皇帝の支配と一極集中産業で沈むロシア

経済

 ロシアが通貨危機に苦しんでいる。15日にルーブルは11%安となり、翌日早朝には6.5%の緊急利上げをせざるを得ない状態に追い込まれた。原油安とウクライナ危機が原因とされるが、もう一つの理由として国の構造が挙げられる。帝政ロシア時代より続く、皇帝(ツァーリ)の支配と産業の一極集中が事態を深刻なものにしている。

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ロシアを襲う1998年以来の通貨危機

 日本以上の寒波にロシアが襲われている。
 
 ロシア中央銀行は12月16日(火)早朝、自国を襲う通貨危機を回避するべく緊急利上げを行った。主要政策金利である1週間物入札レポ金利を10.5%から17%へ一気に6.5%も引き上げたのだ。
 
 前日に自国通貨ルーブルが対ドルベースで、15日(月)だけで11%安、一週間で20%も下がった危機的状況を鑑みての判断である。
 
 17日(水)18時の現時点では対ドルベースで3.5%高となっているが、これは財務省が保有外貨の売却を開始したからであり、いつかは尽きる焼け石に水の政策だ。余談が許されない。
 
 1998年に起きた、キリエンコ政府並びにロシア中央銀行の行った対外債務の90日間支払停止と、これに起因するルーブル下落、キャピタル・フライト以来の危機である。
 
 今回のロシア通貨安の原因は、2つあると言われている。現在進行形のウクライナ侵攻に対する西欧諸国の経済制裁と、自国収入の半分に及ぶガス・原油といった資源安だ。
 
 これら原因の根本にあるのは、ロシアが400年間脱することのできない「皇帝の支配と一極集中産業」という国の構造にある。

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皇帝支配と一極集中産業は過去に見た景色

 ロシア語で皇帝は「ツァーリ」と呼ばれる。1700年代、ピョートル1世の時代にツァーリの権力は高まりを見せ、「祖国の父」「大帝」という称号も与えられるようになった。
 
 とはいえ元々のロシアといえば、ピョートル1世の時代以前は小国の集まりであり、その多くが、中華帝国(元:げん)と西欧の中心である東ローマ(神聖ローマ)帝国の属国であった。
 
 歴史に看板と伝統がない上に広大な領土を取りまとめるには、皇帝への権力集中と一極集中産業が必要だった。この時代の一極集中産業は農業である。
 
 帝政ロシア時代のロシアは農産業に約80〜90%の人口が集中しており、皇帝の強権政治の元に力づくで国民が抑えこまれていたのだ。帝国の権益に与る(あずかる)1.5%の貴族が農業従事者を「農奴」として扱って独占的な利益を得ていた。
 
 このいびつな産業構造は江戸時代の日本も同じであったが、広大な国土のロシアは1890年代、既に帝国全体で1億5千万人もの人口を有していたため、動きを変えるのに時間がかかり、工業化に遅れをとった。
 
 結果として後進国でありながら国全体でまとまって工業化を急速に進めた日本に、日露戦争で敗北した。その後、第一次世界大戦を契機に一極集中産業の農業従事者を支持母体としたレーニンが「10月革命」でロシア帝国を転覆している。
 
 ソビエト時代においてもスターリンが、ツァーリのように全体主義で政治を支配し、軍需産業を一極集中産業として育てようとした。後々の経済衰退とペレストロイカにより、ソビエトも消滅することとなった。
 
 現在はどうだろうか?
 
 現大統領のプーチンは昨年首相から大統領に返り咲いた。自由主義の前大統領メドベージェフは首相になったものの、彼のブレーンだったウラジスラフ・スルコフ副首相がプーチンに追いやられ辞任することで独裁体制が築かれた。プーチンはロシアのツァーリとなったのだ。
 
 そして英フィナンシャル・タイムズ誌の2014年発表「グローバル500(世界時価総額500位以内の企業)」にはロシアから6つの企業がエントリーし、そのうち5つは“Oil & gas producers”つまり資源関連企業であり、オイルとガスを扱う企業である。いずれもプーチンと蜜月関係にある。
 
 こうして現代においてもロシアの「ツァーリ支配と一極集中産業主義」は400年前と変わらず続いているのである。
 
 国土の大きさと多民族国家であることを考えれば、この構造を変化させることは厳しいため、今後プーチンが失脚したとしても同じ歴史がこの国では繰り返されることだろう。
 
 目先はプーチン皇帝が暴走するのか、それともウクライナ侵攻の段階的撤退による西欧諸国との融和を目指すのかによって、日本への影響も大きいためロシアの情勢を注視する必要がある。

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時とともに体制を変えるのは企業も同じこと

 
 経営者にとって翻って(ひるがえって)今回のロシア通貨危機は、どんなに優れた強権と能力を自分が持ち、優れた一つのビジネスモデルに集中して利益が出ているとしても、それは永遠に続かないことの貴重な教訓となる。
 
 自分の判断が間違っていても、会社が多種多様な人材の活躍や、他の事業によって、回り続ける組織作りを目指したい。

※画像参照 ウィキペディア「ロシア皇帝」より
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E7%9A%87%E5%B8%9D

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