出光興産が公募による新株発行を決定し、資金調達(公募増資)をするようです。これは、現経営陣が推し進める昭和シェルとの合併に反対する創業家持分を下げることが狙いと思われます。ところが、そうは行かせぬと創業家も対抗します。そこで本稿は、現経営陣が行った、公募増資にはどのようなメリットとデメリットが存在するのか考えてみます。
出光興産が公募増資による新株発行を決定!
出光興産が公募による新株発行を決定し、4,800万株の発行、約1,385億円を上限に資金調達するようです。
合併に反対している創業家持分を下げることが狙いと思われますが、そう言ってしまっては発行差止を食らう恐れがあります。
そこで会社の経営陣は表面上、海外事業の運転資金や成長投資に充てるという説明をしています。
創業家側は早速、「持ち分比率を希薄化する目的は明らか」として裁判所に新株発行差止の仮処分を申し立てる方針とのことです。
そこで本稿は、経営陣が今回行う公募増資による資金調達のメリットとデメリットについて考えてみます。
出光に見る公募増資のメリット・デメリット
公募増資とは、現在の株主や特定の第三者に限らず、広く一般を対象に募集して行う増資のことを指します。
授権資本の枠内(あらかじめ決められた発行株数の上限内)であれば、基本的に取締役会の決議だけで決めることができます。
ちなみに、授権資本を増やす場合には株主総会の決議が必要となります。
株主総会を開く必要がないため、時間をかけずに機動的な資金調達が可能となるのが公募増資のメリットです。
一方で、実際に必要な資金が集められるかは募集してみないとわかりません。そのためより応募しやすくするよう発行価額は、時価よりも少し低い価額となるのが一般的です。
また、広く一般に募集をかけるため、どのような人が応募してくるかはわかりません。
もし今回のように、会社側の裏の目的が特定株主の持ち株比率を下げることにある場合、その株主に十分な資金があれば、持ち株比率を維持あるいはさらに比率を上げるということも可能になってきます。
株主の利益を犠牲にするなら裁判所は厳しく見る傾向あり
昨今は、会社経営陣が自己の利益を守るため、株主の利益を犠牲にするという面があると、裁判所も厳しく見てくる傾向にあります。
もし裁判になった場合、会社側が増資の正当性をどう主張するのか、それを裁判所がどう判断するのか、非常に注目です。
翻って、会社の経営者であれば、今回の趨勢(すうせい)から株主とはなんぞや?と考える良いケーススタディと言えるでしょう。