【不動産投資】賃貸経営VS「REIT」リターンとリスクを比較してみよう!

資産運用

 低金利、相続税対策の一環で、賃貸建設が活発になっています。リアルの不動産へ投資することで賃貸経営を行う人が増えている一方、注目したいのがREITという間接的な不動産投資の手法です。資産運用のプロフェッショナルが、それぞれのリターンとリスクを比較して解説致します。

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アパート・マンション経営の需要は最高水準!

 現在、年金対策や資産形成を目的にアパート・マンション経営の需要が増えています。

 国土交通省が発表した2016年度の新設住宅着工戸数は前年比+5.8%増の97万4137戸。2年連続で増加し、消費増税による駆け込み需要があった13年度以来の高水準です。貸家が同+11.4%増の42万7275戸となり、着工戸数の底上げに繋がりました。

 低金利環境により住宅ローンが組みやすくなっていることや、相続税の節税対策で貸家建設が活発になっていることも、不動産投資への資金流入を後押ししています。これにより、金融機関の不動産向け融資残高も過去最高水準となっています。

 アパート・マンション経営は元手がなくても、住宅ローンを利用して高額の資金調達が可能であることや、家賃収入をローン返済に充てることができるため、ビジネスマンの間でサイドビジネスとしてブームになっています。

 そのほか、建物の減価償却の仕組みを使い、高額所得者が所得と損益通算できることや相続税の緩和など税金面でのメリットもあります。

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不動産投資で得られる実質利回りはいかほど?

 アパート・マンションの投資利回りは、新築・中古や立地、構造など物件によって様々ですが、東京23区では、新築で6-7%程度、中古で8-10%程度、地方では新築で7-8%、中古では9-12%程度が多いようです。

 ただしこれらは、年間の家賃収入を、物件の購入価格で割った表面利回りと言われるもの。

 実際には固定資産税や火災保険料、賃貸管理費、建物管理費、修繕費用などの必要経費がかかってきます。

 これを考慮したのが実質利回りで、東京23区では、新築で3-5%程度、中古では4-7%程度、地方では新築で4-5%、中古では5-8%程度が多いなど、実質利回りは表面利回りの2/3〜1/2程度になると言われています。

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不動産投資に参入すると生じる3つのリスク

 さて、良いことだらけに思えるアパート・マンションの賃貸経営ですが、参入するのをためらいたくなる3つの大きなリスクがあります。

1)情報の非対称性

 賃貸経営の大きなリスクの1つ目は、不動産業界が今も抱えている情報の非対称性にあります。

 たとえば、不動産の業界関係者とコネクションがないと、いい物件に出合う機会が少ないのが現実です。

 投資用不動産は条件のいい物件ほど、水面下で取引されており、更には物件の維持・管理や運営管理等、手間がかかります。

2)流動性が低く換金が難しい

 2つ目のハードルは、売買が迅速に行えないことです。

 すぐに買いたいと思っても物件購入には時間がかかりますし、現金が必要で売りたいと思ってもすぐに売ることができないことが多いのが現実です。

 投資する上で重要な、「流動性」と「換金性」が確保できないのは、賃貸経営の大きなリスクとなります。

3)入居者の確保が出来ないと返済が滞る

 また、少子高齢化が進む中、賃貸に出しても入居者を確保できなければ、月々の返済が滞ってしまいます。

 最近はアパートが増えすぎて部屋が埋まらなくなるケースも目立っています。

 完成後の2年間は賃料を保証してくれても、それ以降は保証を切られたり、保証率を引き下げられたりして、途方に暮れたオーナーが訴訟に持ち込む例もあります。

 仮に上手く売却できたとしても、ローンだけが残ってしまうケースも多いのです。

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REITは賃貸経営のリスクを減らした投資手段

 こうしたなか、不動産関連に投資して一定収入を得ることができ、アパート・マンション経営よりもリスクを抑えることができる「REIT」への関心が高まっています。

 REITとは不動産投資信託のことで、投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、物流倉庫、賃貸マンションなど複数の不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する仕組みとなっています。

 特に、東京証券取引所に上場し、株式と同じように手軽に投資できるものを「J-REIT」といい、2017年5月1日現在で58銘柄が上場しています。

 ほとんどのJ-REITでは年間2回の配当があります。

 REITは法人扱いを受けていますが、収益の90%以上を分配金に回すと、実質的に法人税がかからないということになっているので、多くのJ-REITは分配金(配当)を出しやすい仕組みになっています。

 REITが持つ一番の魅力は、不動産関連への投資にも関わらず、株式と同じように売買ができるなど「流動性」が高いこと。

 また、REITを運営する専門家が物件を選んで取得するため、不動産に関する高度な知識や業界関係者とコネクションがなくてもよい物件に投資することが可能です。

 また、REITが不動産の管理・運営も行うため、手間が掛からないのも魅力と言えるでしょう。

 一方、元手は必要になるものの、限られた資金で住宅のみならずオフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル等の数多くの物件に投資ができることから、分散効果が期待できます。

 J-REITの配当利回り(17年5月1日現在)は、平均3.9%程度。

 アパート・マンション経営の利回りに比べて低いですが、上記のメリットにより、リアルの不動産投資が抱えるリスクを抑えられることを考えれば、魅力は大きいのではないでしょうか?

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REITのリスクは?長期視点で変化を見極めよ!

 ただし、REITへの投資にもリスクは存在します。

 J-REIT指数は、株価よりも比較的安定的ではあるものの、投資口価格が日々変動するため、短期的な投資の場合、キャピタルゲインによる収益期待がある半面、損失となることも考えられます。

 従って、アパート・マンション経営同様に、長期的視点で投資を実行することが求められます。

 また、遠くない未来に人口減少で物件が飽和状態になると、賃貸経営が成熟期を迎えますし、金利が上昇に転じると資金調達が困難になるなど、環境の変化はいつか訪れます。

 時流の変化を適切に捉えて、換金時期を見定めるため、不動産投資に関する情報を常に入手できる環境を作る必要があります。

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まとめ:賃貸経営とREITのリターン・リスク

 最後になりますが、賃貸経営とREITのリターン・リスクをまとめてみました。

アパート・マンション経営 J-REIT
初期投資 数千万円~数億円
1つの物件にかかる金額が大きい
数万円~数十万円/口
少ない金額で複数の多種多様な物件に投資可能
手数料 取得金額の1割程度 数百円単位(証券会社による)
融資 住宅ローン(数千万円以上) 信用取引(運用資産の3倍程度)
投資対象 住宅 住宅、オフィスビル、商業施設、ホテル、物流施設等
物件
選び管理
必要(自身で行う or 外部に委託) 不要(REITを運営する専門家が行う)
流動性 低い 高い(株式市場で売買できる)
実質利回り 平均5~6%程度 平均4%程度
時価変動 あり。基本的には売却額が取得額を下回ることが多い。ただし、短期的には大きな変動は見込みにくい。 あり。株式と同様で日々変動する。値上がり・値下がり両方ともあるが、株式ほど値動きは大きくない。
確定申告 必要 不要(特定口座 源泉徴収ありの場合)
節税対策 あり(所得税・相続税対策) 不要

 賃貸経営は利回りの高さが魅力である一方、REITは流動性と換金性が魅力であることがよくわかりますよね。

 ただし、初期投資額の大きさや、手続きの簡易性から言うと、不動産投資に興味を持った人の入り口としては、REITに分がありそうです。

 実際に賃貸経営を行うにしても、投資の鉄則「分散投資・リスクヘッジ」の有用な手段の一つとして、REITに関心を持ったほうが賢明かもしれません。

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藤ノ井 俊樹

わずか10歳から投資家としての第一歩を踏み出す。

証券会社入社後は15年間一貫して法人部門を歩き、大手生保や事業会社に対してさまざまな投資手法を提案。

長年にわたり、高パフォーマンスを実現してきた経験から、正しく豊富な知識や情報収集能力、冷静な判断力を磨くことで、株式投資において長い期間、着実に利益をあげ続けることが可能と判断。

インターネットやセミナーを通じて投資教育、投資手法を提案している。

CFP(日本FP協会会員)
日本テクニカルアナリスト協会CMTAI

日本投資教育センター取締役兼任

■著書・執筆

著書 「個人投資家のための信用取引自由自在」

監修 日本証券業協会 証券教育広報センター発行
「女性のためのスタイリッシュ投資ライフ」

他、執筆多数

■セミナー・講演

パンローリング社主催
「ロング・ショート戦略で自由自在 株式トレード必勝セミナー」

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節約社長