過去に戻れるならマクドナルドはいつ方針を変えるべき?

企業分析

 日本マクドナルドホールディングスの業績悪化が止まらない。全盛期の半分程度に業績が落ちた後、ようやくマクドナルドは顧客目線重視の、現在の日本にフィットしたリカバリープランを打ちはじめた。もし戻れるならマクドナルドの分岐点はいつだったか、マクドナルドの凋落に結びついた要因は何かを本稿では提示する。

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最終赤字380億円 巨額損失がマックを襲う

 日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルド)は4月16日(木)、2015年12月期の経営報告において、最終損益が380億円の赤字になる見通しであることを発表した。これで2年連続の赤字だ。

 経営報告では、リストラ対応策として年内に約100名の早期退職募集、131店舗の閉鎖予定も発表された。

 最新の月次売上レポートも、3月時点の売上は昨年比マイナス29.5%と、「賞味期限切れチキンナゲット」「不衛生な製造ライン」が発覚した2014年の夏より売上減少率がさらに悪化している。

 業績悪化の止まる兆しは一向に見えず、暗中模索というのが日本マクドナルドの現状だ。

 同社は直近の業績発表時に「お客様とこころでつながる、モダンバーガーレストラン」と銘打ったリカバリープランを株主に提示した。顧客重視、地域に特化したビジネスモデルを打ち出そうとしているが、全体に施策が浸透するには「3年必要」としている。

 贔屓目に見ても、政策自体は現在の顧客ニーズにフィットしており、もっと早く上記施策を打ち出していれば、現状のような悲惨な事態に陥っていなかっただろうと思わせるものだ。

 マクドナルドはいつリカバリープランを打ち出せばよかったのだろうか?

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マクドナルドに三度訪れた業績上の分岐点

 近年の日本マクドナルドにおける業績のターニングポイントは、3回ある。

1)原田泳幸氏がCEOになってからの4年間

 マクドナルドの売上高は2004年に原田泳幸氏がCEOに就任してから一貫して上昇し続け、2008年にはついに4,000億円の壁を突破した。この時は資本のあるFC加盟店の優遇策や、24時間営業店の拡大など原田氏の打ち出す策がほぼ全て的中した。この時点で今回のリカバリープランは必要ない。 

2)売上高が減少しても営業利益が伸びた時期

 2009年以降、日本マクドナルドは売上高減少期に突入したが、営業利益は成長し続けた。2011年には過去最高益を計上したが、これは2008年までに築きあげた規模のインフラという資産を食いつぶしたからこその展開だ。この時点でリカバリープランに気づかなくてもまだなんとかなっただろう。

3)営業利益が減少し店舗目線の効率化を計った時期

 決定的なミスは2012年から始まった本格的な利益減少時に、過去の効率化成功体験から導き出された、「レジカウンターからメニュー表を撤廃」「バーガーを60秒で提供する」といった顧客ニーズ不在かつ店舗目線の施策を、社の方針として原田氏が打ち出したことだ。アベノミクスによるインフレーションがはじまり、サービスを重視した顧客単価の上昇をライバル企業が模索し始めた時期に、原田氏の政策は真逆を行った。結果として消費者の大きな反感を買い、2013年から業績は一気に転落した。

 過去に戻ることはできないが、2012年に当時の方針とは逆のリカバリープランを打ち出せれば、マクドナルドの結果はもう少し良かったかもしれない。

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過去の成功体験が問題の本質を隠してしまう

 ジョエル・パーカー著「パラダイムの魔力」の中に興味深い例えがある。

 あるダイバーは、水深30~50mほどのところにバドワイザーの空き缶が落ちているのを、すぐに見つける事が可能だと主張する。

 しかし水深がそれだけ深いと、水による光の屈折でバドワイザーの缶など見えるはずがない。

 ダイバーの水の中で得た成功体験と自信が、見えるはずのないバドワイザーの缶を彼に見せていたのだ。

 同じように過去の成功体験から市場を見渡してしまうと、人は時としていざという分岐点であり得もしない解を導き出してしまう。

 マクドナルドの業績転落も同じ原因で起きたと言えよう。

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