差別化した”ポジショニング”戦略の取り方はカフェ業界に学べ

経営
御社の差別化要因は何ですか?

という質問に対して、多くの経営者が「価格」「品質」「スピード」という3通りの答えから、いずれか一つを答えます。

ところが現実には3要素単体で圧倒的な差を作り出すことは難しく、競合他社も含めて似たようなところにひしめき合っているものです。

カフェ業界は、圧倒的に差別化されたポジショニング戦略を学ぶことができる優れたロールモデルです。

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御社の強みはなんですか?答えは大体3通りに

仕事上、多くの中小企業の社長さんとお話しする機会がありますが、みなさん自社の商品やサービスについて私に色んなお話をしてくれます。

その際に私は必ず「御社のサービスは競合と比べてどこが優れているんですか?」ということを聞くようにしています。

回答はいろいろですが、ざっくりと分類すると「価格」「品質」「スピード」という3通りの答えが多いように感じます。

では、この3つで中小企業はどのように圧倒的な差別化を図るべきか?という点を、本日のお題として展開したいと思います。

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価格・品質・スピード単体で差別化は成し得ぬ

  • 価格
  • 品質
  • スピード

いずれもユーザーが商品・サービスを選択する際に非常に重要なファクターとなるものであり、そのいずれかで競合を圧倒的に引き離すような商品・サービスが提供できているとしたならば、それは本当に素晴らしいことです。

きっと売上もうなぎ登りで、上場も視野にいれた事業展開をされていることでしょう。

しかし、現実には「価格」「品質」「スピード」ともに単体で圧倒的な差を作り出すことは難しく、競合他社も含めて似たようなところにひしめき合っているのが普通です。

商品・サービスを提供されている側では、明確な”差異”があると思っていることでも、実は選択する側のユーザーからすれば、その程度の差では選択理由にならないということも少なくありません。

これはプロモーションの仕方にも左右されるとは思いますが、「価格」「品質」「スピード」の分野で差別化しようとすると、競合もすぐに追随してきて、終わりのない消耗戦に突入していきます。

結局勝利をおさめるは資本力に勝るあの大手企業、というのが日本全国のあらゆる商品・サービスで展開されている勝負の結末です。

つまり、資本力のない中小企業が「価格」「品質」「スピード」の単体で差別化しようとすることが非常に危険なことであり、優位性を築いたと思った数日後にはすぐに追い抜かれているという「三日天下」が日常茶飯事なのです。
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ポジショニング戦略とは独自の軸を決めること

マーケティングの分野における”ポジショニング”戦略は、決して1つの軸で考えることはしません。

必ず2軸で考えることがセオリーとされています。この「2軸」というのが重要で、3軸、4軸と多くてもダメなのです。

その商品・サービスの良さや優位性を伝える際に、比較軸が多すぎると結局は伝わりきらず失敗します。

ポジショニングとは軸を決めること

さらに、もう一つ大事なのは「ポジショニングとは軸を決めることである」ということを理解することです。

もちろん、自社が競合他社よりも圧倒的に優位に見える比較軸を探していきます。

多くの人が勘違いしているのは、「ポジショニングとは既存の比較軸の中でどこに位置づけるかを決めること」だと思っていることです。

”ポジショニング”戦略で最も重要である軸を決めることを放棄しているわけですので、そこで導き出されたポジショニングは凡庸なものになり、競合との違いも明確でなく、必ず血で血を洗う抗争(競争)に発展していくことでしょう。

自社が優位に立てる軸をとにかく徹底的に探す

ではどうすれば良いのかというと、”ポジショニング”戦略を語るのであれば、自社が優位に立てる軸をとにかく徹底的に探さなければなりません。

最初は2つもそのような軸を探すのが難しければ、1つの軸は「価格」「品質」「スピード」のいずれかでもいいでしょう。

しかし、もう1つの軸は自社の商品・サービスの強みを徹底的に掘り下げ、競合他社の商品・サービスをあらゆる角度から分析することで導き出してください。

ポジショニング戦略の成功例として、次項からはカフェ大手3社が打ち出すポジショニング戦略をあげてみましょう。

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カフェ大手3社の独自なポジショニング戦略

カフェ大手3社と言えば、スタバ、ドトール、ルノアールです。

いずれもコーヒーを提供することをメインとする飲食店ですが、3社の”ポジショニング”戦略はいずれも異なります。

まずは提供されるコーヒーについて「価格」「品質」「スピード」でそれぞれの優位性で並べてみましょう。

  • 価格優位性:ルノアール < スタバ < ドトール
  • 品質優位性:ルノアール < ドトール < スタバ
  • スピード優位性:スタバ < ルノアール < ドトール
3社の「価格」「品質」「スピード」での優位性は、以上のように分かれますが、では独自の軸として3社はどのようなものを有しているのでしょうか?

ルノアールの軸:仕事や商談がしやすい空間

ルノアールはいずれの軸で1位にはなっていませんが、お店はいつもたくさんのお客さんであふれています。

特に保険の営業マンの方々が大好きなお店です。サラリーマンの方もよくいらっしゃいます。

つまり、この3軸で1位でなくても、ルノアールは「商談や仕事がしやすい空間」を提供することで、自らの圧倒的に差別化されたポジショニングを築いているのです。

ドトールの軸:ちょっと時間を潰す空間

ドトールの戦略は明確で、価格を安くして、提供スピードを速くし、「ちょっと時間を潰す空間」を提供しています。

朝、通勤前に新聞を読んだり、昼休みに一人でコーヒーを飲みながらスマホをいじったりするのに最適な場所というポジションを手に入れています。

スターバックスの軸:家でも職場でもない第三の場所

最後にスタバです。価格はドトールよりは高く、ルノアールよりは安い。品質はこの2社と比べると高い部類に入りますが、決して高級なものを提供しているわけではありません。

コーヒーは注ぐだけですが、他の商品はオーダーしてから1杯ずつ作っているため提供にも時間がかかります。

では、スタバがこれだけ多くの人に支持されているのはなぜなのでしょうか。それは店員の接客や机のレイアウト、多彩な商品ラインナップまでを含めた「居心地の良さ」に要因を見いだせます。

もともとスタバは「サードプレイス構想」を掲げ、「家でも職場でもない第三の場所」を提供するというコンセプトを大事してきました。

これを突き詰めた結果が今のスタバの店舗のあらゆるところに凝縮されており、気軽に安心して立ち寄れる場所になっているのです。単にコーヒーの品質や価格だけで勝負していれば、今のスタバはなかったことでしょう。

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ポジショニング戦略は光の当て方を決める作業

今回は”ポジショニング”戦略の軸として「価格」「品質」「スピード」以外の軸がいかに重要であるかをお伝えしたかったため、やや簡略化しておりますが、3社のポジショニング戦略の説明で「軸を決めること」の重要性はご理解いただけたかと思います。

つまり、ポジショニングとは「光の当て方」なのであり、その当て方次第で自社のポジショニングは良くもなり、悪くもなるものです。

「価格」「品質」「スピード」だけの競争に陥らないためにも、あなたの商品・サービスが優位になり、輝くことができる比較軸をこの機会に徹底的に考えてみてはいかがでしょうか。

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ショーン

某ビジネススクールのMBAホルダーで、税理士資格保有者。
税理士資格は持っていますが、最近ではほとんどそちら側のお仕事はしておりません。

金融機関、会計事務所、CFOなど経験から会計・財務・税務分野はもちろんのこと、法務や社内システムの構築、戦略策定、プロジェクトマネジメントなどを得意としております。また、「効率化マニア」なので、タスク管理や読んだ本のデータ蓄積などを通じて、限られた時間で最大のパフォーマンスを出す方法をいつも追求しています。

コンフィデンシャルなお仕事も多いため匿名でのニュース投稿になりますが、私の経験や知識が少しでも多くの中小企業経営者のみなさまのお役に立てれば思い、精力的に投稿していきます。

なお、ニックネームおよびプロフィール写真は、私の大好きなプロスノーボーダーである「ショーン・ホワイト」から拝借しました。

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