ソフトバンクが「いい買物の日」キャンペーンで景表法措置命令「おとり広告」って何?

時事

 消費者庁は7月27日に、ソフトバンク(株)が供給する「Apple Watch(第1世代)」に関する表示に対し、「おとり広告」の違反により、景品表示法の措置命令を行いました。おとり広告とは、「商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような表示」のことですが、ソフトバンクの販売方法のどこがおとり広告扱いされたのか解説いたします。

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ソフトバンク「いい買物の日」のキャンペーンで、Apple Watchのおとり広告に景表法措置命令

 消費者庁は7月27日に、ソフトバンク(株)が供給する「Apple Watch(第1世代)」に関する表示に対し、景品表示法の措置命令を行いました。

 同社は「いい買物の日」のキャンペーンにおいてApple Watchを販売する際、取扱店及び機種の一覧を掲載したWebサイトのリンクを記載していました。

 しかし、実際には在庫がない店舗や機種があり、取引に応じることができない事態が発生し、これが「おとり広告」とみなされました。

 「おとり広告」とはどんなものか?

 経緯を見ながらご説明していきましょう。

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ソフトバンクのキャンペーンはなぜ景表法措置命令の対象となった?

対象商品

 Apple Watch (第1世代)

表示媒体

 自社Webサイト

表示期間

 平成28年11月1日~同月4日

違反内容の中身

表示内容

  「いい買物の日 Apple Watch キャンペーン」

  「いい買物の日 2016年11月3日(祝・木)~11月13日(日) おトクドッカーン! Apple Watch(第1世代)が! スペシャルプライスで買えるのは今だけ! 本体価格11,111円 表示価格は税抜です」

  「期間中、対象のApple Watchが11,111円でご購入いただけるキャンペーンです。ソフトバンクのApple Watch 取り扱い店舗にて、ご購入いただけます。」

 という記載を行うと共に、Apple Watch取扱店及び機種の一覧を掲載したWebサイトのリンクを記載。

 あたかも、同月3日~13日までの間、本件485店舗において、対象商品を税抜11,111円で販売するかのように表示していた。

実際

 11月3日の本件キャンペーンの初日に、485店舗の各店舗において対象商品を準備しておらず、それぞれ取引に応じることができないものであった。

問題となったポイント

 自社Webサイトのキャンペーン概要記載ページには以下の注意文言の記載がありました。

  「在庫がなくなり次第、終了となります。」 (注意文言の記載方法が変化)

  「商品によっては在庫がない場合もあります。Apple Watch取り扱い店舗でご確認ください。」 (自社Webサイト内のキャンペーン対象機種一覧掲載ページ下部にも記載)

 また、キャンペーン全体の紹介ページ「いい買物の日」特設サイトでは、「対象:Apple Watch(第1世代)在庫限り」と記載がありましたが、これも問題となっています。

どこが問題なのか?

  「在庫がなくなり次第、終了となります。」

 →キャンペーンの初日には、在庫が存在していることを前提としている記載である。

  「商品によっては在庫がない場合もあります。Apple Watch取り扱い店舗でご確認ください。」

 →「ない場合も」と記載している点で、各店舗において対象商品の在庫が存在していないことが例外であるかのような記載である。

  「対象:Apple Watch(第1世代)在庫限り」

 →キャンペーン概要記載ページとは別のウェブページに記載されており、在庫の数量について記載されておらず、各店舗における商品の準備状況を明瞭に記載したものとはいえない。

 (1)~(3)の記載は、各店舗における商品の準備状況を明瞭に記載したものとはいえない。

 参考リンク:ソフトバンク株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(平成29年7月27日 消費者庁)

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不当表示となる「おとり広告」とはどんなもの?

 本題となりますが、景品表示法は次のように、「商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような表示」を「おとり」による不当表示と規定しています。

(1)取引の申出に係る商品・サービスについて、取引を行うための準備がなされていない場合のその商品・サービスについての表示

(2)取引の申出に係る商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示

(3)取引の申出に係る商品・サービスの供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示

(4)取引の申出に係る商品・サービスについて、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品・サービスについての表示

「おとり広告に関する表示」(平成5年公正取引委員会告示第17号)

 本事案では、各店舗における商品の準備状況についての注意文言が記載されていましたが、(2)に抵触したものと考えられます。

 同社は今回の処分についてのお知らせにおいて、次のように説明しています。

「キャンペーン実施にあたり、Apple Watch(第1世代)を対象に行った過去のキャンペーンの販売実績をもとに予測販売数量を算出し、1,128台の在庫を取扱店485店舗のうち306店舗に配分して準備するとともに、Webサイトに在庫に関する注意文言を表示することで、お客さまに迷惑をかけることにはならないと認識していたが、予測を大きく上回る反響があり、お客さまの要望に応えられない事態が発生した。」

キャンペーンの一部広告表示に関する措置命令についてのお詫びとお知らせ(ソフトバンク(株)HP  2017年7月27日)

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販売が伸びそうなキャンペーンを打つ時ほど表示に注意を

 『いい買物の日』は、ヤフー、ファミリーマート、ソフトバンク、TSUTAYA、Tポイント・ジャパンの5社が、2015年に11月11日を「いい(11)買物の日」と定めた「お買物の祭典」です。

 リアル・ネット双方の各店舗・サービスで、大規模セールやキャンペーンを行い、2016年はソフトバンク(株)・ヤフー(株)のグループ企業のほか、(株)ファミリーマート、(株)ニッセン、(株)キタムラ、夢の街創造委員会(株)、(株)ドトールコーヒー、(株)ロッテリア、(株)吉野家、ニッポンレンタカーサービス(株)、メルセデス・ベンツ日本(株)、(株)ジョイフル本田、(株)三越伊勢丹ホールディングスなどが参加しました。

 ヤフーによると2016年の「いい買い物の日」当日の「ヤフーショッピング」の流通額は日次取扱高の過去最高を更新したとされています。

 ネット販売におけるセール時の不当表示は、過去においては「楽天市場」で、2013年11月の楽天イーグルス日本一記念セールでの出店店舗による不当な二重価格表示問題もありました。

 消費者の購買意欲が高まるセールやキャンペーンでは、これを盛り上げるため、目玉となる魅力的な価格の商品をそろえる必要がありますが、無理な企画とならないよう留意していただきたいと思います。

Photo via Visualhunt.com

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久保 京子

株式会社 フィデス 代表取締役社長

広告表示のコンプライアンスや消費者視点の顧客サービスを重視した、ネット通販マーケティングのコンサルティング会社です。

景品表示法や医薬品医療機器等法(旧薬事法)などの広告法務や、顧客満足を高める顧客対応など、ネット通販の「守り」の部分をバックアップします。

広告表示規制が強化される中、違法表記は企業の信用やブランド価値の低下など、致命的な事業リスクになりかねません。
また、拡散力が飛躍的に高まったネット時代のカスタマー対応は、ダイレクトに売り上げとコストに影響を与えます。

カスタマー対応はもとより、広告の違反基準となるのは、サービスの受け手である一般消費者目線です。
常に消費者目線を意識することが、事業のリスクマネジメントの基本となります。

お気軽にご相談ください。

取得資格
内閣総理大臣及び経済産業大臣事業認定資格 消費生活アドバイザー
※消費者と企業の懸け橋として、企業の消費者志向経営をサポート。
 消費者庁の法執行専門職員(景表法やJAS法などの違反被疑事案の調査補助を行なう)や、
 照会専門職(事業者からの相談対応)の要件となる資格。

サービス内容
法令順守広告制作・監修・コンサルティング
顧客対応・顧客情報活用コンサルティング
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