バナナが食卓から消える!?産地フィリピンで起きる4つの異変

経済

 物価が上昇し続ける時代にあっても、価格が安定して食べやすいバナナは、2004年からミカンを抜いて国内消費量ナンバーワンのフルーツとなった。日本人にとってバナナは、まさに国民的フルーツと言える。しかし近年バナナ価格の高騰が止まらず、卸価格は5年で7割近くの上昇を見せている。背景に国内流通量シェア70%強を支える産地、フィリピンで起きている4つの異変があった。

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バナナは日本国内消費量NO1フルーツに君臨

 いよいよ季節は食欲の秋。

 あまり知られていないが、毎年秋になると日本国内の消費量がグンと一段上がるフルーツがある。

 それは「バナナ」だ。

 戦後間もない頃に高級食材であったバナナは、輸入商社が1960年代から精力的に産地開拓してきたことや、物流コストの大幅削減を実現したこともあり、価格が50年間ほとんど変らず、日本人にとって買いやすいものとなった。

 物価が上昇し続ける時代にあっても、価格が安定して食べやすいバナナは、2004年からはミカンを抜いて国内消費量ナンバーワンのフルーツである。日本人にとってバナナは、まさに国民的フルーツと言えよう。

 今や日本へ輸入される海外農作物の約60%をバナナが占めており、小売店の青果売り場でバナナのない店はほぼ存在しない。

 しかし2010年頃にkgあたり71円ほどであったバナナの卸売価格は、2015年にはkgあたり約118円と5年間で7割近く上昇しており、小売価格も連動して上昇し続けている。

 なぜか?

 その背景には、日本国内で流通するバナナにおいて70%強のシェアを持つ、フィリピンで起きている4つの異変が大きく影響していた。

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フィリピンのバナナ激減につながる4つの異変

1)エルニーニョ現象と凶作

 フィリピンでは近年エルニーニョ現象の影響により、これまでフィリピン諸島を滅多に通ることのなかった台風が毎年通過するようになった。例えば2012年の台風では、生産量の25%に相当するバナナの損害が出た。これ以降、毎年のように台風がフィリピンを襲っており、特に生産の中心地となるミンダナオ島の被害は深刻なものとなっている。

2)土壌汚染に伴う伝染病が広がる

 台風の風に乗って様々な汚染物質がミンダナオ島の畑に降り注いだことや、曇天続きの天候不良により、バナナにとって致命的な病気であるパナマ病がフィリピンで流行している。パナマ病とはカビを病原体とするバナナ特有の病気であり、樹木が枯れたり実が黒ずむ症状が現れる。一度パナマ病にかかると樹木の完治は難しく、木を伐採するしか対処方法はない。特に台風の被害にあったローランド(標高が低く割安なバナナの生産しやすい標高400m以下の地域)では、これらの状態を未だ解決できていない。

3)高地栽培を行うための過大なインフラ整備コスト

 ローランドでバナナが生産できなくなったことにより、輸入商社はより標高の高い場所、ハイランド(400m以上800mくらいまで)でバナナを作らざるを得ない状況となった。しかしハイランドと呼ばれる場所では、道路や水道などインフラが未整備かつ、輸送コストが以前より大幅に高くなる。そのため大手の輸入商社はインフラを整備するべく、ハイランドのバナナ栽培に着手し大規模の投資を行っている。当然ながらコストを吸収しなければならないため、日本のバナナ輸入価格は高くなる。

4)アジア諸国に対する買い負け

 苦しい状況に追い込まれる中、経済成長を基盤に消費力が高まっている中国を始めとしたアジア諸国が、日本やアメリカがプランテーション(自社の大規模栽培地)としていた園地を、奪い取り始めている。その方法は非常に簡単で、他国の商社よりも高い価格しかも現金で生産者から買い取るというものだ。フィリピン自体も2014年には人口1億人を突破し、国内総生産(GDP)も7%前後と高い成長率を維持していることから、国内需要の高まりによって、対フィリピン相手にも日本に有利な交渉がしにくい状態が続いている。

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バナナ一房500円では手が出ないのが現実

 バナナ不足を解決しようと、今年の9月には某・大手輸入商社が南米から大量のバナナを日本へタンカーで持込んだが、長期輸送による品質劣化によりあえなく乱売せざるを得なくなったようだ。

 大損をするハメになった同社が同じ轍を踏むことはまずあり得ないため、革新的な貯蔵技術が開発されるか、新しい産地が開拓されない限り、日本国内へ入るバナナの輸入価格に下落する兆候は全く見えない。

 更にバナナ流通関係者の間では、大手の小売店と締結した契約数量を完納するために「ハイランドバナナ」と表記しながら、実際にはそれより品質の劣る「ローランドバナナ」を混ぜて納品している業者の噂も聞こえてくる。

 大手小売各社の販売するバナナの品質が落ちることにより、顧客のバナナ離れが進めば、日本のバナナ業界がハマっている負のスパイラルは、ますます抜け出せないものとなるだろう。

 それではバナナ一房の小売価格が500円、600円となった時に果たして一般家庭が、バナナを今までのように頻繁に購入するかといえば、答えはおそらく「NO」である。

 「日本の食卓からバナナが消える日」が訪れることを想定するのは、極めて現実的かもしれない。

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