苦境に喘ぐ航空会社スターフライヤーが貫いた自らの理念

企業分析

 スカイマークが上場廃止になって1年が経過しようとしています。スカイマークが資金難で苦境に喘いでいた2014年、同じように会社の存亡危機を迎えた航空会社がありました。北九州市生まれの航空会社・スターフライヤーです。危機に陥った時、スターフライヤーが取った行動は意外なものでした。コストと手間がかかるサービスを更に充実させ始めたのです。彼らの行動を支えたのは企業理念でした。

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スターフライヤー独自の満足度が高いサービス

 スカイマークが上場廃止になって1年が経過しようとしています。スカイマークが資金難で苦境に喘いでいた2014年、同じように会社の存亡危機を迎えた航空会社がありました。

 福岡県北九州市生まれの航空会社・スターフライヤーです。

 スターフライヤーは2002年に「神戸航空株式会社」として設立され、2006年3月に北九州空港の移転と同時に東京国際空港(羽田空港)との間の路線運航を開始しました。

 今では九州地方の主要都市と、三大都市圏を結ぶ便に特化して路線を運営しています。

 スターフライヤーの便を彩る特色は、ホスピタリティの高い機内サービスと、ビジネスマンをターゲットに絞ったブランド戦略です。

 サービス例を挙げると以下のとおりです。

タリーズコーヒー(チョコレート付き)の提供

節約社長
タリーズコーヒーにはブラックチョコレートがついてくる

タッチパネル式の20チャンネルに及ぶ映像・音楽の提供

節約社長
映像・音楽併せて20チャンネルはタッチパネル操作で視聴可能

USBボードの座席搭載

節約社長
ビジネスマンのニーズに合わせてUSBボードは標準搭載

高級感があり間隔も広い総革張りの椅子と足置きの設置

節約社長
座席は総革張りで高級車の座席シートを想わせる

節約社長
AIRBUS A320型機の座席数は、他社が180席並べるところを業界で初めて150席に抑え、足元には足置きもあり、広々としている。

  • 運賃:スカイマークより少し高いけれどJALやANAより断然安い。
  • サービス:他社が提供したことのない感動のサービスを顧客へ提供する。

 という姿勢は、「顧客我慢」の解消と「顧客満足」の増大を同時に追求するあり方であり、業界の常識をくつがえすものとして顧客に評価されてきました。

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危機に陥りなお貫き通した自らの存在価値

 しかしそんなスターフライヤーに危機が訪れます。

 旗艦路線でありドル箱路線でもある「福岡ー羽田」間の便数を増やした2013年以降、ライバル各社(JAL、ANA、SKY)が一斉に同区間の便数を増やしてきたのです。

 オマケにピーチやジェットスターを始めとする格安運賃のLCCが、「価格を重視する」顧客を容赦なく奪っていきました。

 2014年の純損益は33億円と巨額赤字に転落し、業績悪化の責任を取る形で米原愼一社長も退任せざるを得なくなります。

 ここでスターフライヤーが取った行動は、意外なものでした。

 ANAとのコードシェア便運行を始めて搭乗率を高めると同時に、コストと手間がかかるサービスを更に充実させ始めたのです。

 代表的な取り組みは以下のとおりです。

  • ・北九州空港の早朝便利用者に対する無料の簡易靴磨きサービスを実施
  • ・エアバス320で国内発の高規格 RNAV 進入方式導入により遅延を緩和
  • ・搭乗者限定のメルセデス・ベンツ格安レンタカープラン提供

 なぜ苦境に喘ぐ中でもこれらの独自サービスを実施できたのか?

 その答えは、スターフライヤーの企業理念に求めることができます。

 “私たちは、
安全運航のもと、
人とその心を大切に、
個性、創造性、ホスピタリティをもって、
『感動のあるエアライン』
であり続けます。”

節約社長
期間限定で北九州空港で行われた靴磨きサービスは好評を博し、繰り返されている
写真:スターフライヤーホームページ

 つまり顧客の感動がなければ、自分たちの存在する理由はなくなるというのが、スターフライヤーの企業としてのあり方なのです。

 また、スターフライヤーは自らが生む価値を「輸送価値」と述べますが、輸送価値について彼らは、ホームページ内で次のように定義しています。

 “お客様、お荷物を単に運ぶのではなく、
お客様ご自身やご家族のお気持ち、
荷物に託されたお心までも大切にお運びする、
それが私たちが提供する輸送価値の核となるものです。”

 事実、スターフライヤーは「2015年度JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」においても、「国内長距離交通」部門で7年連続第1位の評価を得ています。業績悪化時の2013年~2014年も、もちろん顧客満足度は1位でした。

 7年連続第1位を取得した企業は、他業種含めても帝国ホテルとヤマト運輸の2社しかありません。

 2012年、同じ「第三極」にある航空会社・スカイマークは、業務の効率化を追い求めるが故に「スカイマーク・サービスコンセプト」という雑誌を飛行機のシートに設置しました。

 「顧客への丁寧な接客は料金に含まれないので行わない」「機内での苦情は一切受け付けない」などスカイマークのスタンスを表す8箇条が、そのシートには書いてありました。

 消費者はスカイマークのスタンスについて「搭乗者を人間ではなく貨物としか思っていない」と評しました。

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らしさ・存在価値をぶらさず業績は回復した

 話を元に戻します。

 その後スターフライヤーはどうなったのでしょうか?

 彼らの取り組みは消費者から見事に支持を受け、利用率は2015年4月の57%から8月には78%まで上昇しました。

 2015年4-9月期決算は、為替差益の計上も寄与し、純損益11億800万円の黒字、通期見通しも売上高と利益ともに上方修正されます。

 今日もスターフライヤーの飛行機では、タリーズコーヒーを飲みながら、座席にUSBを接続させてPC作業をするビジネスマンが多く見られます。

 企業には業績の良い時も悪い時もありますが、自分たちの「らしさ」や「企業としての存在価値」を貫くことの大切さを、スターフライヤーの事例は教えてくれます。

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