吉野家はなぜ牛すき鍋戦争に勝利したのか?

企業分析

 昨年の冬、大きな話題を提供したのが、吉野家とすき家がメニュー化した「牛すき鍋定食」である。同じ定食を出した吉野家は直近四半期業績前年比4倍増、一方のすき家は上場来初の営業赤字となった。吉野家にあって、すき家になかったものは「よい仕組み作り・効率化」に対するノウハウの積み重ねだ。質の高い仕事を維持するために牛鍋戦争から学べる教訓は多い。

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吉野家好調・すき家不調 鍋戦争ゴング鳴る

 めっきり寒くなり、鍋が美味しい季節である。
 
 鍋といえば、昨年の冬「牛すき鍋定食」(以下牛すき鍋)で火花を散らしたのが、牛丼チェーンの吉野家とすき家だ。いわゆる「牛すき鍋戦争」は世間を賑わした。 この冬も吉野家は既に牛すき鍋定食を販売しており、すき家も27日(木)から販売開始となる。
 
 昨年の牛すき鍋戦争で圧勝したのは吉野家だ。吉野家は直近10月に発表した四半期成績で四半期純利益4倍増を叩き出し、すき家は11月に発表した四半期業績が上場来初めての営業赤字となった。
 
 すき家に至っては牛すき鍋をメニューに入れることで、現場のオペレーションに過度な負担を与え「鍋の乱」と言われた従業員の大量ボイコットと離職により、わずか一ヶ月で牛すき鍋から撤退した。更にその際発覚した「深夜の1人オペレーション」という過酷な勤務環境が世の中で明るみに出てしまい、もはやブラック企業の代名詞となってしまった。
 
 なぜ同じ商品を取り扱っていながら吉野家は恩恵を得て、すき家は自社を苦しめることになったのか?
 
 すき家の敗因は多く記事になっているが、吉野家の勝因はあまり取り上げられることがない。
 
 以下紐解いてみよう。

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吉野家の鍋ノウハウ 一朝一夕で真似不可能

 吉野家にはすき家と違い「鍋」というメニューに、10年前から挑み続け、試行錯誤してきた歴史がある。
 
 発端は2004年にアメリカで起きたBSE騒動によるアメリカ産牛肉輸入禁止問題だった。吉野家はアメリカ産牛肉でなければ自分たちの牛丼は作れないということで、牛丼の販売を停止した。それに対してすき家をはじめとした他の牛丼チェーン店はアメリカから他の国へ肉の輸入先を変えて、牛丼を販売し続けた。
  
 牛丼を販売する道を自ら閉ざした吉野家が、苦肉の策として「牛鉄鍋膳」というメニューを出したことを覚えていらっしゃるだろうか?その後「牛すき鍋」、「牛とじ鍋」、「牛鍋定食」とこの10年で吉野家は何回か鍋へチャレンジしては失敗し、独自のオペレーションを手に入れているのだ。
 
 昨年の牛すき鍋開発時に吉野家は、過去の現場経験から効率的に取り扱い可能な専用什器に先んじた投資を行ったり、セントラルキッチン側に作業を集約する仕組み作りなど、予め現場の混乱を最小限に抑え、オペレーションの効率化を測ってからメニューを投入しはじめた。結果、現場で大きな混乱は起きることなく、実に1400万食もの牛すき鍋を世の中に投じることができた。
 
 吉野家は「仕組み作り・効率化」ですき家に勝利したと言えよう。

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気合・人だけでビジネスは続かぬ

 ビジネスで一番大事なのは「人・人間力」である。
 
 しかしすき家は、現場の人間を考えたオペレーションを想定しきれず、現場の人間力や気合に頼った結果、先述の散々な結果となった。
 
 質の高い仕事を継続するために「仕組み作り・効率化」が如何に大事か、牛すき鍋戦争における吉野家の勝利から学べることは多い。

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