スーパーに代わり民間の産直市場が流通の主役となる日は近い

時事

 民間の「産直市場」が過去に見ない出店攻勢を、都市圏に対して強めている。出店攻勢を強めているのは、ファームドゥとタカヨシの2社である。両社は、鮮度の良い農作物を流通させることで消費者の指示を取り付け、値決めを生産者に行わせることにより、新たな農作物の流通形態を作り出そうとしている。

スポンサーリンク

産直市場は都市圏の消費者にとってはまだ観光スポット

 地元の新鮮な野菜や特産品を気軽に買える「道の駅」や「産直市場」(以下、産直市場)は、都市圏に住む人々にとってみれば、まだまだ「非日常」空間であり、観光スポットのように感じる方が多いことだろう。

 しかし、あと数年も経てば、その感覚は過去のものとなるだろう。

 なぜなら今、民間の産直市場が過去に見ない出店攻勢を、都市圏に対して強めているからだ。

 産直市場の躍進を語る上で欠かせない会社が2社ある。ファームドゥとタカヨシだ。

 以下、2社の取り組みをご紹介しよう。

スポンサーリンク

民間の産直市場として出店攻勢を強めるファームドゥとタカヨシ

 ファームドゥは、群馬県発祥の産直市場を手がける企業であり、「食の駅」「地産マルシェ」ブランドで35店舗(2016年10月9日現在・休業中含む)を運営している。

節約社長

 群馬県という農業王国発祥ということもあり、群馬の高原野菜など鮮度が良い商品を生産者が店舗に直接納品し、自ら値付けをする方式が取られている。

 また同社は、群馬県吉岡町の旗艦店「吉岡店」にセンターを設けることで、夜明けに生産者がセンターへ持ってきた野菜をトラックで東京へ運び、当日のオープン時にすぐ買える流通経路を作った。

 三芳PAや幕張PAなど高速道路の首都圏パーキングエリアはもちろん、烏山や吉祥寺など富裕層が住む場所などへも出店するなど、多様な出店形態を図っている。

 2社目は千葉県を本拠地とするタカヨシである。

 同社は、「わくわく広場」や「Crazy Pantry」といった産直市場を、全国に直営・FC展開で84店舗運営している。

 当初は郊外型の独立店舗による運営形態が主流であったが、現在では主に都市圏のイオンモールやららぽーとなど、ショッピングモール内への出店が主流である。

 その出店スピードは凄まじく、今年の10月から11月にかけては確認できている分だけで、8店舗の新店をオープンさせることがわかっている。

節約社長

 関東中心の出店から、直近では関西以西への出店が強まっているため、いずれ「わくわく広場」という名前を知るようになる人は全国的に増えることだろう。

 同社もファームドゥと同じように、生産者が直接値付けを行う形態を取っているが、全国へ出店攻勢を加速している背景には、出店地域近郊農家からの野菜持ち込みを増やすことで、全国に立地する店舗への商品の安定供給が狙いとして考えられる。

スポンサーリンク

民間の産直市場が勢いに乗っている2つの要因

 イオンが巨額赤字を抱えた決算を発表し、イトーヨーカドーも出店を一時凍結するなど、スーパーマーケット業態が苦しんでいるのに対して、なぜ産直市場がこれほど伸びているのだろうか?

 それは、「生産者」と「消費者」双方のニーズを満たす運営形態を、産直市場が満たしているからだ。

値付けは生産者自身が行いリスクも生産者が背負う。

 一般的にスーパーマーケットで流通する98円のりんごは、生産者の手取りが35円から40円程度にしかならない。

 なぜなら消費者の手元に届くまでに、

  • 農協
  • 卸売市場
  • 仲卸
  • 小売店

 と4つの中間流通が入るからである。

 しかし産直市場では、生産者が産直市場へ直接商品を納品するため、店舗の販売手数料を差し引いた額が手元に残り、65円〜75円程度の収入を手にすることが可能だ。

 生産者は自分の商品のレベルに併せて値決めを自分で行うが、その商品が余った時にロスが出るリスクも受けることになる。

 自分でマーケティングを行い、どんな商品が売れるのかを考えねばならない分、負担は増えるが、それは普通の商売では当たり前のことであり、試行錯誤しながら産直市場を上手に利用し、実際に手取り収入を大きく伸ばしている生産者も多い。

 全国を巡らせる流通経路が出来上がれば、産直市場は農作物の流通で主流を占めることになるだろう。前述の2社がそれを狙っていることは明白だ。

消費者の目は肥え続けている

 スーパーマーケットなど小売店に並ぶ商品の多くは、複雑な流通経路を経て店舗に流れ着くが、店舗の発注に応じた納品が求められるため、中間流通の中でストックを求められ、鮮度がどうしても落ちやすい。

 特に野菜などは、中間流通がストックすることにより鮮度が落ちると、それが消費者の目にも明確に理解できるため、産直市場の当日や前日に取れた野菜に鮮度面で勝てない。

 更に、中間流通を省いている分、産直市場は価格面でも消費者にとって小売店より魅力的に映る。

 インターネットを通じて、農作物の流通形態の不合理性を多くの人が知るようになったことで、生産者を応援する気持ちで商品を購入する消費者も多い。

 アメリカでは、生産者が直接農作物を販売するファーマーズ・マーケットが、農作物流通の中でも大きな位置を占めるようになった。

 日本で同じような制度の整備を担うのは、先程ご紹介したファームドゥやタカヨシのような会社になっていくことだろう。

 産直市場が、都市圏に住む人にとって「普段使い」の身近な存在となる日はそう遠くない。

時事
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
編集部

起業、経営を応援するWEBマガジン編集部です。

編集部をフォローする
節約社長