クリスマスにフライドチキンを食べる習慣ができたのは何故?

時事

もうすぐクリスマスですね。
クリスチャンであろうとなかろうと、多くの人がフライドチキンを食べてクリスマスを祝います。

その発端となったのは、皆さんもご存知のケンタッキーフライドチキン青山店で、一人の顧客が漏らした言葉がきっかけでした。

少数派の顧客がもたらす気づきを大切にすることが如何に重要かを、KFCのクリスマスキャンペーン成功は教えてくれます。

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KFCはクリスマスに年間売上の16%を叩き出す

明日はいよいよクリスマス・イブ。

クリスチャンであろうとなかろうと、多くの人がクリスマスを家族で祝います。

アメリカやカナダでクリスマスのご馳走と言えば「七面鳥」ですが、日本ではいまや「クリスマス」と言えば「フライドチキン」が食卓を賑わせます。

その発端となったのは、皆さんもご存知のケンタッキーフライドチキン(以下:KFC)です。

日本ケンタッキーフライドチキンHDは、2015年12月23日~25日のリアルクリスマス3日間で54億9千万円(前年比104.4%)の売上高を達成しており、フライドチキン市場における市場シェアは37%にも及びます。

日本人のクリスマスへ習慣として根付いた同社のキャンペーンは、どのようにして生まれたのでしょうか?

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クリスマスチキンは少数派顧客の声から誕生

そもそも、なぜ日本ではクリスマスに七面鳥を食する文化が浸透しなかったのでしょうか?

これを考えることから、フライドチキン物語は始まります。

日本で鶏肉用の養鶏業が発達したのは、太平洋戦争後のことでした。

ブロイラー(肉食用のニワトリ)が生後50日前後で出荷可能なのに対して、七面鳥は生後180〜200日以上の肥育を行わなければ出荷することができません。

更に、ブロイラーの体重が1羽あたり2kg前後なのに対して、七面鳥は体重が1羽あたり9kgにも達するため、1羽あたりの飼養面積もあまり効率的ではありません。

何より、ブロイラーはほぼ全ての部位が可食の対象であるのに対して、七面鳥は高度なレベルで飼育技術を有する生産者でなければ、獣臭が出てしまい可食部分が少なくなってしまいます。

ゆえに経済合理性を持たない七面鳥は、生産者が飼育を敬遠し、食文化としてもあまり発達しませんでした。

話を元に戻します。

日本にKFCが生まれて数年が経ったある日、日本に住む外国人の顧客がKFC青山店で「日本ではターキー(七面鳥)が手に入らないので、KFCのチキンでクリスマスを祝おうと思う」と店に訪れました。

これにヒントを得た営業担当者が、1974年に『クリスマスにはケンタッキー』を広くアピールしようと考えて販促キャンペーン企画を開始した結果、徐々にクリスマスにはフライドチキンという文化が広まっていったのです。※2

七面鳥を食べる習慣を持っていたその外国人顧客にとって、当時の日本はクリスマスを祝いづらい場所だったことでしょう。

しかも1970年代の日本には現在のような食の多様性はまだなく、彼のようなニーズを持つ外国人顧客も限りなく少数派だったはずです。

KFCの幹部たちは、前述の七面鳥が流通していない理由はさほど知らなかったはずにも関わらず、彼の一言、少数派の顧客が持つ要望を切り捨てず、ビジネスチャンスとして汲み取ることができました。

日本にまだ広まっていない「フライドチキンを食べる」文化を広めたいという思いに溢れ、気付きの点でセンスが研ぎ澄まされていたからです。

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人が作った習慣がその後、人を作っていく

『はじめは人が習慣を作り、それから習慣が人を作る』

この言葉はイギリスの中世詩人、ドライデンが述べた言葉です。

今ではKFCが作った「フライドチキンをクリスマスに食べる」という習慣を元に、百貨店からコンビニエンスストアまで、多くの売場が形作られるようになりました。

その習慣(文化)の中心に、KFCは今でもあり続けます。

自分たちの商品やサービスを習慣や文化として受け入れてもらうために、小さな少数派の顧客がもたらす気づきを大切にすることがどれだけ大事か、KFCのクリスマスキャンペーンは教えてくれます。

※1日本KFCホールディングス・ニュースリリース
http://japan.kfc.co.jp/news_release/news151228kfc.html
※2About KFC
http://japan.kfc.co.jp/qa/kfc.html#B03

写真提供:鶴野紘之

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