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鈴木 一彦 (すずき かずひこ)
鈴木 一彦 (すずき かずひこ)走る税理士・すずき会計代表

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個人事業主の身だしなみ「スーツ」は経費で購入しても大丈夫?

個人事業主の身だしなみ「スーツ」は経費で購入しても大丈夫?
 個人事業主の方であれば、ビジネスマンとしてはもちろん、屋号の持ち主として、普段の身だしなみを綺麗にしておこうと意識されることでしょう。身だしなみの一つとしてスーツを着用されることもあるかと思いますが、スーツ代の支出は事業経費に算入させることは可能なのでしょうか?否認派の意見、肯定派の意見から客観的な答えを税務のプロが解説してくださいます。

よくある質問「スーツは経費で購入できる?」

 個人事業主の方の確定申告のお手伝いをしているとき、よく聞かれることがあります。

 それは「スーツって事業の経費でおちないの?」というお話。

 私共が働いている税理士業界においては、定番中の定番といえる質問かもしれません。

 それくらい聞かれることが多い質問の一つです。

 さて、個人事業主が使った「スーツ代」という支出。これは事業の経費にできるのでしょうか?

税理士は基本的にスーツの経費購入を否定する

 営業系のお仕事などの方にとっては、お客様のところに行くにはスーツ着用が当たり前でしょう。

 普段の身だしなみをきれいにしておくことは、ビジネスマナーとして仕事をとるため一つの要素ですもんね。

 しかも、そのための費用はバカになりませんよね。

 特に女性にとっては、洋服代以外にも化粧品や装飾品にかかるお金は少なくありません。

 これらのスーツなど衣服にかかるお金。

 基本的に多くの税理士は「・・・ちょっと経費にするのは難しいね。」とお答えすると思います。

 たぶん税務署へ行って相談したら、「ダメ!」と即答されるかもしれません。

 なぜ、彼らがスーツの経費購入にNG回答を出すかというと、過去に裁判で出された判決が原因になっていると言われています。

 該当するのは、昭和49年の京都地裁での判例で、個人事業の被服費について争われた事例です。

 この判決では、被服について、
  • ①誰もが必要であること
  • ②個人の趣味嗜好が入ること
  • ③耐用年数にかなりの個人差があること
 という理由から、被服に係る費用は「家事費(個人的な支出」と考えることが一般的であると述べています。

 ただし、警察職員のように職務命令で着用し、職務以外では着用できないものもあります。

 そのような特殊な職業ではなくとも、
  • ①職務で専ら着用している
  • ②地位・職種に応じ勤務上、一定の種類・品質・数量以上の被服を必要とする
 などのケースにおいては、「家事費」ではなく、「家事関連費」とするのが相当である、という判断を示しています。

 ※家事関連費とは、個人的な部分と事業経費の部分の両方の性質をもつ費用のことを言います。

 実際のこの裁判では、納税者サイドが「業務上必要な部分」を自ら明らかにすることができなかったので、必要経費とはされませんでした。

 それ以後、このような被服に関する支出においては、この判例が基本となって判断されることが多いようです。

経費としてキチンと区分できていればOK!

 上記は裁判上のお話ですが、実際の法律的にはどうなっているのでしょう。

 所得税法第45条には、(家事関連費等の必要経費不算入等)という規定があります。

 ここでは、「こういうものは必要経費に算入しないで下さい」と書かれていますが、その一番最初の項に「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」と書いてあります。

 「家事上の経費」とは生活費などの個人的な費用のコト、「これに関連する経費(家事関連費)」とは、先ほど書いたように、個人的費用と業務費用の両方の性格が混在するものです。

 「スーツなんて仕事でしか着ないよ」と言うかもしれませんが、お役所的には「葬式や結婚式とかでもスーツ着ていくことあるでしょ?」という見方をするので、スーツなどの被服費は家事関連費に該当すると指摘しています。

 ただ、業務上の性格が混在していると言うのなら、「全部ダメってことは無いでしょう」と思いませんか?

 実は、所得税法施行令第96条、所得税法基本通達45において、家事関連費については「仕事をしていく上で絶対に必要で、必要である部分を明らかに区分することができれば、その部分は経費にしてよい」と補足しています。

 つまり、個人的な部分と仕事の部分が混在している費用は、「ちゃんと区分が出来れば経費でも良いよ」というのが法律の立場なのです。

特定支出控除の見直しで流れが変わったか?

 平成26年から、会社員に適用される所得控除のうち「特定支出控除」というものが、大きく見直されることになりました。

 特定支出控除とは「会社員が自費で購入したスーツや書籍が職務の遂行に必要なものであれば必要経費として認められ、ある計算方法によって控除できる」という制度です。

 従来は、
  • 1)通勤費
  • 2)転勤費用
  • 3)仕事に必要な研修費用
  • 4)仕事に必要な資格取得費用
  • 5)単身赴任で勤務地から自宅へ帰るための交通費
 の5項目だけしか認められていませんでした。

 しかし、平成26年からはこれらに加え、
  • 6)仕事に必要な書籍や新聞など図書の購入費用(図書費)
  • 7)仕事で必要な衣服の購入費用(衣服費)
  • 8)得意先などを接待するための費用(交際費)
 の3項目が新たに認められるようになったのです。

 サラリーマンにはスーツなどの衣服費を認めておいて、個人事業主には認めないっていうのはおかしな話でしょ?

 もちろん、特定支出控除を適用するには、事業主や会社などに「業務上必要な経費」として証明してもらわないとダメなのですが、それでも法律で明文化されたことは非常に大きな影響です。

 特定支出控除は、個人事業主がスーツを経費参入するには、追い風となる制度と言えます。

プライベートで利用するなら按分して経費算入

 社会通念的に考えても、スーツを着る場面なんてほとんど仕事上の場面だと思います。

 よほど高額であったり嗜好的なモノであったりするのでなければ、個人事業の経費として問題ないと個人的には考えます。

 もちろん、プライベートでも着るという方は、支出のうち一部を経費にしない(家事費として否認する)ようにしておくのはお忘れなく。(*´з`)

2016年3月22日

家事費 家事関連費 所得税法 特定支出控除 経費 スーツ 個人事業主

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