創造性を育む組織作りに必要な遊び文化

経営

 社員の個性を引き出す取り組みは、会社の労働効率を悪化させ、生産性を下げる要因と考える経営者はまだ多い。しかし生産性のみの追求は、突き詰めればより少ないコストでより多くの利益を出すことでしかなく、持続性が少ない。グーグルや3Mの社員に一定の遊びを設ける施策は、社員の行動を促し、企業としての創造性を高める貴重な例と言えよう。

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生産性のみを追求して失われる企業の創造性

 先日の記事「言われぬと動かぬ・アゲ足取り社員の活用」では、社内の問題児をどのように活用するか提示した。

「自ら動かぬ・アゲ足取り」社員の有効活用術
 労働人口が減少したニッポン。従来のように自社の評価基準に合わない社員を淘汰しても、新たに発生する採用コストやかかる労力に見合うだけの人材が確保できる保証もない。会社によくいる「アゲ足取り型社員」や「言われないとやらない型社員」にお手上げとならず、彼らをうまく活用できたとしたら、その会社には更に良い人材が集まるようになるだろう。

 読者の中には”問題児”も含め今の社員の個性を引き出すような取り組みをしていたら、会社の労働効率は悪くなり、生産性は上がるどころか下がる一方だ、と考える人もいるかもしれない。

 しかし生産性のみを企業が追求すると、社員は当面の利益を出すことのみにフォーカスしてしまい、企業から創造性が奪われてしまうリスクが生じる。

 誰もが簡単にモノ作りを行い、瞬時に情報を共有できるようになった現在、「生産性」だけではなく「創造性」がますます重要になるのは言うまでもないだろう。

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生産性の追求のみで続かなくなる日本企業

 ある情報システム会社の労働生産性と労働分配率は、会社更生法をもって倒産したJALよりも悪い数字だった。受託業務のオペレーションが多いこの会社では、手作業の機械化、自動化は難しい。

 そこで採った施策とは、人件費の総額を下げ、社員1人あたりの「生産性」という数字を改善することだった。その結果、「生産性」は大きく改善し、利益の一部は賞与として社員に還元できるまでに回復した。

 しかしその後程なく、多数の若手社員が辞めていき、平均年齢は5歳以上高くなった。賞与額は増え、社員教育にも力を入れ、新卒採用を開始したにも関わらずである。

 やがて以前は積極的に展開していた新しいサービスへのチャレンジはなくなり、既存の取引先に依存する業態になった。そしてさらに中堅社員も会社を去っていくことになる。

 ニッポン国内の「生産性」とは、もはやコストと時間のバランス配分を表す1つの指標でしかなくなった。「生産性」は「創造性」と対局にあるのだ。

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グーグルの20%ルールは社員に創造性育む

 GmailやGoogleマップを生み出したことで有名な、米グーグル社の「20%ルール」をご存知の方は多いだろう。

 「20%ルール」とは、勤務時間の20%を使って本来の業務以外の取り組みを認める仕組みだ。日常業務に支障が出なければ「20%ルール」を社員がいつ実行するかは完全に自由としている。

 ただし「20%ルール」は社員ひとりだけの独断で使用することはできない。同僚に向けて自分のプロジェクトを説明し賛同を得られなければ、仲間に自分の勤務時間の20%使用を認めてもらえないのだ。

 また、開発したサービスは必ずプロトタイプ(試作/原型)を作る必要があり、「デモ・デイズ」と呼ばれるデモンストレーション前の最後の一週間は、自分のプロジェクトに関係しない予定は例外なく一切入れてはいけないほどの徹底ぶりである。

 この仕組みの真髄は、社員が自らの意思でチャレンジや失敗を学ぶことだ。現にグーグル社は「20%ルール」という教育を通じて社員の創造性が優秀になることを強調している。

 したがって「20%ルール」を使って成功したプロジェクトに対して報酬を支払うことはない。自分のやりたいことができる「自由」こそが報酬そのものなのである。グーグルは金銭などの外部からの報酬は、プロジェクトが金稼ぎの手段に変わってしまい、その結果、創造性を失くす要因にしかならないとしている。

 数々の独創的なヒット商品を開発し続ける3M社(スリーエム)も、社員に対して自由に仕事をしてもらうことで、さまざまなアイディアを製品化している。

 同社は「部下の回りにフェンスをめぐらせば、部下は臆病になる。必要なだけの自由を与えよう」「試してみよう。なるべく早く」といったスローガンを企業文化として掲げている。そして、3M社も「15%ルール」を社員に与える企業である。

 グーグル社の”How Google Works”、3M社のスローガン。両社はどこにも「生産性を上げよう」とは書かない。「稼ぐ仕組み(モノ)」が、生産性のみで生まれないことを知っているからだ。

 失敗は当然の結果であり、それでも数多くの自発的なチャレンジからしか、イノベーションは生まれないことは、両社の歴史を見れば明らかだ。

 仕事の時間を自由にするやり方は、決して普遍的なものではない。

 グーグル社の「20%ルール」や3M社の「15%ルール」をそのまま導入したからといって、効果があるとは限らない。企業には企業ごとの最適な方法があるはずだ。

 たとえば、技術開発部門を持たないサービス業において、「20%ルール」を実践するのは現実的に困難だろう。

 仮に”創造性”が本社の商品開発部門だけに与えられる特権になれば、その時点で”自由な仕事”ではなくなってしまう。

 しかし、「餃子の王将」を店舗展開する王将フードサービスのように、現場をいちばん良く知るスタッフに、店のメニュー開発を任せることで、社員の創造性を高めることは不可能ではない。

 日本とアメリカでは、企業風土や文化、教育に対する考え方、などでさまざまな違いがある。日本の商慣習や会社の実情に合わせたルールを整備し、歯止めをかけることも重要になってくる。

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机上の論よりイチの行動が社員の成長に必要

 ビジネスのスピードはますます加速化し、複雑になり、個人レベルで実現できることも飛躍的に増えた。

 しかし便利になって生まれた時間を、生産性のみを追求する作業にあてたとき、その労力は継続的な利益を企業へもたらし続けるだろうか?

 残念なことに創造性をなくし自ら何か新しいことを提案できる社員が存在しない企業で、大きな成果をあげている例を、筆者は見たことがない。

 むしろ社員が無駄に見えることでも全力で楽しんでいる企業のほうが、後々になって創造性の高いビジネスを生み出している。

 多くのヒット商品やサービスが、綿密に練られたプランから生まれていないのはご存知だろう。”立派な計画”を作る時間があったら不完全でも、実際に社員にチャレンジさせてみて、顧客の反応によって次々に修正させたほうが社員の創造性を高め、会社も見えない人材という資産を構築できる。

 ぜひ社員が自発的に創造性を高められる仕事を、一定の範囲でチャレンジさせてみるのはいかがだろうか?

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