米マクドナルド撤退観測が国内ハンバーガー業界に与える影響

企業分析

 2015年のビジネスニュースを振り返ると、マクドナルドの異物混入に始まり、マクドナルドの株売却騒ぎで暮れました。ガリバー(寡占市場において1社の市場シェアが圧倒的に高い状態)の動きは、少なからず業界にも影響を与えます。マクドナルドの売上減少規模は、年間で500億円から600億円の売上に相当し、この市場を虎視眈々と狙う、国内外ハンバーガーブランドや外食ブランドが動き始めています。

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株売却検討マクドナルドの後釜を狙う海外勢

 2015年のビジネスニュースを振り返ると、マクドナルドの異物混入に始まり、マクドナルドの株売却騒ぎで暮れました。

 ガリバー(寡占市場において1社の市場シェアが圧倒的に高い状態)の動きは、少なからず業界にも影響を与えます。

 2014年の7月に発生した中国産の鶏肉の消費期限問題に端を発して、年明けの異物混入騒ぎで20%以上の売上ダウンを記録して以来、マクドナルドの業績は1年経過しても抜本的な回復には至っていません。

 その売上減少規模は年間で500億円から600億円の売上に相当し、このインパクトは一つのナショナルブランドがなくなったのと同一のものです。

 とはいえ、500億のハンバーガーニーズ(外食ニーズ)が消えたかといえば、そのようなことはなく、マクドナルドが失った「外食したい胃袋」を目指して、海外のハンバーガーブランドが、どんどん日本を目指しています。

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海外ブランドは東京オリンピックを狙っている

 マクドナルドが失った「胃袋」を虎視眈々と狙う海外勢とは、どのような企業でしょうか?

 それは最近でも話題になりました、タコベル、ハンバーガーのシェイク・シャック、今年から日本国内に進出するカールスジュニア等のブランド達です。

 そのほかにも、多くの海外ブランドの外食が日本に上陸、または進出を狙っています。

 その一因に、マクドナルドの弱体化があり、マクドナルドの弱点をしっかりと突いたブランドが多いのもうなずけます。

 マクドナルドの弱点とは、商品に特色がなく、本質的にも魅力的な(味に)商品を持っていないことです。

 この傾向は全世界的に広まっており、日本だけでなく各国でマクドナルドの勢いは弱くなっていると言えます。他のバーガーチェーンにとってはチャンスであり、彼らは再拡大を狙っています。

 とはいえ、人口が減少することが確実視される日本マーケットにおいて、海外勢はどのようなところに魅力を感じているのでしょうか?

 その答えは明確です。

 彼らは、はっきりと「2020年の東京オリンピックをターゲットにしています」と言及します。

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海外ブランドは日本でのパートナー探しに必死

 ただし、日本に進出する外食ブランドにも死角があります。

 日本でブランド展開(チェーン展開)を行うためには、日本側の有能なパートナーが欠かせないのです。

 ブランドの成功を最も左右する要素は、日本における「パートナー」探しと言っても過言ではありません。

 私の所へも、日本に誘致している業者から、日本のパートナー探しの問い合わせが来るほどです。更に予備軍は数多く来ているようで、特に外食系ブランドで日本国内進出を目指す企業は多いようです。

 今、パートナー探しに奔走しているブランドは早くても来年以降の日本進出となるでしょう。その後、2018年から2019年までにはほぼ出揃った形になるはずです。

 ところが中には、日本側パートナーが日本国内での飲食経験の少なさから、かなり強引に店舗を作り、展開を目指している話も聞こえます。

 魅力的なコンセプトを持つブランドであっても、パートナー選びに失敗すれば、大きな危険性をはらんだ船出となってしまうようです。

 そのため、日本に進出したいブランドを持つ企業が勝ち残るためには、以下3つのポイントを抑える必要があります。

  • 1.いかに優秀なパートナーに巡り会えるか
  • 2.少なくとも国内での外食経営の経験があり、日本のマーケットや労働環境も含めて理解しているパートナーであること
  • 3.何よりも真摯で誠実なこと

 海外ブランドで日本進出をねらう企業は、素晴らしいパートナーとタッグを組んで日本市場で活躍してほしいものです。

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日本マクドナルド失敗の原因はこの3つだ

 話は最初に戻りますが、マクドナルドの弱体化の要因は何なんでしょうか。

 特に外食の経営者にとって失敗要因を知ることは、参考になる事例かと思われます。

 よく言われていますのが、ビジネスモデルの崩壊、今までの方法で行き詰っているわけですからそう言えるのでしょう。

 創業者、藤田時代(藤田田氏の時代のこと)の最後に、業績悪化の原因を作ったと言われる「低価格路線」、「小型店舗展開」が、マクドナルドのブランドをチープなものに、安売りのファーストフード店にしてしまったと言われています。

 しかし、更に本質的な原因が他に3つあります。

原因1.優秀な人材の辞職

 最強のマーケティングとシステム、ワールドワイドでの原材料調達力を持っていたにも関わらず、マクドナルドの業績が悪化し続けた最大の要因、それは優秀な人財を放出してしまったことです。

 実は、2007年から2010年の間で1500名の人財が同社を離れています。「藤田色の一掃」とも言われます。

 「赤いバス」は用意しましたが、乗るか乗らないかと判断を突きつけたのはそんな中での出来事です。

 日本一の給料を出すと豪語し、優秀な人財を多く採用した藤田社長時代の優秀な人財によって、高度なオペレーションは支えられていました。

 その人財が少なくなった時に、減速は起こるべくして起こったのではと言われています。

原因2.日本式経営からアメリカ式経営への変化

 藤田社長は在任当時、マクドナルドを日本へ導入した時の姿勢を、「和魂洋才」と盛んに言及していました。

 またアメリカのレイ・クロックも日本的な経営に一定の評価をし許容することで、従業員が大切にされ、藤田社長の価値観で日本マクドナルドが築き上げていかれました。

 その考えを真っ向から覆したのは、原田泳幸社長です。要は「洋魂洋才」の日本的な経営を、アメリカ主導の経営に切り替える指示が出ていたのでしょう。

 これが弱体化二つ目の要因につながります。

 2004年に就任した原田社長は前任のドナヒュー氏及びアメリカ本社の意向を受けて、藤田社長時代の日本式のローカライズの方針、日本のことは日本で決めるという方針を大きく転換しました。すなわちアメリカ式経営への変換であります。

 2007年にアメリカから赴任したディブ・ホフマン氏は、原田社長のタッグでアメリカ式経営への転換と不採算閉店、フランチャイズ化の促進を図ったわけです。

 そして今回の株売却にあたり「日本マクドナルドは、資本関係を見直すと発言。「脱米国流→日本主導、健康志向や限定メニュー、独自施策で回復狙う」とのことです。

 どうしたいのか?どこへ行こうとしているのか?迷走するマクドナルド。

 フランチャイズ本部の指導力が失われた時、そのチェーンは崩壊します。

原因3.「顧客」「従業員」を意識した施策の変更・決定がされていない

 三つ目はこう言った様々な施策の変更・決定に「お客様」「従業員」の存在が見えていないということです。

 今のマクドナルド経営陣は「お客様」不在で施策を決め、自分たちの理屈でオペレーションを変えてきました。

 提供時間の短縮という理由で「テーブルメニュー」をなくし(メニューを各テーブルに置かないこと)、店舗イメージをカフェ風に変えることで、子供連れの家族客の足が遠のく原因にもつながりました。

 このことをお客様はきちんと見ており、マックの変調に気がついていました。

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マクドナルド株の買い手はうまく決まらない

 コラムの冒頭でも申し上げた株売却は、同社が思うほど進まないのではないかと言われています。

 持ち株の約半分、総額で1000億の引き受け手が現れるのかは、現時点で非常に微妙な状況です。

 現在の株価は業績に連動しないカタチで形成されています。しかもマクドナルドは個人株主が多く、株主優待に魅力を感じて保有している銘柄です。

 実力よりも高い買い物であることと、現在の収益状況、この先の業績見通しは非常に厳しいことを考えると、マクドナルドというブランドがあったとて、買い手が簡単に見つかるとは思えません。

 フランチャイズ募集をはじめた時も、マクドナルドは自分たちのブランドであれば、手をあげるところは多いだろうと考えていましたが、そんなに甘くなかったのと一緒です。

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跡地狙うライバル含めて2016年は重要な年に

 更に海外勢だけでなく、国内各社からも今がチャンスと、拡大に舵を切るところが出てきているのです。

 高額家賃で採算割れし撤退する、首都圏のマクドナルドの跡地は、立地として申し分が無いため、多くの企業にとって拡大の拠点としやすいからです。

  ただし彼らにも懸念はあります。マクドナルド以上の売上が見込めるかどうかです。

 冷静に状況を分析し、海外の急拡大するブランドの動きも見極めて、自社の事業拡大を目指すことが、後釜を狙う経営者には求められます。

 ハンバーガー業界においても市場は大きく、ポテンシャルもあるので再活性化の余地は確実にあります。

 マクドナルドの会社再建の成否も、これら他ブランドの動きにどう対応していくかを含め、この一年の動きにかかっていると言ってもいいでしょう。

 その成否が外食、特に海外の新規参入ブランドを含めて、ハンバーガー市場再活性化のキーになります。

 2016年は、2020年以降(すなわち東京オリンピック以降)の外食の枠組みを形作る、重要な一歩の年になりそうです。

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合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表
坂本 和彦
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Photo credit: Norio.NAKAYAMA via VisualHunt / CC BY-SA

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