法人成りで事業主に生じる3つのメリットと3つのデメリット

交際費

 個人事業主が株式会社や合同会社、社団法人等の法人格を持つようになることは「法人成り(ほうじんなり)」と呼ばれています。法人成りする場合に生じる3つのメリットと3つのデメリットをご紹介いたします。長期的な視点にたって考えた時に法人化による事業継続が、利益を出すためにプラスかマイナスか判断することが肝要と言えるでしょう。

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法人成りは個人事業主の出世を意味するの?

 あなたが個人事業主の方であれば、独立を決めた時、売上が大幅に上がった時、人を雇用する必要が生じた際など、様々なタイミングで法人設立を考えたことがあるでしょう。

 個人事業主が株式会社や合同会社、社団法人等の法人格を持つようになることは「法人成り(ほうじんなり)」と呼ばれています。

 個人事業主は厳密に言うと社長ではなく、事業主ですから、法人成りすることによって社会的な信用があがります。

 これを将棋のコマがある一定の段階で「歩」が「金」に成るような「成駒」になぞらえて「法人成り」と呼ぶようになりました。

 将棋の駒も歩が一歩前に進めるだけなのに対して、歩の成金は金と同じ動きができるようになります。

 成金は歩に比べて自在な動きが取れるメリットもある一方、成金を利用した戦略を立てて成金駒を失った時には痛手を負う場合もあります。

 同じように個人事業主が法人成りする場合にもメリット、デメリットが生じることを知っておくのは得策です。

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法人成りすることで生じる3つのメリット

メリット1:社会的な信用がつき資金調達がしやすい

 一般的に個人事業主が法人成りする場合は、「売上があがり節税対策を立てる目的」や「個人でやっていたことを法人の社会的信用を得て拡大する目的」で法人成りするのが一般的です。実績のある状態で法人格を有した際は、事業計画の説明がしやすいため、金融機関からの資金調達に当たって融資が受けやすくなります。個人事業主としてやってきた既存事業を拡大させる際の法人成りにはメリットがあります。

メリット2:税負担が累進性から定率性に変わる

 個人事業者の利益に対しては所得税が課せられますが、法人成りした場合には法人税が課せられます。 所得税が超過累進課税であるのに対して、法人税の税率は一定です。個人事業主は利益が出る時ほど税金を取られてしまうため、売上(所得)が一定の水準を超えた場合は、法人成りするメリットが生じます。また法人としての事業開始から2年間の間は消費税の納税義務が免除され、通期で3期目から消費税の納税を開始できる(課税売上及び給与等の支払額が1千万円を超える場合は2期目からの支払い)等の免税メリットも生じます。

メリット3:節税対策の範囲が増える

 法人成りした場合には、節税対策の手段が増えます。例えば所得税は家族を社員とすることで分散して節税できます。保険の所得控除について個人事業主の場合は年間12万円までの制限がかかるのに対して、法人の経営者が加入する保険の支払いには制限額がありません。自宅を事務所としている場合の費用を法人が家主(自分)へ支払うものと考えて経費で落として節税することも可能です。

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法人成りすることで生じる3つのデメリット

デメリット1:社会保険料の負担額が増大する

 業種や従業員数に関係なく、労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業となるために経費がかさみます。法人設立の日(当日起算)から10日以内に、「保険関係成立届」を提出するなどの手続きを取る必要も生じます。

デメリット2:間接費用が増大する

 登記内容(役員変更・本社所在地変更・資本金の増減・定款内容の変更)を変更する度に法務局へ変更の届け出を行わなければならなくなり、株主が複数いれば株主総会を開く際の招集手続を取るなど事務手続きが必要になります。期毎に財務諸表を作成する必要も生じ、自分だけで出来た事務処理にかかる間接費用は法人のほうが多くかかるデメリットが生じます。

デメリット3:個人事業主より個人で使えるお金に制限がかかる

 個人事業主の場合は交際費の損金算入限度額がありません。対して法人企業の場合は資本金1億円以下の場合は、年間800万円までか接待交際費の50%以下いずれかの額へ損金算入限度額が制限されます。更に個人事業主の場合は個人の口座から私的な理由で資金を引き出すことが許されますが、法人の場合は代表とあれども法人口座から私的な目的で資金を流用することは許されなくなります。

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法人成りするなら長期的な視点が必要になる

 法人成りは節税や事業をダイナミックに進める上での資金調達にあたりメリットの多い行動となる一方で、社会的義務が多くなるのも事実です。

 また個人事業主が偉いか法人の代表が偉いかという話も、ビジネスの利益を追求する目的の前には不毛な議論です。

 実際に経営者であっても、新しいビジネスを会社に持ち込まず個人で試験的に始めるために、ある業態は個人事業主という立場を選択するケースは多々有ります。

 長期的な視点にたって考えた時に法人化による事業継続が、利益を出すためにプラスかマイナスか判断することが肝要と言えるでしょう。

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