節約 社長
吉住 幸延
吉住 幸延ガルベラ・パートナーズ グループ代表取締役

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260年続いた江戸幕府に学ぶ“企業30年説”を打破する事業承継の作法

260年続いた江戸幕府に学ぶ“企業30年説”を打破する事業承継の作法
 企業30年説とは、いまある企業が、30年後に存在するのは5%の確率である、というものです。この通説を打破し、企業が30年以上、更にその先も存続するためには、後継者の育成が不可欠です。そこで本稿は、260年の長期政権を築いた江戸幕府の開祖・徳川家康が、二代目将軍秀忠へ将軍職を承継する時に行った2つのことをヒントとしてご紹介したいと思います。

「企業30年説」誰もが納得できるその理由とは

 企業30年説というものがあります。いまある企業が、30年後に存在するのは5%の確率である、というものです。

 ソフトバンクの孫正義さんも以前、創業30年を迎えた年にこの説を提示され、これから先の「ソフトバンク新30年ビジョン」を発表されていました。

 確かに、企業30年説には納得の行くところがあります。

 というのも、日本の起業家が起業する年齢は、「30代」が35.3%と最も多く、次いで「40代」が34.5%を占めます。※

 これを30年説に当てはめてみれば、30代で独立した社長も30年経てば60代となりますし、40代で起業して30年経てば70代です。

 若かりし頃は、自慢だったハングリー精神やバイタリティーが低下したり(例外で、“老いてなお”という方もいるが)、どんなに働いても疲れ知らずだったのが、実務が肉体的にしんどくなるのは自然なことです。

 むしろ、30年も経営者として実務に携わり、会社を成長・存続させたことは「偉業」です。

企業30年説を打ち破るには後継者育成が不可欠

 ただし、歴史をずっと遡ってみても、極論かもしれませんが、永遠に続く組織や体制などありません。

 企業はその最たるものであり、経営者が年を重ねることをきっかけに衰退しやすい脆いものです。

 衰退の理由を幾つかあげれば、
  • 組織マネジメントが上手く行かなくなることで生じる営業力低下
  • 経営者が不慮の事故・病気等と遭遇し事業継続が不可能
  • 事業承継に早期から取り組まず後継者が不在
  • 天災などアクシデントによる急激な業績悪化
  • 人口減によるマーケットの縮小に対応できていない
 など、企業の数だけ衰退の理由は様々ありますが、その殆どは人為的な原因で起きることが大半です。企業30年説もうなずける話です。

 従って、衰退を防ぐために経営者は、次世代の人材を育成し、新たな商品戦略を展開していくことが使命として課せられています。

 特に、経営者はどこかの時点で、後継者育成に取り組まねばならず、次の経営者を育てることで、自らが守り続けた会社の次なる繁栄のきっかけを作らねばなりません。

後継者の苦悩を考慮せずに後継者は生まれない

 ところが、企業30年説をぶち壊すために割けて通れぬ、事業承継は現時点であまり上手く行ってません。

 2016年に日本政策金融公庫が行ったインターネット調査では、後継者が決まっている企業は僅か12.6%であり、廃業予定企業の廃業理由の第2位が「後継者がいない(28.5%)」でした。※2

 このような状態を解決するには、後継者が抱える苦悩について考えてみる必要があります。

 事業承継において、後継者は大きなプレッシャーを感じずにはいられません。先代との知識や経験の差は歴然であり、営業力、バイタリティー、したたかさ、人脈の豊富さ、社内の人望、どれをとっても先代にはかないません。

 特に、取引先や社員からは厳しい視線が注がれ、後継者が相応の才覚がなければ、取引が先細りしたり、社員が辞めていくことも想像できます。

 そういう場に、「我こそは」と踏み込んでいく自信のある後継者ならば、事業承継について、なんの心配もいらないでしょう。

 しかし、通常は心配ばかりです。では、どのようにして後継者を育成していけばいいのでしょうか?

徳川家康が秀忠に2代目将軍職を承継する時に行った2つのこと

 そこでヒントを得たいのが、江戸幕府の承継事例です。

 江戸幕府は世界的に見ても稀に見る長期政権を、260年以上に渡り維持し続けました。

 この礎を築いたのは初代将軍の徳川家康ですが、彼は将軍職の円滑な承継のために前もって2つのことを実行しました。
  • 1) 自らが将軍職の座について、僅か2年で2代目の秀忠に譲り渡した
  • 2) 秀忠に本多正信という優秀な補佐役をつけた
 です。

1) 自らが将軍職の座について、僅か2年で2代目の秀忠に譲り渡した

 秀忠を将軍職につけるとき、圧倒的多数の家臣は、「その器に有らず」として反対しましたが、家康はこれを聞き入れず早期に秀忠を将軍職に付けました。

 よく、「まだ経営者となる人間が育っていない」という話を聞きますが、多くの場合はこれが目先を見た話であり、100点満点で自分の思い描く事業承継を行いたい余りに、チャンスがどんどん目減りしていきます。

 後継者の育成と承継は、先代が元気なうちに早い段階で行ない、「立場で人を育て」なければなりません。このときには、まだ、自分に比べて能力が低いと感じても、後継者を1人前の経営者として認める必要があります。

2) 秀忠に本多正信という優秀な補佐役をつけた

 もう1つ、家康が行ったのは、秀忠に本多正信という優秀な補佐役をつけたことです。

 最初から独り立ちできる後継者など殆ど存在しません。

 本田正信は将軍職に就くよりもっと早くに、家康から命じられて秀忠の補佐役として世話をする役割を担いました。

 立場が人を育てるにしても、優秀な後継者を育て上げるには、優秀な番頭(教育係)が必要になることもお分かりかと思います。

 補佐役がいないとしても、経験が後継者にとって「補佐役」となることもあります。

 後継者を自社よりも大きな企業で修行させたり、他の企業で下積みを経験することで、自分が経営者となったときの部下の気持ちが分かるようになりまし、先代の企業では学べない多くのノウハウを学ぶこともできます。

 これらを実行するために、後継者を信じることがとても大切なのは言うまでもありません。

 家康は将軍職を降りて早々に、江戸から身を引き駿府に渡りました。敢えて離れた場所に行き、秀忠を信じて託したことで、やがて新たな時代が幕を開けたのは誰もが知るところです。
 
※日本政策金融公庫「2016年度新規開業実態調査」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_161222_1.pdf

※日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」の概要
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings160201.pdf

Photo credit: chase_elliott via VisualHunt / CC BY

2017年7月18日

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