ベイカーズダズンの甘い罠に断固として立ち向かえ!

企業分析

 巨大企業の不正問題が、年の後半に入り次々と噴出しています。不正行為を組織ぐるみで行ってしまう企業に共通する1つの傾向、それは「お金儲けとは別に、倫理的にやっていいことの下限基準(限界)をルール化していない」ことです。ベイカーズダズンを巡る訓話の結末は、企業が理念はもちろんのこと、やっていいことの下限基準を共有することの重要性を私達に教えてくれます。

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2015年後半は巨大企業の不正行為が噴出した

 巨大企業の不正問題が、年の後半に入り次々と噴出しています。

 日本では東芝がインフラ工事の会計処理に不適切な点があったとして、前期(2015年3月期)の業績予想を取り消し、期末配当についても無配となることを発表しました。

 日本を代表する企業内で起きた7年間に及ぶ組織ぐるみの粉飾決算は、日本企業の倫理観を根幹から問う事件となりました。

 更には9月に入り、今年上半期で世界・自動車販売台数1位に踊り出た独・フォルクスワーゲン社(以下:VW)が、アメリカ・EU諸国で販売するディーゼル自動車について、自動車排出ガス規制をクリアするため、不正なソフトウェアを搭載していたことが発覚しました。

 VWに至っては、10年間に及ぶ不正行為がエンジン開発部門全体で認識されていたといいます。

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不正は倫理的な下限のルールがない時に起こる

 私達は過去にも数多くの組織ぐるみの粉飾決算や不正行為を目の当たりにしてきました。

 エンロン・ワールドコム・オリンパスなどの事例をマスコミが大々的に取り上げ、企業が崩壊したり信用失墜する姿は、上記2社の経営者や従業員たちも目の当たりにしていたはずです。

 にも関わらず、企業による不正行為が決してなくならないのは何故でしょうか?

 確かに、企業は営利目的で運営されるものであり、利益を出さなければなりません。更に従業員が増えるほどに、自分の家族だけでなく、彼らの背後にいる家族を守る必要が生じます。

 しかしこれは企業規模の大小を問わず、どの企業にも同じく求められる条件であり、不正行為を行う言い訳にはなりません。

 不正行為を組織ぐるみで行ってしまう企業には1つの共通する傾向があります。それは「お金儲けとは別に、倫理的にやっていいことの下限基準(限界)をルール化していない」ことです。

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ベイカーズダズンが教える企業モラルの重要性

 この問題を表す例えとして「パン屋の1ダース(英:“ Baker’s dozen”ベイカーズダズン)」という訓話があります。

 私達が使う「ダース」という単位は一般的に12個単位を意味します。しかし現在の英語でベイカーズダズンという言葉は13個単位を意味する言葉として利用されています。

 その語源由来は、中世イギリスのヘンリー3世が統治した時代に、パン屋が水分の蒸発などで斤量の不足が起こった時に、不足分を賄うために実際はダース(12個)で届けるところを、不足分を補うために13個のパンを焼いて商人に卸したことからはじまりました。

 商人はダースで納品された分で斤量が足りれば、あと1個分はまるまる儲けとなるため、実直に13個のパンを納品するパン屋には注文が集まるようになり、パン屋・商人の両者が利益を出せるようになります。

 しかしこれを見て悪巧みを考えた他のパン屋は、12個分の材料で13個のパンを作り、説明もなく商人へ納品し、パン屋業界全体が悪評で満ちる結果となりました。事態を重く見たヘンリー3世は『パンとビールの基準法』を施行し、パン屋が販売するパンの重さを誤魔化していた場合は重い罰則が与えられるようになりました。

 不正行為で利益を出していたパン屋は潰れるか信頼を失墜し、結局は実直に斤量を遵守していたパン屋に更なる注文が集まるよう世の中が動いたのです。

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モラルの下限がない場合は仕組みに問題がある

 この訓話は、品質を落として粗悪品を販売したり不正な会計操作を行い、一時的に売上を伸ばしたとしても、企業モラルの下限を設定していない企業は、いつの日か痛い目に合うことを教えてくれます。

 訓話に自社を当てはめた際に「現実に下限を定めてうちの会社で共有するなんて難しい」「綺麗ごとで世の中は回っていない。」という意見が従業員から出てくる場合は、その会社に「商品に付加価値を持たせて利益を出す仕組みができていない」「経営者自身のモラルが低いと社員が考えている」可能性があります。

 今年起きた大企業の不正事件を良い教訓として、改めて「お金儲けとは別に、倫理的にやっていいことの下限基準(限界)を社内でルール化すること」を、コンプライアンスのチェックに含めて検討してみてはいかがでしょうか?

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