日経新聞社がフィナンシャル・タイムズを買収した本当の意味

企業分析

日本経済新聞社は先月の23日、フィナンシャル・タイムズ(FT)を発行するフィナンシャル・タイムズ・グループを買収することを発表しました。単に「紙メディアの企業が他の紙メディアのメディアを買収した」ということ以上に、急速に進むスマホシフトへ大企業が時をお金で買ってでも、追いつこうとしている現実が見えてきます。

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日経新聞社のFT買収には3つの意味がある

『日本経済新聞社は23日、英国の有力経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を発行するフィナンシャル・タイムズ・グループを買収することで同社の親会社である英ピアソンと合意した。8億4400万ポンド(約1600億円)でFTの全株式を取得する。メディアブランドとして世界屈指の価値を持つFTを日経グループに組み入れ、グローバル報道の充実をめざすとともに、デジタル事業など成長戦略を推進する。読者数で世界最大の経済メディアが誕生する。』(2015/7/24 日本経済新聞)

 という報道が先月末に発表されました。

 この事は、単に「紙メディアの企業が他の紙メディアのメディアを買収した」ということ以上の意味があると思います。

 このニュースには:

  • (1)ピアソンは将来性があまりない紙メディアを売却した
  • (2)日本経済新聞社はスマホシフトに成功した
  • (3)コンテンツ業界、ウェブサービス業界はグローバル化する

 という少なくとも3つの意味があります。

 以下、3つの意味を詳細を説明してまいります。

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日経がFTを買収することを決定した本当の意味

(1)ピアソンは将来性があまりない紙メディアを売却した

 このニュースを初めて見た時に思ったのは、新聞は国内でも世界的にも発行部数が減少している衰退しているメディアなので、欧米の資本家が将来性に見切りをつけて日本企業に売却しただけではないかということです。

 新聞に限らず米国のウェスティングハウスが、原子力事業を東芝に震災が起きる前に売却して、結局東芝は今日新聞を騒がせている不正会計の遠因になっています。

 いつものパターンとして、見切りの早い欧米企業は成長性が低くなった事業を、日本を中心とするアジア企業に後から振り返るとかなり高値で売り抜けることに長けています。

  しかし、紙媒体だけを見た場合、確かにそうした売り逃げのような印象を持ってしまいますが、同報道によると・・・

『FTはデジタル化の流れにもいち早く対応し、現在ではデジタル版の有料読者が約50万人と全体の約70%を占める。日経も電子版読者が43万人に達している。経済・ビジネス情報はデジタル時代に高い成長が見込める分野であり、両社の顧客基盤を活用してさまざまなデジタル事業に取り組む。』(2015/7/24 日本経済新聞)

 とあるように、フィナンシャル・タイムズ(以下:FT)は逸早くデジタル化に対応しており、電子版の販売を始め50万人もの電子版読者が英国だけではなく、世界中にいるということです。

 しかもあのフィナンシャル・タイムズを行動するような人達の多くは学歴が高く、収入も多いセグメントであるのでそうした客層に向けて電子版の新聞情報だけではなく、高額商品である不動産や、金融商品、旅行商品など様々な商材を広告費なしで宣伝するポテンシャルがあります。

(2)日本経済新聞社はスマホシフトに成功した

 こうした意外にも魅力的な読者層の連絡先、いわゆるリスト(メールアドレス等の連絡先やアプリによるプッシュ配信をを送ることが出来るスマートフォンユーザー)を所有しているFTを買収することになった日本経済新聞社も、同様に電子版をPCだけではなく、スマートフォンユーザー、タブレットユーザーに配信しています。

 すでに日本経済新聞社もスマホシフトに成功しているのです。

 この2つのスマホシフトをしているメディア同士の合併は、一気にグローバルにスマートフォン時代でも有望株になる可能性を秘めています。

 このことはもうひとつのスマホシフトを目指しているアマゾンにも言えます。

『米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏は2013年8月、慢性的な赤字経営に苦しんでいた米ワシントン・ポスト(WP)紙を2億5000万ドル(約310億円)の個人資産で買収すると発表した。』(2015/6/12 エコノミスト紙)

 アマゾンの成功要因はいくつかありますが、その一つは最初の商材として本を販売したことです。本の販売は利益が非常に薄くて一見ネット販売では不向きな商材に見えていました。しかし創業者のベゾス氏にはしっかりとした計算がありました。

 それは本を買う人達はある程度収入があり、かつ教養をつけようとする向上心のある客層だということです。

 そうした人達は顧客として上質であり、かつアマゾンの将来ビジョンである「あらゆる商品をアマゾンで販売する」ということを実現するためには購買力のある客層です。

 昨年8月に何故ワシントン・ポストという新聞社を買収したのか、その理由の一つが透けて見えます。

(3)コンテンツ業界、ウェブサービス業界はグローバル化する

 市場としての将来性が年々縮小する日本市場だけでは売上の増大を見込むことは困難です。

 しかしネットの力を利用すれば、コテコテの日本企業である日本経済新聞社ですら、一気に世界市場に打って出ることは可能だと今回の買収劇は実証しました。

 日本経済新聞社はもはや日本だけの経済新聞ではなく、世界中の良質な顧客をもつスマホシフトも済んでいる有力なメディア企業になる切符を手に入れました。

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日経新聞社のFT買収から学べる3つの点

 ということで今回の買収劇によって学ぶべきポイントは:

・成長のためにはスマホシフトをしなくてはならない

・成長のためには良質な顧客リストを増やさなくてはならず、時には時間を買うためのM&Aという手段もありうる

・国内でしか影響力の無い企業でもグローバル展開が可能である。特にこのことはコンテンツ業界、ウェブサービス業界に言える

 という点です。

 これらの全てあるいは1つでも自社で取り入れることが出来たら、どのような企業でも閉塞感を打破するような成長を達成出来るのではないでしょうか?

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鈴木将司

一般社団法人 全日本SEO協会 代表理事

鈴木 将司
MASASHI SUZUKI

1968年 東京生まれ

ヤフー・Google・Bing等検索エンジンでの上位表示対策とネット集客に成功するために全国の企業様、個人様が結集する一般社団法人 全日本SEO協会(2007年6月設立)の代表です。会員様のアクセスアップの為、奮闘の日々です。

最終学歴
オハイオ州立アクロン大学経営学部マーケティング学科、クイーンズランド州立大学教育学部卒業
経歴
オーストラリア クイーンズランド教員、現地法人Digital Land社を経て、現職。
1996年よりウェブ製作に携わる。企画・製作した日米豪のホームページは多数。

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節約社長