社員への権限委譲は「誰でも良い」「全員へ権限移譲」だと失敗する

経営

多くの中小企業経営者が、社員への権限委譲について悩んでいます。全員に権限委譲しようとすれば、チェックや報告を受けるだけでも膨大な時間が必要となり、一定割合の人材に権限委譲しても、自分よりもパフォーマンスが落ちます。しかし、権限委譲しなければ社長の「宝の時間」は出来ません。どのようなステップを踏んで権限委譲していけば良いのでしょうか?

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誰にでも権限委譲して良いわけではない

今日のテーマは、『誰にでも権限委譲して良いわけではない』です。

最近、経営者の方、三人くらいとお会いしたのですが、お話をお伺いする中で共通していたのが、『権限移譲』で「悩みがある」「迷ってる」ということでした。

結論から言うと、ある一定の人材に権限委譲が出来ていない会社に伸び代はありません。そうしないと経営者にとって不可欠な、将来の戦略を練る「宝の時間」が作れないからです。

そこで、私なりに、『権限委譲』についてどういう手順を踏んでいけばいいか、まとめてみました。

ただし、私が提案対象としているのは中小企業の経営者さん限定です。

大手企業さんは、仕組を作って、しっかりやっているところが多いんですが、中小企業の場合は『権限委譲』が進まない理由がやっぱり存在します。

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社員全員に権限委譲しようと思うから上手くいかない

まず、権限委譲が進まない1つ目の理由は、『信頼関係が出来ていない』ことです。

誰と誰の間で信頼関係が無いか?というと、経営者と社員の間においてです。

というのも、中小企業って、基本的に経営者に権限が集中しやすい仕組みになっていますよね。

人が少ないわけですから、意思決定の権限は経営者のところに集まりやすいじゃないですか。

そうすると、「雇う側と雇われる側」みたいな感覚が経営者と社員の間に存在して、信頼関係がそもそも出来ていません。

すると、経営者さんは、社員に気を使って、皆平等に扱う形で権限委譲しようと考えやすくなります。

でも、全員に権限委譲なんて絶対に無理です。全員に権限委譲して、経営者の自分はプロダクトマネージャーみたいにやっていこうと思ったって、全員のタスクなんか見きれないから、責任だけ移譲しちゃうんです。

「お前、なんでこんなことやっちゃったの。責任は誰が取るの?俺でしょ!そもそも君は報告が無いし〜〜」みたいな感じで、権限委譲した部下に対して文句ばっかり言って、「責任だけ委譲」してるんです。

これは権限委譲された社員にしてみるとしんどいですよ。

権限委譲して、「何やってもいいよ」って言われたのに、いっぱいやって失敗したら怒られて、責任だけ熨斗つけられて、そんなのやってられないですよね。

最後に経営者がバーンッとしゃしゃり出てきて、ピピピピピっと全部処理して、「やっぱり俺がいないと出来ねえんだ」みたいな事を言ってる中小企業の経営者さんが凄く多いんですよ。

こうやって、皆を平等に扱おうとするあまりに、良いバランスで権限委譲出来ないから、組織が固まらないし、収益も上がりません。

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成果・売上が落ちるから権限委譲しないのは愚の骨頂

あと、『成果・売上が落ちる』ということで、誰にも権限委譲しない会社さんがもの凄く多いです。

何故かと言うとイライラしてくるんですよ。例えば、経営者に月1,000万円の受注を受ける能力があったとします。

ところが、権限委譲した途端に数字が7掛け8掛けになっちゃうんです。でも、これは当たり前の話ですし、まだ良いほうです。

経営者よりも出来る奴なんて組織にいないからです。そこをまず理解する必要があります。

「自分と同じレベルまで上がってこれる」「俺が出来てんだからお前も出来る」みたいなことってあり得ないんです。

自分が1,000万稼げたのに、権限委譲した途端に500万とか600万に落ちてしまうのが普通なのに、怖いからということで、「権限委譲しない、自分でやったほうが早い」という発想の経営者がまだまだ沢山いらっしゃいます。

だから、権限委譲して、説明して、技術を教えたり、何か教えたりするのが、面倒くさいんですね。

自分がこなしたほうがお客さんにも喜ばれる実感があるので、ついつい手を付けてしまいます。

ずっと権限委譲しないので、経営者さんもずっとお客様に名指しされ続けて、忙しいままなんですよ。

土日もなしに365日24時間働いて「俺ってかっこいい」みたいな。

でも、本当に儲かっている経営者は、如何に自分が「やらないこと」を決意して、優秀な人材に実務を任せている人なんですよね。

極端な例で言うと、ハワイかオーストラリアにいて、トロピカルジュースでも飲みながら、権限委譲した人へチャットで指示を出して、日本国内で部下が定時の範囲内でシャキシャキっと仕事をして終わってる。

実際にそういう経営者のほうが、私のクライアントさんでも儲かっています。

なぜ儲かるかと言うと、そういう経営者は戦略ばかり考えることに時間を使っているからです。ハワイで戦略を考えてるわけですよね。

社員に粛々と自分で考えて業務を遂行してもらいながら、ある程度の売上・利益を取っている。しかも、給料もしっかりと「ありがとう」と言って、普通の1.5〜2倍くらい支払えている。

こっちのほうが格好良くないですか?

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権限委譲する人は社員全体の2割までに限定

じゃあ、南本、中小企業の権限委譲ってどうすりゃできるんだ!という質問にお答えしましょう。

まず、『20対80の原則』というものを使っていきます。

何を言いたいかというと、権限委譲する人は全体の2割までに限定する必要があります。残り8割の人にも権限委譲なんてしたら、会社が壊れてしまいます。

10人いたら、せいぜい2人に権限委譲しましょう。5人しかいない会社さんは1人で十分です。

20人いる会社さんは、せいぜい3〜4人に絞って徹底的に教育するんです、右腕として。

右腕・左腕でもいいし、助さん・格さんでもなんでもいいんですけど、徹底的に20%までの社員に権限委譲して、マネジメントの手法を教えてあげましょう。

素質のある人を今から社長が目利きをしてやっていくっていう事ですね。

その際には、まず権限を与える業務範囲を明確にして、色んな業務を細分化します。

そうすると、権限委譲される社員の方もわかりやすいし、経営者自身も「ここは俺がやらなくてもいい業務だ」というのがわかります。

誰にどこまでの業務を権限委譲するか、経営者自身が考えることから始めましょう。

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最初は『やってみせ、言って聞かせて、させてみる』からの始まり

いざ、権限委譲する社員を決めて、権限委譲する業務の範囲を決めたら、最初は泥臭いところからはじまります。

いわゆる山本五十六の名言、『やってみせ、言って聞かせて、させてみる』を経営者が実行していきます。

営業だったら営業のクロージングに同席させて、まず経営者自身がやってみせます。

自分のやってみせを実行したら、次は「こうやって、次はこういうふうにやって、最後にこうやれば、多分うまくいくよ。」と言って聞かせてあげましょう。

そして、3段階目として、本人、権限委譲したい人にやらせてみましょう。

そして、やってくれたら、必ず褒めてあげるんです。「お前、出来るじゃん、お客さん喜んでたよ!」とか、嘘でも褒めてあげてください。

ここで駄目な経営者は、「お前あの言い方なんや!あかんやろ。お客さん怒ってたぞ。興味なさそうやったやろ。」みたいな、あかんところばっかり責めるんです。

それでは人は育たないし、動きません。人が決まり、業務が決まったら、まず同席させて褒めちぎってあげてください。

そしたら、段々と本人の気分が良くなってくるので、「自分にも出来る」「私も出来る」となってくるんです。

この際に一つ気をつけたいのが、権限委譲を受けた社員もやる気が出てくると一生懸命になって、今まで体験したことのない難題、たとえば、人事マネジメント問題にぶち当たって、しんどい顔をしていることがあります。

ゼロイチのプロジェクトを任せても、それを構築するのがしんどい!って泣きそうになっている場面も見かけるかもしれません。

そうすると、可哀想になったり、自分でやりたくなることがあります。でも、やってはいけません。

権限委譲して、彼らに現場を任せたいのであれば我慢してください。ぐっと堪えるんですよ。

いっぱい苦しそうな声が耳に聞こえてくるんだけど、彼らが動いている間は、ぐっと口を出すのを堪えます。

そうすることで、権限委譲した社員がグーッと伸びていきます。

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報告だけあげてもらったら経営者に『宝の時間』が生まれる

そして、責任と権限を委譲したら、後は報告だけしてもらうだけなんです。

報告をしない人には、「報告をあげてくれ」とガンガン言ってください。

報告をあげてもらったら、状況を吟味して、叱ったり、怒ったりすることなく、前向きな形でフィードバックしてあげるんです。

最初は、6割とか5割の稼動になっちゃうんですけれども我慢してくださいね。

その分、経営者自身の時間が空くメリットが生じます。これは大きいです。

環境変化の激しい時代に、どういうふうに自分の会社を前に進めていくかという戦略を練る時間、戦術を練る時間、体制を練る時間、新しいビジネスのネタを考える時間って本当にかけがえの無いものですからね。

これを私は『宝の時間』と呼んでます。

中小企業の経営者はだいたい、この『宝の時間』が土日しかないことが殆どだし、土日も働いていて、そんなこと考える時間が無い経営者もわんさかいらっしゃいます。

権限委譲した事によって、目先の売り上げは下がるかもしれないけれど、どこかで決断して、自分が新しい事業の目を考える時間を作れたら、飛躍の可能性はぐぐっと上昇します。

 
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南本 静志

和歌山生まれ。株式会社紀陽銀行入行。銀行業務を2年程度経験後、システム部へ異動。

システムエンジニアとして銀行オンラインシステムや情報系のマーケティングシステムの構築で活躍する。

30歳代の後半には日本ユニシスに出向し、金融機関向けCRMマーケティングシステムの業務設計のリーダーを任される。その後、コンサルタントとして独立、現在は東京千代田区で経営コンサルティング会社と社会保険労務士事務所を設立し、代表に就任。

中小企業診断士及び社員を持つ経営者としての立場で、幹部社員(部長、課長、係長等)を次期役員に昇格させるようなマネジメント系の人材育成プログラムに強みを発揮している。また、初級管理職(主任や中堅リーダー)に対するモチベーション研修や自己発見研修も得意。

アールイープロデュース 

適性検査Cubic(キュービック)

東京中央社会保険労務士事務所

東京中央給与計算センター

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