労働法の大幅改正 労働価値観は大きく変わる

労務

 2015年は労働法(派遣労働法/労働基準法)が大きく変わる一年となりそうだ。有給消化、残業代、派遣社員の社会的地位、について経営者と従業員のパワーバランスに多大な影響を与える改正を行う方向で政府は動いている。「長時間働くこと」から「労働の質を高めて成果を出すこと」こそが美徳という価値観を有する時代が訪れようとしている。

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2015年は労働に関わる法が大きく変わる

 今年、労働基準法、労働者派遣法について、法律が大きく変わることが予測されており、これまで日本人が有してきた労働観を変えざるを得ないとも言われている。
 
 旧来の「日本人の労働観」とは一般的に、「正社員として、プライベートを犠牲にして深夜まで身を粉に残業し、仕事を一番に生きる。家族には黙って背中で人生を語る。」といったところだろうか。

 しかし、それぞれの法律について改正を目指す内容を見ると、これらの価値観は捨て去らなければならないことがわかる。

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大きな3つの争点 労働法はどう変わるの?

 法律改正にあたって現時点では、有給完全消化、残業代、派遣社員の社会的地位、の3つが大きな争点となっている。
 
 それぞれが、どのように変更される方向で調整されているのか、経営者と社員それぞれにとってどのような影響をあたえるのかを、以下考えてみたい。

1)社員の有給消化を企業に義務付け

 読売新聞は1月7日、政府が国会に提出する労働基準法改正案の大きな目玉として、「従業員が有給休暇を取得する時期を指定することを、企業に義務付ける」ことを取り上げた。※1世界最大の旅行会社エクスペディアの調査によると、日本の有給消化率は50%程度であり、他の国と比較しても有給を全く消化していないことが問題となっている。※2一見社員にとってはワーク・ライフ・バランスを整えることが可能で、メリットのある法律改正に見える。しかし、有給消化時期の指定選択権は企業にあるため、かえって経営者は、時期別(繁忙期/閑散期)に労働の選択と集中を効率的に行うことが可能となる。社員は有給消化の代わりに、営業日内で求められる成果のハードルを更にあげられる。

2)ホワイトカラーの残業代を原則廃止

 有給消化と共に、労働基準法改正案に「残業代ゼロ」制度が盛り込まれていることも注目されている。新制度の対象者は年収1,075万円以上の働き手とする方向で調整され、会社にいる時間の制限措置も設けられる予定だ。※3現状は、よっぽどのことがなければ、多くのサラリーマンにとっては関係のない動きに思われているが、この制度がはらむ本質は「日本の労働価値基準を時間から成果(質の高い仕事)に変えよう」ということだ。将来的に、対象者が年収5〜600万円まで引き下げられることも一部で言及されている。経営者は残業代を出さず、残業させにくくなる代わりに、同じ時間内で、より多くの成果を社員へ求めるようになる。

3)派遣社員の業務期間を3年に制限

 昨年の衆議院選挙で一度廃案となった労働者派遣法の改正案が、今年再度提出される可能性が高い。※4具体的には2つの大きな改正ポイントがある。一つは全ての労働者派遣事業が許可制となること、もう一つは、これまで特定26業種に認められた、3年を超える派遣の受け入れができなくなり、同一の労働者を派遣する期間に3年の期間制限が設けられることだ。企業は3年の雇用期間制限を受ける代わりに、人材を変えれば派遣社員を雇用し続けられるため、ルーティン・ワークのポストをかえって派遣社員に固定化する可能性が高い。従って、派遣社員の存在が会社に及ぼす影響は大きくなる。正社員は自分独自の技能がなければ、派遣社員のポストに仕事を奪われる可能性がある。

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リコーの動きは法律改正を先駆けている

 以上のように、労働法改正の論旨は「労働時間」ではなく「労働の質・成果」を正社員へ求める方向に、大きく舵取りされていることがわかる。
 
 日本独特のぐうたら社員、派遣社員やパート社員と同じことしかできないのに何故か正社員、という人間は、今までどおり会社に居にくくなる可能性が高い。
 
 経営者は社員を成果で評価し、成果を出す人間に多くを支払わなければ、人材流出のリスクが生じる。
 
 これら法律の改定にあたり、面白い動きをしている企業が、事務機器・光学機器の製造を行っているリコーだ。
  
 同社は、今年から国内で社内・就業時間内の全面禁煙化を開始した。※5
 
 表向きの理由は、社員の健康促進や受動喫煙を避けるためとしているが、本音は、雇用時間内は社員を会社の業務に100%集中させ、労働の質を下げるな、という通達だろう。
 
 昨年の4月から始めている、午後8時以降の残業を原則禁止とする動くも含めて※6、リコーは明らかに労働の対価基準を時間ではなく、労働の質と成果に求めている。
 
 今後、このような施策を打ち出す企業が増えることを予想するのは容易であり、「長い時間働けば偉いと思ってもらえる」という価値観を捨て去らなければならない時代がやってくる。
 
 
※1 読売新聞 1月7日 記事
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150107-OYT1T50071.html
※2 エクスペディアジャパン 
http://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2014/
※3 朝日新聞 1月8日 記事
http://www.asahi.com/articles/ASH176HSFH17ULFA03F.html
※4 厚生労働省 労働者派遣法の見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000040563.html
※5 リコー ニュースリリース
http://www.ricoh.com/ja/release/2015/0107_1.html
※6 日本経済新聞 2014年3月24日 記事
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ190GZ_Z10C14A3TJ1000/

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