の独自性が明確でない
どこよりも低価格で、自社の商品を提供すれば、確かにその商品は売れるかも知れません。
しかし、価格競争の波に巻き込まれてしまうと、事業を継続させていくこと自体が困難になります。
貴方の事業には、価格以外の独自性、つまり、あなたの事業のセールスポイントが存在していますか?
これを事業計画へあぶり出すためには、使う素材、製法の独自性、商品の提供方法やサービスの独自性から、オリジナルなセールスポイントを徹底的に考え抜き、アウトプットする必要があります。
例えば、同業他社とぶつからない顧客層、異なる営業時間配置・立地場所の活用は、独自性につながる場合があります。
同じ焼き鳥屋でも、女性専用の焼き鳥屋の運営、朝の時間をコアタイムとする都市部での焼き鳥屋運営は、立派な独自性になりますよね。
ビジネスモデルが具体的に落とし込めていない
あなたの事業計画において、展開する商品やサービスは、
- 誰に
- どんな価格で
- どんな方法で提供し
- どのような価値を得てもらうのか
ということについて、具体的な落とし込みが行われていますか?
さらに、事業を進めていく上での協力者や、ビジネスパートナーが誰か、明確になっているでしょうか?
自分のビジネスについて熱意を持って伝えよ!
事業計画書を作成する目的は大きく2つあります。
一つ目は、自分のために事業を見える化することです。
頭の中にある事業計画を紙に表現して見える化すると、漠然としている点や不十分な点が良く分かります。
また、自らが考えたビジネスモデルを客観視することも可能になります。
起業に当たって融資を受けないから、事業計画書を作成する必要はないという方もいらっしゃいますが、事業計画書は自分のために作成するものです。
二つ目の目的は、本稿の主題にもあげたように、ビジネスパートナーや融資を受ける金融機関の人に、自分のビジネスを理解してもらうためです。
この際に重要なのがメッセージ性です。あなたの事業にかける熱意が相手の心を動かします。
実際に、日本政策金融公庫の創業融資を受けるという相談者には、相手の目を見て熱意を持って話すようアドバイスしています。
しかし、熱意を持ってメッセージ性を打ち出していくには、先述の通り、
- 起業の動機(ミッション)
- 顧客のニーズやウォンツと市場性
- 商品・サービスや提供方法の独自性
- 売上げ・利益確保の可能性
以上の4点について、数字やリソースの裏付けを持ち、明確に熱意を伝えられなければ、彼らを納得させられません。
起業を検討されているならば、自分の作った事業計画が、これら4点を満たしているか否かを、再度チェックされることをお勧めします。